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農業基本法改正と関連法成立への懸念

「権利としての食料」を重視する
国際的潮流から考える

愛知学院大学教授 関根 佳恵

 

 

 

1.基本法改正と食料安全保障、フードセキュリティー

 2024年5月29日に、食料安全保障の強化を基本理念に掲げる「改正食料・農業・農村基本法」(以下、改正法)が成立した。日本で言う食料安全保障は、英語のフードセキュリティーを訳したものだが、国際的な定義と国内の定義には違いがある。そのため、本稿では日本の法律に基づくものを食料安全保障、国際的な定義の方をフードセキュリティーと呼ぶ。フードセキュリティーが国際社会で定義されたのは1974年だ。穀物輸出国だったソビエト連邦(現ロシア)が輸入国になることで世界市場が逼迫し、国連世界フードセキュリティー委員会(以下、CFS)が発足した。 続きを読む


食料自給の確立をめざして

農業の衰退を食い止めるための手だて

JA常陸組合長 秋山 豊

 

 

 編集部は、北海道、鹿児島県に次ぐ農業生産県である茨城県の主力JA(農業協同組合)であるJA常陸の秋山豊組合長に、農業の現状と課題、改定農業基本法について、熱心に取り組まれているオーガニック給食支援などについて伺った。(見出しとも文責編集部)

 とにかく現場の農業の衰退が激しいんです。 続きを読む


東日本大震災の経験を基に能登の復興に関わって

自らの住まう地域に
自らが責任を持つ当事者意識が大事

宮城大学特任助教・陸上自衛隊予備自衛官補 阿部 晃成

 

 

 2011年3月11日の東日本大震災で一晩の漂流を経験した私は、津波によって壊滅的な被害を受けた宮城県石巻市雄勝町の復興に当事者として関わってきました。復興まちづくり協議会への参加や、雄勝町の雄勝地区を考える会といった自治組織も運営しました。実際に進められた被災者の多くが故郷を離れざるを得なくなる〝災害危険区域〟の指定や、3階建てのビルより高い9・7mの巨大防潮堤などの復興計画に対して、現地再建や原型復旧といった対案を示しました。しかし、結局のところ石巻市は被災者の意向を丁寧に聞くことなく、トップダウンの復興計画を実行してしまいます。 続きを読む


能登半島地震と原発

今回の地震は最後の警告と
国も電力会社も真剣に受け止めるべき

志賀町議会議員 堂下 健一

 

 

 厳冬期からせみ時雨へ。梅雨明けに地震関係での避難指示解除を検討したという当初の目標通りに解除がなされる予定です。
 7カ月暮らした施設は福島第一原発事故後に全国の原発立地自治体で整備された原発防災施設です。一人3㎡で70人収容が基準で、そこには簡易ベッドや防災毛布、長期保存のきく水や食料品が備蓄されており、要支援者の方が原発事故からの被害を最小限に抑えるために、しばらく避難できる施設として整備されています。 続きを読む


秋田県大館市の「中国人殉難者慰霊式」参加レポート

日中友好に後ろ向きの社会で、
平和の片鱗を見いだす

上海交通大学副研究員 石田 隆至

 

 現在の日本で「日中友好」という言葉を口にするには、時と場を選ぶ。〝中国と仲良くしよう〟という当たり前のことを言うだけでも、勇気が必要になったり、なぜなのかと説明が求められたりする。
 去る6月30日に大館市を訪れ、戦時中に強制連行された中国人犠牲者の慰霊行事に参加した。花岡町(現大館市)では1945年6月、苛酷な虐待に耐えかねた中国人800人が蜂起した。強制連行加害の象徴的な地の一つだ。一方、戦後間もない時期から市民が真相究明や、被害者の追悼に取り組んできた。 続きを読む


中国を訪問して

600年の歴史もつ沖縄の使命を実感

交流積み重ね戦争を避けよう

沖縄県副知事 照屋 義実

墓地遺跡で祈りを捧げる筆者(前列)

 

 玉城県政が6年目を迎え、今年度から平和・地域外交推進課を設置し、地域外交を本格的にスタートさせました。助走期間の昨年、知事はフィリピン、シンガポール、中国、ハワイ、台湾を訪問。私は韓国・済州の平和フォーラムに参加しました。
 今回の日本国際貿易促進協会(河野洋平会長)の7月訪中団に参加させていただき中国を訪問することができましたが、沖縄の地域的、歴史的な状況を踏まえて、平和のために果たす役割が大きいことを改めて実感しました。 続きを読む


要塞化された琉球列島の島々 高橋 愛

市内勝連分屯地にミサイル配備

沖縄県うるま市(30代) 高橋 愛

 

 まずは、〝言いたいことがありすぎる〟に尽きます。列挙させていただくと――、
 ミサイルに税金を使わないでほしい。もっと私たちの暮らしに身近な社会保障を実現してほしい。「私のお金でミサイル買うな、軍事よりも生活」
 どうせ、アメリカが使用・製造中止して持て余している格落ち戦闘機を買うのだろう。この手のアメリカによる日本の軍事支配政治、沖縄県内での事故多発をいつまで繰り返すのだろう。 続きを読む


要塞化された琉球列島の島々 下地 あかね

下地島空港、宮古空港、平良港の「特定利用空港・港湾」指定

島で生きる子どもたちに明日の選択肢を渡すために

宮古島市議会議員 下地 あかね

 

 現在、国が進める「特定利用空港・港湾」は、指定した民間空港を自衛隊等がデュアルユース(軍民両用)するものと説明されています。すでに今年3月には国が管理する那覇空港や石垣港が指定されていますが、さらに指定を広げようと、宮古島市の下地島空港、宮古空港、平良港指定の検討を伝えに、6月26日、内閣官房の職員が宮古島市の担当者に面会に訪れました。
 市側から民生利用への支障と米軍の利用についての言及があり、有事の避難の際に空港がどのように使われるか話し合われたうえで、内閣官房国家安全保障局の参事官は、記者の取材に「理解を得られるように説明を続ける」と述べたとされます。 続きを読む


要塞化された琉球列島の島々 仲底 善章

最南端の島 波照間

空港の軍事利用に危機感をもつ島民の葛藤

波照間公民館館長 仲底 善章

 

 昨年の10月6日、地元の「八重山毎日新聞」紙上で、波照間空港の軍事利用の足掛かりになる、国の「特定重要拠点空港・港湾(仮称)」への位置づけを前提に、内閣官房、内閣府、防衛省、国土交通省、海上保安庁の関係者19人が竹富町役場を訪れたことが明らかになりました。 続きを読む


要塞化された琉球列島の島々 山口 京子

与那国、国のように豊かな島

小さな島の軍事基地化が急テンポに

与那国島の明るい未来を願うイソバの会 山口 京子

与那国町長の「一戦交える覚悟」発言に謝罪・撤回を求めて質問状を会として提出

 

 私が与那国に移住してきた頃(1981年)、島にはまだ〈ゆいまーる〉も残っていて、田畑には人がいて、キビ刈り作業に疲れたら誰かがトゥバルマを唄いだす。島は中央志向ではなく苦しい自給自足のような時代からやっと脱して、まさしく与那国という国のように豊かな島でした。あれから幾年月……。
 2016年の与那国駐屯地開設から9年。22年からのこの24年へと与那国島は大きく変貌しています。なんの遠慮もなくこの周囲27㎞の小さな島の軍事基地化を進めています。 続きを読む


要塞化された琉球列島の島々 花谷 史郎

石垣島にも米軍が

平和な島に軍事をもたらした「南西シフト」

石垣市議会議員 花谷 史郎

 

 

 6月に、昨年12月の米兵による性犯罪の情報が沖縄県に報告、共有されていなかったことが報道されてからも米軍関係者の事件や飲酒運転が後を絶ちません。
 一連の事態が明らかになって以降、沖縄県内の各自治体の議会では事件と、情報を共有しなかった政府の対応を批判する意見書や決議が続々と可決されています。 続きを読む


要塞化された琉球列島の島々 小西 誠

米国は「台湾カード」で中国を挑発し中国脅威論の国際世論形成を策動

軍事要塞化――南西諸島から九州・日本全体に

軍事ジャーナリスト 小西 誠

 

 

 日本を覆い尽くすような歴史的大軍拡が急速に始まっている今日、自衛隊の深刻な不祥事が次々に噴出し始めた。これは必然的な「戦争の宿痾」か!
 海自・潜水艦隊で起きた川崎重工との金銭癒着は、三菱重工にまで広がりつつある。「特定秘密」不正取り扱いは、海自から空自や統幕、内局に拡大。さらに海自隊員の潜水手当の数千万円の不正受給、防衛省内局のパワハラ等も多数が明るみなった。 続きを読む


主張 ■ 歴史の反省を踏まえなくてはならない(上)

アジア太平洋侵略戦争「敗戦」79年
「新たな戦前」にしてはならない

『日本の進路』編集部

 

 間もなく「敗戦79年」の日を迎える。日本の進路を見直す時にしなくてはならない。
 国内で窮地に立つ岸田首相だが、4月に訪米、米国が進める世界的な政治軍事経済の全面にわたる中国包囲網の先頭に立つことを約束し、米国指導層から大歓迎を受けた。その後わが国では、台湾独立を進める新「総統」就任やワシントンNATO首脳会議など対外政治面でも、食料有事立法や国の指令権を明記する地方自治法改正など国内法整備でも、南西諸島軍事強化と大規模演習など軍事面でも、驚くべきテンポで戦争遂行態勢準備が進められている。歴史を知る人びとからは「新たな戦前」との指摘も相次ぐ。 続きを読む