今や中国は世界の問題児ではなく「安定剤」
拓殖大学海外事情研究所教授 富坂 聰

羽田空港から都心へと向かう高速道路からの眺めは、いつも旅の郷愁も手伝って美しい。
だが2025年の9月末は、そんな余韻に浸る間もなく現実へと引き戻された。洪水のような着信音に誘われ画面を開くと自由民主党の総裁選のニュースがあふれ、各候補が重視するテーマの一つが「スパイ防止法」だったからだ。 続きを読む
拓殖大学海外事情研究所教授 富坂 聰

羽田空港から都心へと向かう高速道路からの眺めは、いつも旅の郷愁も手伝って美しい。
だが2025年の9月末は、そんな余韻に浸る間もなく現実へと引き戻された。洪水のような着信音に誘われ画面を開くと自由民主党の総裁選のニュースがあふれ、各候補が重視するテーマの一つが「スパイ防止法」だったからだ。 続きを読む
東京大学社会科学研究所教授 丸川 知雄

2025年11月のいわゆる台湾有事をめぐってなされた高市首相の国会答弁以来、日中関係は十数年来で最悪の状況に陥っている。高市発言の直後から、中国中央テレビ局のニュースでは連日高市首相批判が展開され、中国の公式メディアはやがて日本を「新型軍国主義」と非難するようになった。中国から日本への団体旅行はぱったりと止まり、日中の学術交流活動も次々とキャンセルされている。日本への個人旅行を制限する動きはないが、中国政府から訪日旅行者に対して日本の治安状況についてやや過剰な注意喚起が行われている。今年1~7月の中国からの訪日客は昨年同期に比べて56%も減った(表参照)。 続きを読む
東京女子大学3年 梶原 光
今回の訪中を通して、中国の姿が日本で十分に、あるいは正確に伝えられていないことを悔しく感じる場面が何度もあった。現在も、例えば「中国人と比べて日本人は差別されにくい」といった、日本人礼賛の動画が高い再生数を集めている。なぜ日本人は、そのような語りを求めるのだろうか。今回の訪中を通して、私はその背景の一つに、日本人が自国の加害の歴史を十分に知らないことがあるのではないかと考えるようになった。 続きを読む
「第2次アジアの平和と未来をひらく若者訪中団」が9月7日から瀋陽および撫順と北京を訪問した。その感想レポートである。(編集部)
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程 小谷 英里
九・一八事変から95年、日中国交正常化から54年。日中関係は極度に緊張し、交流事業の中止や延期が相次いだ。そうしたなかで、訪中団が実現したこと自体、決して当たり前のことではない。
多くの人びとが、困難をともなうにもかかわらず、わたしたちを温かく迎えてくださったのは、中国人民抗日戦争記念館の館長が語っていたように、民間交流こそが現状を打開するためのたしかな道であると信じるからであろう。 続きを読む
青山学院大学名誉教授 羽場 久美子

「平和で持続可能な日本を目指して」ということで、「地方から、そして若者から政治を変える」という問題提起をさせていただきたい。
まず一つ目は、現在の政権・高市政権があらゆる手段と法律を使って、日本を戦争ができる国にしようとしている。これが最大の問題です。その背景には、日本の意図だけではなく、アメリカの強い意図があるということです。 続きを読む
『日本の進路』編集長 山本 正治
米国は無謀なイラン戦争で敗退した。いまだ戦争終結に紆余曲折はあろうが趨勢は変わらない。しかも、「終結」を仲介したのはパキスタンであり、背後で支援したのはトランプもお礼を言うように中国だった。いわゆる「主要先進国」は出る幕がなかった。これが世界の現実である。
それを織り込み済みだった5月の米中首脳会談では中国の対米優位が目立ったとの評価が世界の大方だ。象徴的なのはフランスでの6月のG7サミット・「主要先進国」首脳会談である。G7各国は、世界全体のことは自分たちの課題ではないとばかりに、もっぱら欧米関係の調整に終始した。しかもそれすらも、日本・高市首相は傍観者だった。こうしたG7諸国の背景にはそれぞれの著しい経済困難と国内対立激化、政権の不安定化がある。 続きを読む
NPO法人ピースデポ代表・長崎大学客員教授 鈴木 達治郞

2026年5月22日、核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終日、国連総会会議場は一瞬静まりかえった。ベトナムのドー・フン・ヴィエット議長が「成果文書採択をめざし、最善を尽くしたが、全加盟国の合意を得られることはできなかった」と発表したからである。これで、15年、22年に続き、3回連続成果文書の採択ができない結果となった。果たして、この結果をどう評価すればよいのか。今後の核軍縮を進めていくために、われわれはどうすればよいのか。再検討会議での現場の議論や識者のコメントなどを踏まえた上で、考察してみた [1]。 続きを読む
軍事ジャーナリスト・元自衛官 小西 誠
3月24日午前、恐るべき事件が起きた。在日中国大使館に、現職幹部自衛官が侵入しテロを引き起こそうとした事態だ。犯人は、刃渡り31㎝の刃物を隠し持っていたという。
中国外務省によると、この自衛官は「自身の行為が違法であることを認めながら『神の名』において中国外交官を殺害すると脅した」という。中国大使を殺害しようとした、前代未聞のテロ未遂事件だ。 続きを読む
第10回日中時事交流フォーラム(広範な国民連合と中国華語シンクタンクの共催)が4月12日、オンラインで開催された。高市首相による「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」との発言を契機に極度に悪化した日中関係を踏まえ、「対話によって関係再構築をめざす」をテーマにした。100人余が参加し、司会は上海在住の中原萌さんが務めた。前半では沖縄県の高良沙哉参議院議員、福井県立大学名誉教授の凌星光氏、中国国際問題研究院の項昊宇氏がそれぞれ問題提起を行い、後半では参加者も交えた意見交換が行われた。 続きを読む
横浜国立大学名誉教授 山本 泰生 
昨年11月の高市首相の台湾有事発言以来、緊迫した日中関係は、いまだに打開の糸口は見えていません。私たちはこれを憂慮し、中国出身の方々を含む多数の参加を得て、日中の「平和をねがう」つどいを3月1日鎌倉市で開きました。
以下は、そこでの私の報告です。
昨今は、素直に「平和をねがう」なんて口に出しにくい、という雰囲気もあります。昨日も、また戦争が始まりました(米国のイラン攻撃)。 続きを読む
広範な国民連合代表世話人
青山学院大学名誉教授、世界国際関係学会(ISA)元副会長 羽場 久美子

高市氏は訪米し、トランプとの親密度を示した。日本国内では「よくやった」という声は大きい。しかし国際社会の反応を見ると、欧州、中東ともに、高市氏はトランプにゴマすりに行っただけだ、との声も強い。87兆円の投資を手土産にアメリカに行って「忠誠の踏み絵」とし、「世界の平和と繁栄を実現するのはドナルドだけだ」と持ち上げたと、日本に対する蔑みと落胆の声しか聞こえてこない。 続きを読む
福井県立大学名誉教授 凌 星光

日本は対中抑止力強化か、それとも対中友好外交強化かが問われている。総選挙の結果、前者の政治勢力が優勢を占め、「台湾有事即日本有事」ということで対中敵視政策が与野党超えて一段と広まった。
われわれ在日華僑華人にとっても直接大きな利害関係があり、関心を払わずにはいられない。
マスメディアなどの偏った報道によって、中国の実像が大きく歪められ、中国脅威論が独り歩きしている。そこで、以下の幾つかの点での実態を述べ、誤った中国イメージを正さねばと思う。 続きを読む
上海在住 中原 萌
中国で暮らしていると、歴史が遠いものには感じられなくなる。私の住む上海の中心部には、租界時代の洋館や銀行建築がいまも残っていて、たった数世代前までこの都市が外国勢力によって支配されていたことに気付かされる。
1919年に北京の学生たちが立ち上がった「五・四運動」は、日本でも比較的よく知られている。しかしその数年後の25年、上海でもう一つ大きな運動が起きていた。労働者の権利と、反帝国主義を訴える「五・三十運動」である。 続きを読む