国際情勢・政治一覧

中国共産党第20回全国代表大会 ■ これからの日本と中国

中国の改革開放は終わるのか?

東京大学教授 丸川 知雄

 

 

 

習近平の全面勝利に
終わった党大会

 2022年10月に開催された中国共産党の第20回大会およびその直後の中央委員会総会は習近平の全面的勝利となった。共産党のトップ7人である中央政治局常務委員のうち5人は「習近平派」とされる人々で固められ、「共青団派」に属するとされる李克強と汪洋は続投も可能な年齢だったのに、自発的に退任させられた。また、「共青団派」のホープだった胡春華は政治局委員からヒラの中央委員に降格となった。

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中国共産党第20回全国代表大会 ■ これからの日本と中国

「台湾統一急がず」に変化なし
中国党大会の意義と台湾政策

ジャーナリスト(元共同通信客員論説委員) 岡田 充

 

 

 

 5年に一度の中国共産党大会(第20回)が2022年10月16~22日に開かれ、中国式現代化政策を進め今世紀半ばに「社会主義現代化国家」と「中華民族の偉大な復興」を実現する中長期戦略を打ち出した。習近平総書記の3期目入りも承認し、習の「党の核心」地位と「党中央の権威」を守る「二つの擁護」を党規約に明記し習3期がスタートした。台湾政策では、統一を急ぐ記述や武力行使の容認は党規約には入らず、統一を急がない従来方針に変化はなかった。「ゼロコロナ政策」に反発するデモが11月末、北京、上海など全土に広がり、習と共産党退陣の声が上がったが、習指導部は規制を緩和する方針に大転換し、デモ拡大を抑え込んだ。

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中国共産党第20回全国代表大会  ■ これからの日本と中国

日中関係改善の好機を逃すな
3期目習近平指導部の対外政策を読み解き、適切な対応を

名古屋外国語大学名誉教授、日中関係学会副会長(元東京新聞・中日新聞論説委員、上海支局長) 川村 範行

 

 

 

 激動する国際情勢の中で、日本政府の舵取りが問われている。安全保障を基本とする日米同盟と経済貿易や歴史文化の絆をもつ日中関係の間で、日本は実に重要な立場にある。2022年10月の中国共産党第20回全国代表大会で3選を果たした習近平氏が盤石の体制を固めて、対米、対日の関係改善など積極的な外交に乗り出した。岸田政権はこの好機を逃すべきではない。ウクライナ戦争を契機に米国発の〝台湾有事〟が声高に叫ばれているが、日本は冷静に対応すべきである。中国を〝敵視〟するかのような安全保障政策の転換は、この好機に水を差すことになる。

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統一地方選 暮らしを大切に地方から声を上げる

平和をめざし、日中友好を進めていきましょう

和歌山県議会議員 藤本 眞利子

 

 

 

 

 今日の新聞にも「防衛費2%首相指示」との見出しが一面に大きく掲載されています。新聞には27年度をめどにトマホーク500発購入へという文字が躍っていました。
 日教組出身の私としては、「教え子を再び戦場に送る日」も近いのではと暗澹たる気持ちになってきます。
 国民の中には、ロシアのウクライナ侵攻を目の当たりにし、いつ何時日本が攻められるかもしれないといった漠然とした不安があって、国の動きを容認してしまう空気感につながっているように思います。

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長崎で日中国交正常化50周年記念集会

新時代の日中平和・友好関係をめざして

 

 長崎市で10月8日、〝新時代の日中平和・友好関係をめざして〟とのスローガンを掲げて「日中国交正常化50周年記念集会」(実行委員会主催)が開かれた。当初、9月19日を予定していたが台風の影響に伴い延期、43団体・法人と100人を超える個人の賛同を得て開催が実現した。県民、市民約150人が参加、来賓に長崎華僑総会、与野党国会議員秘書、県議会日中友好議員連盟の4県議をはじめ佐世保・厦門市青少年交流協会、県貿易協会、労組の代表者らも出席。多数の祝電・メッセージも寄せられ文字通り各界・各層、超党派による県民集会となった。

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日中国交正常化50周年に思う

国益を貫いた田中総理の英断

小長 啓一氏(元田中角栄総理秘書官)に聞く
(聞き手、本誌編集長・山本正治)

 

 

 

 こなが・けいいち 1930年生まれ。53年通商産業省(現経済産業省)入省、84年通産事務次官。アラビア石油(現富士石油)社長などを経て、現在、弁護士。田中角栄が通産相、首相の時に秘書官を務めた。

 

 日中国交正常化50周年に際して本誌(10月号)は、「この道をさらに前へ」との主張を掲げた。その中で当時の田中角栄総理の決断を、「歴史的な決断であり、かつ、50年を経過して激変の今日の国際社会でも、わが国の正しい進路の指針となる英断であった」と評価した。だが、50年前の状況を知る人は少ない。本誌は、通産大臣から総理大臣となった田中角栄氏の通産大臣時代から秘書官を務められた小長啓一氏に当時の状況と感慨を伺った。インタビューはくしくも9月29日となった。
 誌面の都合で割愛するが、日中関係だけでなく、第1次石油ショック時の総理大臣として展開された「資源外交」など興味深い話もお伺いすることができた。米英の石油メジャーが支配する中東依存ではなく、旧ソ連やメキシコなど中南米にも資源外交の足を延ばしたことなど、50年前のことではなく、今のこととして伺った。日本の政治家は、「自主的な日本」を目指す気概を受け継ぐ必要があると感じた。(山本正治)

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日中時事交流フォーラム第3回、4回開催

第4回「日中国交回復50周年とアメリカの東アジア戦略」
羽場久美子教授が報告

 4回目の「日中時事交流フォーラム」は6月19日に開催された。フォーラムでは、日本側から羽場久美子先生(青山学院大学名誉教授、世界国際関係学会アジア太平洋会長)が「日中国交回復50周年とアメリカの東アジア戦略」をテーマに報告した。羽場先生の報告に対して、沖縄から我部政明先生(琉球大学名誉教授、沖縄対外問題研究会代表)と、中国側から華語シンクタンク執行理事長の徐長銀先生がコメントした。また、彭光謙先生(華語シンクタンク理事長)が最後にあいさつとコメントを述べた。以下、概略。   (文責:フォーラム事務局)

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ペロシ米下院議長訪台

日中国交正常化50周年に考える平和と労働組合の役割

ものづくり産業労働組合JAM会長 安河内 賢弘

 

 

 1991年、ナンシー・ペロシ氏は天安門広場で、「中国の民主主義のために亡くなった者たちへ」と刺繡された横断幕を掲げた。およそ30年後の2022年8月3日、下院議長のナンシー・ペロシ氏は蔡英文総統と会談し、自身の訪台は米国が台湾を見捨てないことを明確に示すものだと伝えた。

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沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム ■黄 星原

この先の50年、われわれは何をなすべきか

日中友好会館中国代表理事 黄 星原

 

 

 皆さん、こんにちは! 日中友好会館の黄星原です。
 先月、東京で小学生のスピーチ大会に出席した時に、日本生まれの8歳の中国の子に、「日本と中国はまた戦争やるの?」と聞かれて、本当にびっくりしました。とにかく深く考えさせてくれました。
 本来なら、日本と中国の間に戦争の教訓があって、「日中平和友好条約」を結んでいるので、戦争がそもそも話題になるはずがない。

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沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム ■屋良 朝博

平和のハブを形成する

ジャーナリスト・元衆議院議員 屋良 朝博

 

 

「有事」を煽る怪しさ

 台湾有事は日本有事と語った元首相がいた。有事の対語が平時=平和であれば、平和主義者をナイーブな理想論者だと批判する思想が勢いを増してきた。ロシアのウクライナ侵攻がその推進力となっている。
 仮に元首相らが言うように中国がロシアに倣い、台湾で武力を行使し、それが日本有事へと延焼するなら、その時に沖縄は真っ先に戦禍に巻き込まれるだろう。多くが思い描くリアルなシナリオではなかろうか。あまりにも悲惨でグロテスクな光景を想像できるからこそ、「それでも戦争できますか」という問いかけもまた大いに現実的である。

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沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム ■上里 賢一

東アジアの平和的安定こそ、沖縄の生き残る道

琉球大学名誉教授 上里 賢一

 

 

「台湾有事」は、沖縄の破滅

 アジアの地図を広げると、沖縄は絶妙な位置にあることがわかる。西に広がる中国大陸の東南、日本列島の九州の南に弓状に連なって台湾につながっている。さらに南に目を向けると、フィリピンから太平洋島嶼、インドシナ半島からマレー半島、インドネシアへと続いている。
 かつて、琉球王国時代の琉球は、これらの地域を相手に交易し、「舟楫を以て、万国の津梁となす」(万国津梁の鐘銘)という言葉で知られる「大航海時代」の黄金期を形成した。1372年(明の洪武5年)に中山王察度が、明の皇帝の招諭に応じて使者を派遣してから、1879年(明治12年)に日本に武力併合されるまでの約500年間、琉球は独立国として明・清の冊封を受けた。途中、1609年に薩摩の侵攻を受けて、幕藩体制に組み込まれるが、幕府と薩摩の対中国貿易への関心から、薩摩支配は隠蔽され、中国との交易は薩摩侵攻後も継続された。

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沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム ■朴 相鉄

東アジアに3つのメガFTA
IPEFの台頭で紛争のリスク

韓国ポリテク大学教授 朴 相鉄

 

 

 私は今スウェーデンにおります。戦争が行われているウクライナまで1500キロしかありません。ここにはウクライナから避難してきた難民の方々がたくさんいます。戦争はどのような形態であれ、人間性を抹殺します。ですから私たちはいかなる戦争もやってはいけない、反対しなくてはいけないということです。
 そういった側面から、沖縄において現在推進しようとしている「平和のハブ」は、非常に素晴らしいことだと思います。先に発表なさった皆さまのお話のように、東アジアにおいてもいかなる戦争も起きてはいけない。沖縄の平和がこれからも続くことを祈ります。
 併せて、このシンポジウムに招待してくださいました関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。

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沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム ■楊 伯江

日米同盟と中国との対立の最前線になるか、
アジアの平和と協力のハブになるか

中国社会科学院日本研究所所長 楊 伯江教授

 

 

 今日のテーマは、「沖縄は平和協力のハブになるか大陸対抗のフロントになるか」です。
 中国では沖縄と聞くと琉球を思い起こします。万国津梁の地とされて中国と緊密な関係を築いていました。北には九州と朝鮮半島、南西には中国の福建省、南には東南アジア諸国。貿易の中継地として東アジアの海上貿易において重要な役割を果たしていました。その時代は、琉球王国の大航海時代とも呼ばれています。琉球と中国の関係は、相互依存であり、切っても切り離せない関係です。この時代は、沖縄の歴史において重要なページであるだけではなく東アジア貿易システム、地域の平和と協力の歴史においても重要な部分でもあります。

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沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム ■羽場 久美子

■基調の問題提起 ― 沖縄をハブとし東アジアの平和ネットワークを作る

青山学院大学名誉教授 羽場 久美子

 

 

 皆さんこんにちは。羽場久美子でございます。
 「沖縄をハブとする東アジアの平和ネットワークをめざす国際シンポジウム」という場で、まさにその沖縄をハブとし東アジアの平和ネットワークをつくる、中国や近隣国とは戦争しないという立場から、報告をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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