日中平和友好条約45周年

確認された原則を踏まえ、もっと前へ!アジアの共生へ!

『日本の進路』編集部

 10月23日、日中平和友好条約発効から45周年を迎える。「国交正常化共同声明での原則」や「平和5原則」などにのっとった両国関係を再確認し、もっと前へ進まなくてはならない。
 1931年9月18日に満州事変・中国侵略戦争を本格化させて47年、日本敗戦から33年、ようやくわが国は中国と条約で正常化を実現した。日本は日米安保体制下だったが中国と協力関係を強化する道に進んだ。


 その後の日中双方の発展は目覚ましい。とりわけ中国は急速に発展しアメリカと並ぶ経済大国となった。日本はその発展に貢献し、自らも経済発展した。こんにち日本の総貿易(輸出入)の20・3%が中国とである(米国は13・8%。2022年)。コロナ禍前の19年、訪日観光客2800万人のうち30%強が中国からである。
 こうした日中関係がアジアの平和と発展に大きく寄与していることは論をまたない。
 歴史的に見ても隋・唐の時代から、ときに波風があっても両国は切っても切れない隣国である。平和友好条約45周年を機に関係をいっそう強化・発展させることは、両国の真の利益であり、アジアが望んでいることである。
 最近G20首脳会談が開かれ、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国が主役となったと言われる。しかし喫緊の課題である気候危機対策でも、深刻な債務対策でも新興・途上国への明確な支援はなかった。また、感染症対策や情報化社会・技術革新への対応など国際社会で課題は山積である。
 日中両国が協力関係を深めれば、アジアの課題、世界史的課題に貢献ができるのは間違いない。

何故真逆を進むのか

 ところが昨今の日中両国のベクトルはすれ違う。
 中国が米国に次ぐGDP大国となって、「中華の復興」を強力に進めていることに日本では危機感をもつ向きもある。岸田首相は9月のASEAN首脳会談で中国首相を前に、名指しはしないまでも「力による一方的な現状変更」や「経済的威圧」に反対すると力説した。
 中国は急速に成長したが、しかし今も1人当たりGDPは世界68位、ロシアよりも下に位置するに過ぎない(IMF統計)。18世紀まではインドとともに世界経済の中心だった国が、アヘン戦争に始まって日本や欧米帝国主義諸国にさんざん蹂躙された結果だ。いま習近平指導部は、繁栄の歴史を再興しようと努力の最中である。もしも何か気がかりがあったとしても、自国の歴史の反省を踏まえながら友好的に話し合えばよい。
 李強中国首相は、会談時の岸田首相との「立ち話」で「条約45周年となったのを契機に、両国関係の改善と発展を推進したい」との意向を表明した。岸田首相はこの呼びかけを生かすべきだ。
 それどころか進んだ事実は真逆である。先立つ8月末、岸田首相は米日韓首脳会談に臨み、軍拡・抑止力強化で中国と対抗する事実上の軍事同盟化に踏み込んだ。

排外心を煽ってはならない

 ましてや原発汚染水放出問題では、反中国の「愛国心」の鼓舞である。
 福島県をはじめ国内と中国など近隣諸国の反対にもかかわらず、政府はきちんとした説明もしないまま放出を強行した。
 中国は水産物輸入の全面暫定停止で対抗した。だがそれは日本政府には響かない。困難は漁業者だけだ。
 マスコミによると「政府筋は、海洋放出という国策への賛否が、愛国心を測るバロメーターになった感がある。政権にとって追い風」と見ているという(「沖縄タイムス」9月19日)。政府もマスコミも、「IAEAが認めた」「科学的」を呪文のように唱え、事あるごとに反中・嫌中民族感情を煽っている。「汚染水」と呼ぶのは「国益に反する」と言う極端な野党党首まで現れた。
 日中平和友好条約45周年であり、関東大震災朝鮮人・中国人虐殺100年でもある。
 日中の共存共栄、アジアの共生へさらに前進すべきときである。