日中平和友好条約45周年 歴史の反省を忘れない

この道を堅持し緊張緩和・平和と発展へ

『日本の進路』編集部

 沖縄県は6月23日「慰霊の日」を迎え、8月15日には日本敗戦から78年を迎える。一方、8月12日は日中平和友好条約45周年の記念すべき日だ。
 岸田政権は通常国会で軍事費増を担保する特別措置法を成立させた。中国を事実上の「敵国」扱いし、歴代自民党政権が曲がりなりにも堅持してきた「専守防衛」の原則を投げ捨て、軍事大国への道を公然と進み始めた。
 こうした岸田政権に反対し、平和国家として近隣諸国地域との対話と交流強化をめざす動きも進んだ。とくに沖縄県の㆒連の動きは象徴的で、県の「地域外交」が始動し、間もなく玉城デニー知事も訪中する。平和をめざす県民運動では若者を先頭に新しい動きも進む。
 6月24日にはシンポジウム「沖縄を平和のハブとする東アジア対話交流」も成功した。
 こうした新しい流れを促進し全国に広げ、自主・平和の外交で東アジアの平和と安定、繁栄につなげる時だ。日中平和友好条約45周年をその時にしようではないか。

軍事大国への歴史的転換

 岸田政権が米国の中国抑止世界戦略に沿って昨年末に決めた安保関連3文書は、2023~27年度までの軍事費総額を43兆円にするとした。その軍事費財源を確保する特別措置法が6月16日、成立した。
 だが、国民はこれを支持していない。共同通信の世論調査では、軍事力強化のための増税方針を「支持する」はわずか19%で、「支持しない」が80%。総額43兆円にも「適切ではない」が58%と過半数を占める。
 敵基地攻撃能力の保有はアジアの緊張を高めるだけだ。しかも政府は27年度の「防衛関連予算」を国内総生産(GDP)比2%にするという。日本のGDPは世界第3位で、有数の軍事大国になる。
 侵略された歴史をもつアジア諸国が身構えるのは当然だ。政府は中国の「脅威」と言うが、中国の軍事費はGDPの1・2%程度に過ぎない。広大な国土、圧倒的な軍事力のアメリカに戦略的に包囲されているにもかかわらずである。
 岸田首相は「異次元の」少子化対策などというが財源確保がままならない。しかも貧困化に苦しむ若者など国民は物価高やコロナ禍の追い打ちで苦しみは倍増。そこにこそ財源を回すべきだ。
 軍事力強化で抑止する道は際限のない軍拡競争、地域の緊張を高めるだけだ。

平和友好条約はわが国の真の安保政策だ

 岸田首相は最近、「法の支配にもとづく国際秩序を守り抜く」とことあるごとに強調する。
 日中平和友好条約は、わが国が過去の歴史の「責任を痛感し、深く反省する」(共同声明前文)として実現した国交正常化の日中共同声明を条約として確認したものである。条約は国会が承認し批准され、日本国憲法は締結した条約の遵守を求めている。岸田首相と政府も国会も遵守しなくてはならない。それこそが「法の支配にもとづく国際秩序」である。
 条約前文は、「共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきことを確認」している。諸原則の第1は、条約第1条の「5原則」、すなわち、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則にもとづく両国関係の確立である。他に、同第2項の「国連憲章の原則」、それに「復交三原則」である。「中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の合法政府である。台湾は中国の不可分の領土である。日華平和条約は不法無効であり廃棄されるべきである」である。
 条約で確認した「復交三原則」を堅持しなくてはならない。最近の日本では、政権与党の中でも、野党でも、「台湾は中国の不可分の領土」のこの原則を忘れたかの言動があまりにも目立つ。台湾の統㆒問題は、あくまでも中国の内政問題だということを国家間の条約でわが国は確認しているのだ。45周年の今、しっかりと思い起こさなくてはならない。それが、「台湾有事」を避け、日中関係を発展させる最大の安全保障政策となる。
 なお、三原則の3番目の「日華条約」の廃棄問題。それまで日本政府が米国に押しつけられて台湾の国民党「政府」と「国交」を結んでいた。この「日華条約」問題は日本国内の「右派」が強固に反対する政治状況からさすがの田中角栄首相もてこずった。この間の事情を知っている周恩来首相は合意後の宴会あいさつで、「国交正常化のために貢献し、命を犠牲にすることを惜しまなかった日本の友人に敬意を表したい」と高く評価したのだった。
 今求められるのはこうした政治家たちだ。

日中関係打開、平和と発展へ注目すべき流れ

 沖縄県議会は3月30日、日中関係の4つの基本文書を基礎に両国関係を発展させ東アジア地域の安定をめざす意見書決議を採択した。県の地域外交は本格始動した。6月23日、慰霊の日の追悼式での玉城知事は平和宣言で安保3文書を公然と批判、平和をめざす地域外交推進を表明した。
 那覇市での「沖縄を平和のハブとする東アジア対話交流」シンポジウムには、玉城知事や鳩山友紀夫元首相が来賓として参加した。山崎拓元自民党副総裁・防衛庁長官もパネリストとして参加した。
 玉城知事はあいさつで、「軍事力による抑止のみではかえって地域の緊張を高め、不測の事態が発生すると県民が強い不安を感じている」と指摘し、「このような中、平和的な外交・対話による緊張緩和や信頼醸成に向けたプロジェクトが沖縄で開催されることは、誠に意義深い」と述べて高く評価した。
 この流れを沖縄にとどめず全国に広げなくてはならない。
 東京の小金井市議会が沖縄県慰霊の日に合わせるかのように6月23日、沖縄県議会意見書を支持し国に「沖縄県議会の平和外交意見書を重く受け止めて、中国との対話と外交に真剣に取り組むことを求める意見書」を採択した。意見書は、沖縄県意見書の核心部分と言える「日中共同声明」をはじめ4つの基本文書などを明記し、それに沿って外交を進めるよう政府に求めている。
 小金井市議会で奮闘された皆さんに敬意を表し学び、それぞれの自治体議会で具体化し全国に広めなくてはならない。8月に長崎市で開催予定の全国地方議員交流研修会の大きな課題でもある。
 その条件は十分ある。「日経新聞」の6月末の世論調査でも、「日中は対話を進めるべき」と答えた人が実に75%、さらに自民党支持層に限ると79%に上るという。自民党支持層の圧倒的多数が、自民党指導層の対中国対応に不満をもっている証左であろう。
 日中平和友好条約45周年のこの夏、日中関係再構築を進めたい。

岸田政権打倒の時

 マスコミの6月世論調査で岸田文雄内閣の支持率が大幅急下落している。下げ幅最大は「読売新聞」で実に15ポイント。経済困難と物価高など生活苦が国民の不満を高めていて、理由は「政策が悪い」が最多だ。だが、世界経済金融危機は深まる一方で、しかも国家財政危機が深刻で、手の打ちようも限られる。国民の生活に関わる内政問題で政権支持の回復は容易でない。
 あるマスコミが麻生派幹部の声として、「外交による支持率上昇の効果が長続きしなかった」と伝えた。本質を突いていそうだ。そうした構図は、安倍政権から変わらない。安倍首相が得意とした政治策略である。しかし、これ以上日中関係が緊張すると肝心な経済、生産と貿易で密接不可分な日中関係を破壊する。それは自民党の支持基盤をも揺るがす。
 岸田政権は、袋小路に入った。戦争になりかねない危険な道を歩む岸田政権を打ち倒し、国の進路の軸を変えるチャンスである。