安全保障・防衛一覧

進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」 福岡県

自衛隊築城基地(福岡県)
「沖縄の基地が武力攻撃で使用不能になった場合」
にと急ピッチで進む米軍基地化

平和といのちをみつめる会代表 渡辺 ひろ子

 築城基地は、太平洋戦争中は海軍の航空隊の基地であり、戦後の一時期は米軍が駐留、その後、航空自衛隊基地になりました。戦時中は米軍の激しい攻撃で多大な被害を受け、戦後の米軍駐留時には米兵による犯罪の犠牲に泣いた人々も多くいます。

 しかし、そういう体験をもつ人たちも高齢化し、「米軍は絶対にダメだ!」と語る老人もいなくなりました。

 1988年に始まった築城基地での日米共同訓練はその後、「在日米軍再編に伴う訓練移転」という名に変わり、「沖縄の負担軽減のため」という大義名分を得て実施されています。

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進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」 佐世保市

自衛隊水陸機動団強化(佐世保市)
訓練に反対し漁民や住民が声を上げる

広範な国民連合・長崎 代表世話人 中村 住代

 西海市の崎戸町で陸上自衛隊水陸機動団の訓練計画についての住民説明会が開催されたのは、昨年2021年10月18日だった。

 訓練は町内すなわち島の全域で、しかも毎月7日未満で年間70日未満の訓練期間で恒常的に実施されるという。ヘリコプターの騒音による生活環境の悪化や漁業被害が危惧され、到底受け入れることはできない。急きょ「崎戸町生活環境を考える会」(代表・上野久美子さん)が結成された。11月24日、市長に訓練計画中止を求める文書を提出し、さらに12月22日に、市長に「住民の合意が得られていないことを踏まえ、陸上自衛隊水陸機動団の訓練計画中止を求める要望書」を直接手渡し、意見交換した。

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進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」 宮崎県

自衛隊新田原基地(宮崎県)
F35Bを20機配備、米軍用弾薬庫も

宮崎市議会議員 中川 義行

 

 

 防衛省は新田原基地に新たにF35Bを2024年度に6機、25年度に2機配備し、将来的に約20機配備することを明らかにした。防衛省は新たな自衛隊基地整備が計画されている馬毛島(鹿児島県西之表市)に近いところから新田原基地が最適と説明。F35Bはレーダーに感知されにくいステルス性能を備え、短距離離陸、垂直着陸ができるのが特徴。F35Bを20機も配置する目的は何だろうか。

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進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」  鹿児島

鹿児島での軍事基地化の動き
強引に進む馬毛島基地計画

鹿児島県議会議員 上山 貞茂

 

 

 西之表市矢板市長は2月3日、岸信夫防衛相と馬毛島自衛隊基地計画の件で会談をした際、地元の意向を反映させるため、計画を前提に国と市による協議の場の設置を要請、基地整備に伴う米軍再編交付金や自衛隊員の住居について「特段の配慮」を求める要望書を提出した。これまで「計画に同意できない」と反対の立場を堅持していただけに、馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会などに衝撃が走った。基地の賛否で島民の分断を避けたいと思いを語っていた市長だが、昨年末に総額3千億円超の基地整備費を計上した2022年度政府予算案が閣議決定され、1月には馬毛島が基地の「候補地」と日米間で確認、賛成派市民から「反対していたら交付金がもらえない」との声に押された形である。

 国との協議がなされないまま地元無視の強引な手続きに対し、市長は「現実的な対応で市民の不安を解消する必要がある」としているが、賛否が拮抗している問題であるからこそ拙速な行動は慎むべきだった。会談には、鹿児島4区選出の森山裕衆議院議員も同席、圧力が働いたのではないかと推察されるが、計画を受け止めることが前提でなければ協議の場を設けないとする国の姿勢は民主国家と言えるだろうか(市長は賛否を表明していない)。

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台湾有事を避けるために

日本の外交・安保はどうあるべきか 
安心供与の外交こそ大事

新外交イニシアティブ(ND)代表・弁護士 猿田 佐世

 

 

 

 

ウクライナ紛争からの教訓

 2月24日にロシアがウクライナに侵攻し、世界は騒然としました。凄惨な被害を受け続けるウクライナの情勢を見て、元来9条護憲を掲げていた方々の中には、これまでの信念が揺らぎ、軍事力拡大が必要なのではないか、と考えを変えた方がいるとも耳にしています。私も、攻撃開始後1週間ほど、今後の自分の考えをどのように伝えるべきか、大きく影響を受けた日本社会の中で悩みました。

 大国が戦争を決意したら「抑止力」とかなんとか言っていても戦争になるんだ、そういう決意をさせない環境づくりが大事なのだと改めて実感しました。戦争が始まってしまったら取り返しはつかず、戦争を始めさせないことが重要です。

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経済安保法成立

「経済主権」はますますないがしろに

本誌編集長 山本 正治

 

 「経済安全保障法」が5月11日、野党を含む賛成多数で成立した。
 高度な先端技術の海外流出を防ぎ、経済や生活に欠かせない物資を確実に確保するため、政府が企業の活動を罰則付きで監視、あるいは助成するという。

 実質は米国の対中戦略に沿ったものだ。バイデン政権の「専制主義」との闘い、経済サプライチェーンの分断、経済のブロック化を前提にしており、東アジアの緊張激化と経済混乱を促すだけだ。しかもわが国の、経済面での対米自主を妨げ、従属関係からますます抜け出せない構図である。犠牲はわが国企業と国民に押しつけられる。

 中国をはじめアジア諸国との共生をめざす自主的平和外交だけがこの危機からの脱出の策である。

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沖縄の日本復帰50年

沖縄問題は、本土の問題、日本政治の問題

元自民党幹事長 山崎 拓

 

 

 

 

 沖縄が復帰してから50年もたつわけです。しかし、今も、基地負担が大きくのしかかっている。本土の政治家として、そのことに深く責任を感じます。
 「オール沖縄」の勢力で県政を担っている玉城デニー知事が、その解決を求めるのは当然です。普天間基地の辺野古への移設について反対だというのは、県民投票などで示された県民の意思、総意であるわけで、県政を預かる知事がそれを進めるのは民主主義から言っても当然です。そこは私も理解します。

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日本を戦場にする米国「台湾有事」戦略

日中平和友好条約こそ基本

参議院議員 伊波 洋一

 

 

 

戦争あおる南西諸島の軍事化

 私はオール沖縄の参議院議員として外交防衛委員会で、南西諸島の軍事化の問題を重視して取り組んでまいりました。

 今、私たちの国はたいへん危険な方向に向かっています。10年の中国漁船と海上保安庁の巡視艇の衝突事故を契機に12年に尖閣諸島が国有化され、日中関係がたいへん厳しい状況になっていく中で、「南西諸島の軍事化」が米国から日本に求められたと思っています。現在は、日本が自らの国益や本来の主権を見失って、アメリカの意のままに翻弄される状況です。

 今年1月7日に開催された日米の外務・防衛閣僚2+2協議では共同通信が報じた自衛隊と米海兵隊の台湾有事の共同作戦計画原案をさらに進展させる南西諸島の自衛隊基地の日米共同使用や「日米共同作戦」策定の合意となりました。5月5日には岸防衛大臣がワシントンでオースティン米国防長官と会談し、日本の防衛力の抜本的強化と双方の戦略を緊密な協議を通じて擦り合わせていくことを確認しました。まさに戦争への道をまっしぐらに進む状況になっています。

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「日中衝突を煽ってはならない」木元 茂夫

通年化する対中国の日米共同訓練 
急速に進む日米軍事一体化と多国間安保への道

木元 茂夫

 

 あまり注目されなかったのだが、昨年2月3日に「日英外務・防衛閣僚会合」が開かれた。その共同声明に次のようにある。
 「4大臣は、海洋安全保障における日英協力が引き続き優先事項であるとの前向きな進捗を再確認し、これを更に強化していくこと及び地域の安全保障を維持するためにリーダーシップを発揮していくことにコミットした。4大臣は、空母打撃群の東アジア訪問が日英防衛協力を新たな段階に引き上げる機会となるよう、協力していくことを確認した。4大臣はまた、この訪問が自由で開かれたインド太平洋に資するとの認識を共有した」

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米中激突の東アジア、問われる日本の進路 2-11 [最終]

第17回全国地方議員交流研修会 ■ PART2 パネルディスカッション

日本が協力しなければ、戦争は起こらない

羽場 久美子

 ありがとうございます。
 皆さんのご報告、とくに伊波さん、それから柳澤さんのお話に全面的に共感します。また地方自治体の方々のお話も非常に共感いたしました。
 本日言いたかったことは、「新冷戦」はすでに始まりつつあること、その際、日本は最前線で近隣国に対し守りを固める立場に置かれているということ、アメリカが、日本や台湾やオーストラリアと結びつつ、中国の封じ込めを考えていること、その中で、中国の専制主義批判や、人権批判、台湾有事の防衛があるということです。逆ではない。つまり中国が軍事化するから、日本も周辺国も軍事的に備えなければならない、というのではない、ということです。 続きを読む


「抑止一辺倒を越えて」を提言して

日本は嬉々として米国陣営の「雄」となり、「熱戦」の道を進むのか

NPO「新外交イニシアティブ(ND)」

代表・弁護士 猿田 佐世

 米中対立は激しさを増す一方であり、このままでは「新冷戦」にとどまらず、この地域で「熱戦」が起き、日本も戦場になりかねない。世界も米ブロックと中国ブロックに二分されていく。この状況下で日本には、軍事力強化の声しか存在しないかのような空気である。筆者が代表を務める新外交イニシアティブ(ND)では、この事態を強く懸念し、安全保障についての政策提言書「抑止一辺倒を越えて~時代の転換点における日本の安全保障戦略」を発表した。ぜひ、ご注目いただきたい。 続きを読む


時代の転換点における日本の安全保障戦略

抑止一辺倒を越えて

元内閣官房副長官補 柳澤 協二

 NPO法人「新外交イニシアティブ」は、3月、「抑止一辺倒を越えて」と題する安全保障に関する提言を発表した。同提言は、北朝鮮、ロシア、韓国、インド太平洋、中東など、広範な外交課題についても触れているが、ここでは、米中対立のなかにおける日本の対応に関する部分を中心に紹介する。
 執筆者の一人である私の問題意識の根底にあるのは、米中対立というこれまでになかった世界の構造変化のなかで、その最前線に位置する日本が、従来の日米同盟に依存した発想のままでやっていけるのか、という疑問である。一方、日米両国政府とその安全保障政策に携わる人々、さらに、両国の安全保障の専門家といわれる人々の間には、「われわれと異なる価値観を持って、われわれが馴染んできた国際ルールを作り替えようとする中国を封じ込めるため、米国の軍事的優位を支えなければならない」という認識が共有されている。 続きを読む


南西諸島軍事要塞化 ■ 馬毛島基地化の西之表市長選・市議選

市民は「基地建設ノー」の意思を示した

西之表市議会議員 長野 広美

 全国からも注目された鹿児島県西之表市の市長および市議会議員選挙は1月31日、投開票された。市長選は、馬毛島基地に反対する現職・八板俊輔市長が勝利した。市議会は、反対派7人で、賛成6人、中立1人と勢力図が変わり、今後の議会運営は困難が予測される結果となった。 続きを読む


南西諸島軍事要塞化 ■ 馬毛島基地建設反対の西之表市長

独立国日本として、今さら「生地」を米軍に差し出すわけにはいかない

八板俊輔 市長に聞く(聞き手、山本正治編集長)

 

 

 

 

◆2期目当選おめでとうございます。選挙結果をどう受け止めておられますか――
 過半数の支持を受けて当選させていただきました。前回は、候補者が乱立したこともありましたが、今回は5103票で前回を大きく上回る支持をいただくことができました。大変心強く思っています。
 同時に、島の経済基盤の確立や人口減少などに対する市民の皆さま方の心配なども、選挙を通じて実感しているところです。そうした課題に市を挙げて、団結して取り組んでいこうと考えています。

日本は植民地と同様の状況だ、真の独立国と言えるか

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