進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」  鹿児島

鹿児島での軍事基地化の動き
強引に進む馬毛島基地計画

鹿児島県議会議員 上山 貞茂

 西之表市矢板市長は2月3日、岸信夫防衛相と馬毛島自衛隊基地計画の件で会談をした際、地元の意向を反映させるため、計画を前提に国と市による協議の場の設置を要請、基地整備に伴う米軍再編交付金や自衛隊員の住居について「特段の配慮」を求める要望書を提出した。これまで「計画に同意できない」と反対の立場を堅持していただけに、馬毛島への米軍施設に反対する市民・団体連絡会などに衝撃が走った。基地の賛否で島民の分断を避けたいと思いを語っていた市長だが、昨年末に総額3千億円超の基地整備費を計上した2022年度政府予算案が閣議決定され、1月には馬毛島が基地の「候補地」と日米間で確認、賛成派市民から「反対していたら交付金がもらえない」との声に押された形である。

 国との協議がなされないまま地元無視の強引な手続きに対し、市長は「現実的な対応で市民の不安を解消する必要がある」としているが、賛否が拮抗している問題であるからこそ拙速な行動は慎むべきだった。会談には、鹿児島4区選出の森山裕衆議院議員も同席、圧力が働いたのではないかと推察されるが、計画を受け止めることが前提でなければ協議の場を設けないとする国の姿勢は民主国家と言えるだろうか(市長は賛否を表明していない)。

 防衛省は4月20日、環境影響評価準備書を公表、環境アセス手続き最終段階の「評価書」の提出を年度内に終え本体工事着工まで進めたいとしている。騒音調査手法のお粗末さは目に余る。

 田村明弘横浜国立大名誉教授は防衛省が採用した指標の根拠について、50年前の調査に基づくもので、最新の調査分析で予測し直すと基準値を超え3割以上の人が強い不快を感じると推定する。マゲシカの生態への影響では立澤史郎北海道大学助教は、本来オスとメスのすみ分けが必要で、森や丘といった多様な環境を再現しなければ一切解決しないと懸念を示す。

 防衛省が環境アセスの手続き中にもかかわらず、多額の工事発注をしていることに対してアセスの主管省庁である山口壯環境相は、「契約自体はアセス法に抵触しない」と述べた。手続き中の工事発注を適法と言うなら、環境アセス法自体に疑問を持たざるを得ない。防衛は国の専管事項と自治体や住民に暴力的となる。手続きを無視する、解釈でごまかそうとする、自治体への情報提供も制限する、説明しない、交付金で動揺させる、市民を分断させるなどなど、とにかく基地建設ありきである。

鹿屋では米軍無人偵察機配備

 防衛省は、海上自衛隊鹿屋航空基地に米軍無人偵察機MQ-9を一時展開する計画についても地元説明会を開催している。7月ごろから1年間、8機を配備する意向。説明会では軍事的な必要性だけが強調され、日米地位協定や住民の不安に対しても満足な回答は得られていない。ましてや人数制限を課しての説明会は住民目線とは言いがたい。

 日常では国防は意識しない。だが、国防が地方自治をゆがめてはならない。防衛施設はいったん出来てしまえば後は我慢するしかない。子どもたちに安心で安全な環境を残したいという切実な思いで活動している方々と最後まで闘っていく。

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