進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」 京丹後市

米軍Xバンドレーダー基地(京丹後市)
目的は「米国本土防衛」、犠牲は日本に

京丹後市議会議員・米軍基地建設を憂う宇川有志の会 永井 友昭

 京都府京丹後市にある米軍Xバンドレーダー基地(在日米陸軍経ヶ岬通信所)は、丹後半島経ヶ岬の西の海岸に突出した崖の上に建設されています。このところ盛んに日本海へ発射される北朝鮮のミサイルを早期に捉えて米本国の防衛を果たすというのがその目的です。


 私はこの基地を毎日外から観察していますが、外からでは具体的な様子は分かりません。ただ、昨年5月ごろには3年に及んだ「2期工事」が完成し、約20人といわれる軍人たちが常住するようになりました。今年になってレーダーの改修(強化?)、発電機の更新、諸施設の修繕や更新など進んでいます。この状況を見ると、基地が最前線基地として要塞化されてきていることが容易に想像できます。かつては隣接の寺院から金網越しに見ることができたレーダーサイト近辺の様子も、高くて厚い防御壁で見えなくされました。

 昨年6月末から7月初めにかけて全国で大規模な日米共同軍事演習「オリエント・シールド21」が行われましたが、ここ経ヶ岬の日米の基地もその中のメイン会場の一つでした。日米数百人の防御訓練が何日も行われました。この共同訓練は毎年やられていますが、その規模や内容は大きくなるばかりです。

 このような中、現地の私たち「憂う会」と丹後全域の「丹後の会」は基地の現状や問題点を市民に広報し、事あるたびに市や防衛局へ働きかけをしてきました。私は、地元選出の議員として議会のたびに一般質問でこの米軍基地問題を取り上げて市の姿勢を質してきました。この1年の主立った質問を紹介すると、①基地からの排水の問題、②基地関係者のコロナ陽性問題、③共同訓練での民間人対応問題、④重要土地規制法問題などです。

 特に重要土地規制法は、政府の恣意的な判断で基地の周辺に人権侵害の規制をかけようという明らかに憲法違反の法律です。大きな批判を受けながら昨年6月に与党によって強行採決、成立したのはご存じの通りですが、その施行が今年9月に迫っています。経ヶ岬の日米の軍事基地がその「注視区域」に入ることは間違いないと思われますが、具体的なことがいまだに何も分かりません。3月議会では、「この法律の付帯決議の第1には地元自治体からの聞き取りが記されているが、どうなのか?」と市長に迫り、「まだ何もないが、住民の皆さんの声をしっかり聞いてそれに応えたい」という回答を得ました(6月7日現在でも何もなしとのこと)。

 ロシアのウクライナ侵略、米中対立、北朝鮮の度重なるミサイル発射、日本海での日米や米韓の合同訓練などが同時並行で起こり、緊迫度を増しています。岸田政権は国防費の倍増で防衛強化をなどと言い出してきました。五十数基の原発を海岸線に並べてその再稼働に血道を上げながら、どうやってこの国を守ろうというのか。アメリカの軍事産業への奉仕だけがその意味するところです。

 5月24日(火)のお参り(筆者は、毎日の基地監視活動を隣接のお寺参拝と合わせてこう呼ぶ)では、米軍基地に大型マイクロバスで自民党府議団が視察に来ていました。米国領事館の車も傍らに。対米従属の深化の実態を見る思いがします。

 われわれ日本国の武器は「憲法9条」、これを掲げて世界に出て行くことこそが人類の明日につながる、この国のとるべき戦略です。