進む軍事強化――「本土」の「沖縄化」 佐世保市

自衛隊水陸機動団強化(佐世保市)
訓練に反対し漁民や住民が声を上げる

広範な国民連合・長崎 代表世話人 中村 住代

 西海市の崎戸町で陸上自衛隊水陸機動団の訓練計画についての住民説明会が開催されたのは、昨年2021年10月18日だった。

 訓練は町内すなわち島の全域で、しかも毎月7日未満で年間70日未満の訓練期間で恒常的に実施されるという。ヘリコプターの騒音による生活環境の悪化や漁業被害が危惧され、到底受け入れることはできない。急きょ「崎戸町生活環境を考える会」(代表・上野久美子さん)が結成された。11月24日、市長に訓練計画中止を求める文書を提出し、さらに12月22日に、市長に「住民の合意が得られていないことを踏まえ、陸上自衛隊水陸機動団の訓練計画中止を求める要望書」を直接手渡し、意見交換した。


 その席で、市長は12月15日に機動団側から、「今回の訓練計画は中止するとの連絡があった」と明らかにした。訓練計画の全てが中止になったのか確認したところ、「今回の訓練が全面中止となった」ことを確認した。

 住民パワーが訓練中止に追い込んだが、白紙撤回ではない。「会」としては気を緩めることなく、今後も白紙撤回に向けて闘う決意という。

 2018年4月7日に発足した水陸機動団は、本部を佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地に置き、現在、主力部隊である第1、第2連隊(各約600人)と後方部隊などを合わせると約2400人規模となる。また、今回、3カ所目の連隊誘致を長崎県や大村市が積極的に働きかけた結果、2023年度に陸自竹松駐屯地(大村市)に約600人規模の連隊配備が決まった。これにより、約3000人規模の水陸機動団の態勢が整うことになる。

 機動団は、「離島」をめぐる中国軍との戦争を想定し、占拠された島を「奪還」する役割といい、殴り込み部隊である米軍海兵隊の「日本版」と呼ばれる。佐世保をはじめ県内では運用や訓練、施設整備が着々と進んでいる。陸自崎辺分屯地(同市)には水陸両用車の上陸訓練ができるスロープを新設する計画。同分屯地に近接する崎辺東地区では、海自の大型艦船の係留施設や補給倉庫といった整備が計画され、海自と機動団の連携が進むとみられる。

 最近、宇久島(佐世保市五島列島の最北部の有人島)でも訓練が実施され公開された。

 中止になった崎戸町での訓練は、漁協や住民の反対によっていったん中止になったものの油断できない。
 一方、西海市では米海軍のLCAC(エア・クッション型揚陸艇)横瀬駐機場整備が進み、最大で12機が駐機できる。最近は、佐世保市崎戸町を含めて夜間訓練などが強行され住民の反発を招いている。

 今後、長崎県全体が日米の訓練場と化していく懸念はぬぐえない。これからも、水陸機動団の動向を注視し、訓練や施設建設などに対する闘いの強化が求められる。

 長崎県内には、佐世保市に米軍の海軍基地、また、佐世保市・対馬市・五島市・大村市等を中心に本島・離島部いたるところに陸・海・空の自衛隊基地や関連施設が配備されている。

 九州・沖縄地区で米軍基地があるのは、沖縄県以外では長崎県だけ。対中国を念頭に入れた軍拡の重要拠点として位置づけられているのは間違いない。

 しかし、長崎県は歴史的に中国をはじめ東アジアとの交流を通して繁栄した。将来を展望して隣国中国と武力で争うのではなく、平和に共存する道を選択しなくてはならない。

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