国際政治の最近のブログ記事

外交・安全保障

日本の進むべき道

前防衛大学校教授・元外務省国際情報局長 孫崎 享 氏

孫崎 享(まござき・うける)
1943年旧満州生れ。1966年東大法学部中退、外務省入省。
英国、ソ連、米国、イラク、カナダ勤務をへて、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。2002年より防衛大学校教授。この間公共政策学科長、人文社会学群長を歴任。2009年3月退官。
著書に『日本外交 現場からの証言』(中公新書)『日米同盟の正体』(講談社現代新書)など。


 日本は、外交・安全保障の問題を真剣に議論しなければならない時期に来ています。第一に、日米関係が、多くの国民が知らない間に、非常に大きな変貌をとげています。第二に、中国が10~20年後には日本の数倍という経済規模の国として登場します。第三に、ミサイルや核を持つ北朝鮮への対応が問われています。「事実は語る」を基礎にして、日本はどんな課題に直面しているのか、どう対応していくのか、真剣に議論しなければなりません。

7・15講演会・講演要旨(1)

東アジアの平和と日本外交

─制裁重視は平和をもたらすか─

元拉致被害者家族会事務局長 蓮池 透 氏

核問題と米朝関係

 最近、本を書かせていただき、その中で制裁よりも対話を、と提言しました。そのやさきに、ミサイル、核実験があり、頭から冷水を浴びせられたような感じがしました。強硬な意見が日本中を席巻し、けしからん、懲らしめろという世論で、対話が困難になってしまうからです。
 ある新聞の世論調査によれば、北朝鮮に強硬な対応をとるべきだというのが7~8割です。ただし、強硬な対応で結果を出せるかという問いに、5割の方が出せないと答えています。日本は唯一の被爆国ですから、核実験にそれなりの態度を示すのは当然のことだと思います。私も原子力の仕事にたずさわっていましたので、原子力は平和利用に限り、世界中から核兵器を廃絶しなければいけないと思ってきました。ただし、マスコミの報道は、船舶検査がどれだけ強化されたかと、制裁の強度に焦点を当てた報道ばかりです。どうしたら核兵器をとりのぞく方向へ変化させることができるのか、そういう議論をせず、けしからんという国民感情を煽っています。政治家の中には、敵地攻撃とか核保有とか、勇ましいことを言う人もいます。

7・15講演会・講演要旨(2)

東アジアの平和と日本外交

─制裁重視は平和をもたらすか─

政治評論家、森田塾塾長 森田 実 氏

総選挙の分析について

 昨日の夜は週刊朝日の座談会でした。相手は野上さん。共同通信の政治部記者で、福田赳夫氏の時からずっと清和会番記者でした。優秀な記者です。安倍晋太郎、三塚博、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫等々、OBになった今も町村派の取材をしている人で、長年、自民党主流派を内部から見てきた人です。

アメリカの核の傘から抜け出し

核兵器廃絶をめざそう

元広島市長 平岡 敬 さん

プラハ演説の目的

 オバマ大統領はプラハで「核のない世界をつくろう」と演説しました。「核のない世界」そのものは誰も反対できない正しい方向です。しかし、彼の目的は核の廃絶ではなく、核拡散の防止、破たんしたNPT(核不拡散条約)体制の立て直しです。

世界経済危機と日本の進路

月刊『日本の進路』編集部

金融サミットから見えたもの

 4月2日、ロンドンで第2回目の金融サミット(G20)が開かれた。
 アメリカが主張するGDP比2%の追加財政支出に対して、共通通貨ユーロの規律を重視するEU、特にドイツやフランスがこれを拒否し、「2%」の数値目標は声明に盛り込まれなかった。EUが資本移動など本格的な金融規制強化を求めたのに対して、アメリカが反発し、ヘッジファンドの登録制など、お茶にごしに終わった。かつてはGDPの約3割を占めていた製造業が1割に落ち込み、金融・不動産業が最大の産業となったアメリカにとって、金融規制強化は「飯のタネ」をを失うことになるからである。しきりに「協調」が強調された金融サミットだったが、実際は米欧の対立が浮き彫りになった。

「核兵器のない世界」

オバマ大統領のプラハ演説のねらい

広範な国民連合事務局長 加藤 毅

 アメリカのオバマ大統領は4月5日、チェコの首都プラハで「核兵器のない平和で安全な世界を追求する」と演説しました。
 この演説を日本のマスコミは、「画期的な演説。オバマ大統領の率直な姿勢を高く評価したい」(毎日)、「時代の歯車を回そうという呼びかけを重く受け止めたい」(朝日)、と絶賛しました。政党では共産党の志位委員長が「歴史的な意義をもつもの」と歓迎し、オバマ大統領あての手紙をアメリカ大使に手わたしました。共産党はさらにそれを、読売新聞の一ページ全面を使った意見広告に掲載して、大宣伝しました。

ソマリアの海賊と「人間の安全保障」

広範な国民連合代表世話人 武者小路 公秀


 ソマリアの海賊対策は、日本からの自衛隊も参加して進められることになった。国会での討論も新聞の論調も、自衛隊参加の可否についてはあったけれども、ソマリアの海賊がなぜ今ごろ出没するようになったのかということについては、誰も問題にしていない。もっとも、国際社会(実は「先進工業諸国中心の」という断り書きが必要である)が、米国や西欧諸国をはじめとして、中国まで含めて、こぞって海賊退治に参加する形を取っている以上、それ以上のことについて考える必要がないと思われているのかもしれない。

イスラエルの足枷を嵌められた、オバマ政権のソフト外交

―ガザ侵攻からイスラエル選挙まで―

広範な国民連合代表世話人 武者小路 公秀

ガザ侵攻の裏表

 イスラエルの空陸からのガザ侵攻は、その公式・非公式の目的を達成して、多くの市民の死傷を犠牲にしたうえで一方的に終結された。
 公式の目的は、ガザ地区から同地区の政権を握っているハマスがイスラエルにたいしておこなっているミサイル攻撃を不可能にすることであり、その裏に隠された目的は、無条件にイスラエル政府を支持しているブッシュ政権が米国のイスラエル支援を保障している間に、パレスチナにくさびを打ち込むことで、米国に新しくうまれるオバマ政権がイスラエルを批判しないようにあらかじめ手を縛ることであった。米国の政権が変わる際の外交的な力を最大限確保しようとする目的に比べても、あまりにも大きな犠牲をガザ市民に強いる侵略であった。

共同提言「対北政策の転換を」への疑問

共同提言「対北政策の転換を」への疑問

月刊『日本の進路』編集部

雑誌『世界』7月号に、知識人や平和運動活動家の連名で「対北政策の転換を」と題する共同提言が発表された。(以下「提言」)中心的な執筆者は東京大学名誉教授で日朝国交促進国民協会事務局長の和田春樹氏である。
 この共同提言は日朝国交正常化がテーマで、「そのとおりだ」と思う部分もある。だが、提言の執筆者は朝鮮に対する侵略と植民地支配を真剣に反省し、一刻もはやく日朝国交正常化を実現したい願っているのだろうか、国交正常化を求める国民の側に立っているのだろうか、そんな疑問もわいてくる。
 進歩的な人々に一定の影響がある雑誌に掲載されただけに、この提言が国民運動に与える影響を見過ごせない。以下、原文を引用しながら、読者のみなさんと一緒にこの提言を検討してみたい。なお、[提言]の後の数字は原文の『世界』のページである。

アーカイブ