2018年春闘が浮き彫りにした課題

交渉力低下の背景に経済の構造変化

早川行雄(元JAM副書記長)

底上げ・格差是正には力不足

 2014年春闘で久々にベースアップ(ベア)要求が復活して5年が経過した。18年春闘は、景気拡大がいざなぎ景気を超える戦後2番目の長期にわたり、企業業績も上場企業の多くが過去最高益を更新するという景況の下で、5年連続のベア要求が方針化された。一方、政府・官邸サイドも法人税の実効税率を25%程度まで引き下げる賃上げ優遇税制を導入するなどして、3%の賃上げを経済界に要請する「官製春闘」が継続された。 続きを読む


沖縄の「夢」を全国の「夢」に

沖縄平和運動センター議長
山城博治
インタビュー

聞き手:山内末子 全国世話人(元沖縄県議会議員)

若者に届くメッセージを

――山城さんは昨日から辺野古の現場に戻られました。この間拘束されたり、裁判があったりして、なかなか現場に戻れなかったもどかしさがあったと思います。ようやく現場に戻られたということで、最初から辺野古のゲート前の闘いに関わったなかでの今の思いや、現状、これまでの課題、これからに展開について今、思っていることからお願いします。

 2016年6月に辺野古から高江の現場に移ったので、辺野古に戻るのは2年ぶり近くですね。そういう意味では感慨深い思いで、今ゲート前に座っています。
 ただ、まだ裁判中だということと、2年の刑、3年の執行猶予を求められているので、あんまり下手に動き回ってまたパクられたりすると、これからの控訴審で「反省がない」「執行猶予を取り消して実刑を」と言われかねないので、ここはまあ慎重にするしかないなあと思っています。 続きを読む


全国全地域住民に標準的な行政サービスを

トップランナー方式と地方交付税

自治体間競争をあおり、犠牲は地方住民に

東京大学法学部教授 金井利之

はじめに

 国は2016年度から地方交付税に、いわゆる「トップランナー方式」を導入している。トップランナー方式とは、民間委託などで業務を効率化している自治体を基準に単位費用を抑制する算定方式である。
 総務省が経済財政諮問会議「第7回 国と地方のシステムワーキング・グループ」に提出した資料によると、16年度の単年度の影響額は441億円で、21年度までの累積影響額は1637億円を想定しているという(『日経グローカル』18年1月1日)。つまり、トップランナー方式の導入によって基準財政需要額が抑制され、したがって、マイナスの影響を受ける個別の自治体の合計の地方交付税配分額が減少する。このような情勢を鑑みれば、個別自治体としては、さらなる経費節減・効率化の努力が求められるという。 続きを読む


人口減少下における都市の舵取りとは

諸富 徹(京都大学)

人口減少は予測可能で、対応可能な「危機」

 最近、『人口減少時代の都市―成熟型のまちづくり』(中公新書)を上梓させていただいた。本書を執筆するに至った背景や問題意識のエッセンスを、この機会に述べさせていただくことにしたい。
 本書では、「コンパクトシティ」の考え方を改めて打ち出している。平たく言えば、都市機能を中心に集め、都市の凝集性を高める考え方だ。2030年以降の本格的な人口減少時代を前に、都市の質を高めるためにもコンパクト化を促進する政策が必要だ、というのが本書の重要なメッセージである。 続きを読む


激変の世界情勢を踏まえ、安倍政権打倒の方向を確認

広範な国民連合 第1回全国世話人会議

「めざす日本の進路」をもとに広範な戦線形成をめざす

 広範な国民連合は、第23回全国総会(昨年11月)後の最初の全国世話人会議を4月14日、川崎市で開催した。総会後の訪中団の成功や東京、神奈川、愛媛、福岡などでの総会開催と各地での闘いを総括しながら、急テンポで変化する情勢を分析・議論し、新たな情勢を織り込んで全国総会決定の当面の具体化方針を決めた。全国事務局の責任でその概要を報告する。

 第23回全国総会から5カ月余、この期間に世界はこれまでにも増して急テンポで激変した。
 息詰まるような朝鮮半島の緊張は、南北両政権の平和攻勢で劇的に緩和し、米朝首脳会談も予定されている。中朝首脳会談も行われ、両国間関係の緊密化が顕著となった。 続きを読む


物価値上げラッシュ国民を痛撃、アベノミクスのツケは貧困層に

安倍政権打倒で国民生活の危機打開、自治体にも大きな課題が

「日本の進路」編集部

 納豆など身近な食品の値上げが相次ぎ、街の牛丼も値上げされた。円安による輸入物価上昇による原材料価格値上がりが理由だ。4月からは医療や介護の保険料や窓口負担が増える。75歳以上の一部の人の保険料が上がり、入院時の食事代自己負担額が1食100円上がって460円になる。介護保険料も3年ぶりに見直され、65歳以上の保険料は平均で月数百円上がる見通しだ。
 これが安倍首相の「デフレ脱却」をめざすアベノミクスが庶民にもたらした「成果」だ。 続きを読む


生コン協同組合の健全な発展と18春闘勝利

全日建連帯労組関西生コン支部書記長 武 洋一

 今、近畿(滋賀、京都、奈良、和歌山、兵庫、大阪の府県)の生コン協同組合は、労働組合との協力関係によって生コン価格改定が相次ぎ、軒並み再建基調にあります。

 1994年に設立された大阪広域生コンクリート協同組合(以下、広域協組)は、82年以来の関生支部との対立関係を改め、対等な労使関係を構築することによってスタートしました。この間も10年単位の周期で混乱を繰り返しながらも、2015年に大阪府下の3協同組合(阪神生コン協組、レディース生コン協組、広域協組)が大同団結し、今や164社189工場を擁する日本最大の生コン協同組合です。
 しかし、その広域協組は、4人組(木村、地神、大山、矢倉)と称せられる連中に乗っ取られ利権確保の道具となっています。 続きを読む


憲法改悪、「戦争する国」づくり許さず

部落解放同盟第75回大会

「推進法」具体化、狭山再審闘争などの強化確認

部落解放同盟中央執行委員長 組坂繁之

 世界人権宣言70周年の今年、第75回全国大会を先ごろ終えられた部落解放同盟の組坂繁之中央執行委員長に、全国大会のポイントや、この1年どのように運動を進めていくかお話を伺った。

 この間、第71回全国大会から、女性代議員の割合を3割以上にしようということで取り組んできましたが、第75回全国大会も実現することができました。男女平等社会実現に向けた組織内目標の一つにしていますから、今大会でも達成できて良かったと思っています。 続きを読む


最後の保障、生活保護を敵視する安倍政権の悪行

長期に困窮が進む国民生活水準、さらに急テンポに悪化

 第二次安倍政権の登場から5年余り、この間に、国民生活の困難は急激に進み、貧富の格差が拡大した。さらに今、安倍政権は生活保護の生活扶助削減や年金支給額削減などで、貧困化する国民生活に追い打ちをかけている。財政難を口実にするが、軍事費はうなぎ上りに増やし続けている。実質賃金も減り続けている。生活困難と格差拡大に怒る国民の声を結集し、安倍政権を打倒しなくてはならない。 続きを読む


EV(電気自動車)化に伴う自動車産業の構造的変化と県民生活への影響について

特集 今、地域で何が進んでいるか

広範な国民連合北九州懇談会・世話人 中村哲郎

 広範な国民連合・福岡は、昨年12月の総会決定に沿って地域に入って調査活動を進めようとしている。金融危機後の経済危機と急速に進む技術革新の下で、とりわけ県内のリーディング産業と位置付けられてきた自動車産業がEV化などの影響を大きく受けて地域経済の激変が予想され、県民各層の暮らしに大きな影響が出ると見られるからである。
 今回、県世話人会の事前学習会で北九州懇談会の世話人の一人である中村哲郎氏が「EV(電気自動車)化に伴う自動車産業の構造的変化と県民生活への影響について」というテーマで報告した。その上で、①自動車産業が集積する地域の現場に入って、とりわけ逆風を受ける企業の経営者の話を聞き、行政に何を求めているかを聞き取る、②できれば現場の労働者、労働組合があるところでは組合の役員から、労働者の要望を聞き取る、③そうした要望を対行政の課題、とりわけ福岡県政に対する課題とする、④そのためには地方議員の役割が大きいので、協力できる地方議員と共同して、調査活動などに当たる、⑤引き続き調査活動を続けながら、次回、もう少し広い範囲の人たちに呼びかけて学習会を開催する、などを今後の活動方向として確認した。
 大企業は、企業間の国際競争に打ち勝とうと急テンポで、IoT、AI、ロボット化など技術革新に対応する合理化を進めている。疲弊した地域経済の中で自動車や電機など生き残った産業分野でも大打撃が避けられない。こうした中での福岡の取り組みは全国的に重要な意味をもつであろう。中村氏の報告要旨を紹介する。【編集部】

 電気自動車(EV)化の流れが加速していて、自動車産業には大きな構造的な変化が起ころうとしています。その背景についてお話ししたい。そしてもう一つは、そういう大きな構造変化の中で、日本の自動車産業、特に福岡県は麻生県政・小川県政の中で、北部九州自動車産業アジア先進拠点構想として「180万台生産」を目標にするなど、県政の重要な柱にしているわけですから、そこにどのような影響が及ぶのかということをお話しします。 続きを読む


(一社)置賜自給圏推進機構の活動

特集 今、地域で何が進んでいるか

山形県高畠町での百姓生活50年の主張

置賜自給圏推進機構 共同代表 渡部 務

嫌々ながらの跡継ぎ百姓

 1964年、東京オリンピックの年に地元の農業高校にやむを得ず進学した。高校選択の自由は農家の長男である私には与えられていなかったのである。当時、わが家の経営は、水田2・2ヘクタール(ha)、自給用畑、そしてかつての名残の桑園を持つ比較的規模の大きな農家であった。 続きを読む


AIを活用した、持続可能な日本の未来に向けた政策提言

特集 今、地域で何が進んでいるか

持続可能な地方分散シナリオの実現をめざすべき

京都大学こころの未来研究センター教授 広井良典

はじめに――AIは政策に活用できるか

 「AI(人工知能)」という言葉が、あらゆる場面や領域で現れるようになっている。現実的な場面では、AIによって人間の仕事ないし雇用の大半が取って代わられ大量の失業が生まれるといった話題がある半面、AIは多様な可能性やビジネスチャンスを生み出し、それを最大限活用していくことが、生活の利便性や、防災などさまざまな政策領域における的確な未来予測や意思決定につながるという見解もある。 続きを読む


安倍内閣自ら「破綻」評価を下した「地方創生」政策

特集 今、地域で何が進んでいるか

本稿は「【特集】今、地域で何が進んでいるか」を構成するいくつかの論文の前書であり要旨でもある。

地方の課題を考える

 これほど率直な物言いの閣議決定も珍しいのではないか。
 安倍政権の看板政策として鳴り物入りで始まった「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の改訂を決定した昨年12月22日の閣議決定(以下、『改訂』)のことである。「最近では、関係者の中で地方創生への熱意が薄れているのではないか」と指摘した。2107年度が5カ年の「総合戦略」の中間年に当たることから、各施策について総点検を実施した結果を踏まえた評価である。この指摘は、官僚たちの、熱意が薄れ地方創生をほとんど口にすることがなくなった安倍首相への当てつけかもしれない。もっとも最初から、安倍首相に「熱意」があったとは思えないが。 続きを読む