日中関係打開に友好的で活発な議論
第8回日中時事交流フォーラムが3月16日、開催された。劉江永教授(中国清華大学国際関係学研究院元副院長)が「日本の対中政策と日中関係の長周期法則の探究」と題した問題提起を行い、孫崎享所長(東アジア共同体研究所所長、元外務省国際情報局局長)と羽場久美子教授(城西国際大学特別名誉教授、青山学院大学名誉教授、広範な国民連合代表世話人)がコメント発言し熱烈な議論が交わされた。最後に華語シンクタンク徐長銀理事長が閉会発言を行った。
劉教授=
「二つの路線の闘争」
劉教授は、日中関係の発展は60年の超長周期、27~30年の長周期、20年前後の中周期、そして10年の短周期の四つの周期に分類できるとの見解を示し、現在、日中関係は戦後第3の長周期の最終段階にあり、政治と安全保障領域の矛盾が増大し、特に日本政府が米国に追随し、一連の対中強硬政策を取ったことにより、両国関係は「政冷経冷」といった厳しい状態に入っていると述べ、以下のように続けた。
特に岸田政権が安倍政権の外交政策を継承し、新たな「国家安全保障戦略」の中で中国を「前例のない最大の戦略的挑戦」と位置づけ、米国との軍事協力を強化し、両国関係をさらに悪化させている。
それでも日中関係の背後には日本国内での「二つの路線の闘争」が存在していると指摘した。一方は「相互依存的な理想主義」として、日中の平和友好を支持・推進する勢力で、彼らは歴史を正しく認識し、「平和憲法」を守り、日中の経済貿易協力を推進し、相互依存の国際関係を構築することを主張している。もう一方は、「権力政治の現実主義」で右傾の反中勢力で、彼らは冷戦思考を堅持し、侵略の歴史を美化し、憲法改正と軍拡を推進し、米国に追随しながらも、日本が「戦える国家」になるべきだと強調しているとした。
この二つの路線の闘争が日本の対中政策を左右し、日中関係の波乱を決定していると特徴付けた。
孫崎所長=
米国が決定的に影響
孫崎所長は、中日関係は両国自身で決定されるのではなく、米国のグローバル戦略に深く決定的に影響されていると指摘した。戦後の占領体制以降を振り返り、日本がどのように米ソ冷戦、ニクソンの中国訪問などの歴史的事件の中で受動的に中国に対する政策を調整したかを分析した。孫崎所長は日本の外交政策の本質は米国に主導されており、例えば冷戦終結後、米国は日本を利用して中国に対抗しようとし、日本政府も積極的に協力し、イラク戦争への参加、米国のアジア太平洋地域での軍事展開の支持などを行った。
現在米国は中国を「最大のライバル」と位置づけており、日本は米国の同盟国として中国に対する包囲網を強化していると考えている。例えば、台湾問題で「台湾有事は日本有事」と強調している。これらの措置は日中の緊張関係を悪化させるだけでなく、日本が外交的な独立性を失うことにもつながっている。
今後仮に日本が引き続き米国の対中圧力に追随し、関係緩和を積極的に求めないならば、将来の日中関係はさらに危険な対立に陥る可能性があるだろうと分析した。
羽場教授=
歴史認識に問題が
羽場教授は世界史の観点から日中関係を分析し、日本は近代以前長い間中国から学んでいて、真の対立は近年のわずか130年ほどであると指摘した。その上で日本の近代の対中政策は欧米の帝国主義に転向した結果であり、日本が中国に対する侵略戦争を引き起こしたと考えている。
羽場教授は現在の日本政府が戦争歴史に対する反省が不十分であり、自身の戦争被害を反省するだけでなく、侵略戦争が中国や他のアジア諸国に与えた大きな災害だと認識すべきだと強調した。
一方、羽場教授は、日本社会には中国と平和友好を維持したいと願う多くの民間人が存在していることを忘れないでほしいと指摘した。例えば沖縄県、あるいは経済界にもいる。彼らは反中国政策に反対し、積極的に中国との地方レベルでの協力を推進している。民間交流を通じて日中の相互理解を深め、誤解と対立を減らすことを呼びかけた。
劉教授=
非伝統的安全保障分野で大いに協力を
劉教授は、日中関係を改善するには、今の石破政府は中日四つの政治文書を遵守し、台湾問題において「一つの中国」原則を堅持し、軍事対立を避ける必要があると主張した。さらに、日中関係の発展は日本社会の選択にも依存しており、民間の世論が引き続き右翼の影響を受けるならば、両国の関係はさらに悪化する可能性がある。国家安全保障戦略など現在の安保三文書を中心とした対中警戒政策は続く。これからの3~5年は日本の政治、世論および市民の選択が重要になる。
劉教授は、欧米が衰退する流れの中で、日本が米国に追随して台湾や南中国海などで中国と衝突しないよう、政治と安保の正しい判断が必要だ、米国が各国に関税を強めると日本経済へのダメージは大きいなどとも指摘。
将来的には米国を超えると言われる大きな市場を持つ中国との関係づくりを戦略的に正しく判断しなければならない。古代より日本は中国からさまざまなことを学んできたと言われるが、中国も対外改革開放の間は日本から技術、経済、法律、社会メカニズム等々、たくさん学んできた。お互いに相互依存関係であり、経済や安全保障などにおいて、共通の利益と協力の空間が大いにある。将来的には、日中両国は気候変動やテロや海賊や自然災害等々の非伝統的安全保障分野では、大いに協力し、互いに信頼できる平和の政府関係づくりをし、世界に発信できると信じていると結んだ。
羽場教授と孫崎所長
コメント
羽場教授は沖縄を中心とした自治体レベルの平和構築の取り組みを説明し、非伝統的安全保障分野での協力や8カ国90の地方自治体が参加する北東アジア地方自治体連合(NEAR)の活動を紹介した。
孫崎所長は日本政府や国民の日中関係への認識が低いのは、戦後の対米従属関係が根深いためと分析。さらに、財界や地方自治体、民主団体などの日中関係改善の取り組みは素晴らしいが、過大評価すべきではないと指摘。
しかし中長期的には、日本国民も客観的かつ理性的に中日関係を考えるようになるであろうし、米国のトランプ関税のような情勢変化によってその日が早まる可能性を示唆した。
交流の重要さを指摘
福岡市議会議員の森あやこさんは、若者に平和活動の実態を伝えることの重要性を強調した。日中協力センターの栗原さんは、厳しい時期にこそ民間交流が重要だと述べ、日中国会議員書画展の再開を計画していることを報告した。伊波洋一参議院議員は、沖縄など南西諸島での対中国軍備強化の動きを紹介するとともに、それに反対する闘いの前進、日中関係発展のための努力が沖縄で進んでいることを報告した。
最後に徐理事長が、参加者の平和に対する熱い思いと戦争回避するための努力を評価し、これらの取り組みが日中関係の改善に役立つと信じると締めくくった。
改善へ共同の努力を
今回のフォーラムでは、双方はいくつかの共通認識ができた。まず、日中関係の改善には双方の政府間と民間とも交流が大事である。台湾問題は中国の最も重要な問題であり、日本政府は台湾問題を慎重に扱い、日中関係を損なわないようにすべき。
米国の日中関係に与える影響は無視できず、日本は外交政策において一定の独立性を実現すべきである。また、戦争回避はアジア地域共通の目標であり、政府も民間も対話の姿勢が大事である。