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中国と私の85年

「天の呼ぶ声」に導かれた中国との関係

早稲田大学名誉教授・元総長 西原 春夫

「盧溝橋」の形で登場した「中国」

 1937(昭和12)年7月7日、盧溝橋事件が勃発した。その後、支那事変(現在でいう日中戦争)、大東亜戦争(現在でいう太平洋戦争)へと拡大していくきっかけになった事件である。 続きを読む


盧溝橋事件、柳条湖事件記念日――歴史を鑑とすべき

「尖閣問題」 何故、中国と話し合わぬのか

『日本の進路』編集部

 7月7日は、1937年に日本の中国侵略戦争が本格化した盧溝橋事件の記念日である。9月18日には中国侵略を始めた柳条湖事件(「満州事変」、1931年)から90周年を迎える。

 日本は歴史を鑑に、発展し強国化する隣国中国と向かい合わなくてはならない。アジアの共生だけがわが国の生きる道である。 続きを読む


沖縄戦没者遺骨混入土砂採取問題から考える

適切な当事者意識を育み、
持続的な国民主権の実践を!

イェール大学学生 西尾 慧吾

 

 防衛省・沖縄防衛局が、沖縄戦没者の遺骨や血が染み込んだ沖縄本島南部の土砂を用いた辺野古新基地建設を計画している「遺骨土砂問題」。5月14日、沖縄県知事は鉱山開発業者に措置命令を出す最終判断を下した。土砂採取を巡り、県と業者との協議を条件付けた点で一定の評価はある一方、中止命令を求めてきた遺族や具志堅隆松さんらにとって、満足のいく結論ではなかっただろう。特に遺族の方にとっては、「今にも肉親の遺骨が基地の材料として売り払われるのではないか?」と案ずる日々が続くことになる。 続きを読む


流域治水法成立

「流域治水」は住民と行政の楽しい覚悟から?

―人口減少時代の骨太の国土再生哲学を―

参議院議員 嘉田 由紀子(前滋賀県知事、元環境社会学会会長)

1.130年ぶりの治水政策のコペルニクス的転換

 2021年4月28日、参議院本会議で「流域治水関連法案」が成立した。改正案の概要は次の4点だ。「流域治水の計画・体制の強化」、「氾濫をできるだけ防ぐための対策」、「被害対象を減少させるための対策」、「被害の軽減、早期復旧、復興のための対策」である。
 

図1 「流域治水イメージ図」(国土交通省HP より)

図1が、国が示す流域治水のイメージ図だ。この図を見ると、水を集めてくる「集水域」と「河川」と「氾濫域」の3つの地域を明示的に示し、これらの流域全体で、水害被害を軽減する、という方向が示されている。
    今回の流域治水法では、「河川から溢れることを前提」として、氾濫域からの住宅の高台移転や、要援護者の避難体制の強化、ハザードマップ作製の拡大を示した。日本では明治29(1896)年の最初の河川法制定以降、高い連続堤防とダムにより河川の中に洪水を閉じ込める近代技術主導の河川政策が主流であった。この明治以来の「河川閉じ込め型治水」から「溢れることを前提とする治水」は、河川政策のコペルニクス的転換でもある。溢れることを前提としたら、人びとが暮らす生活の場からの水害対策が基本になるからだ。つまり「河川管理者視点」から、氾濫原に暮らす「住民視点」への転換が必要となる。 続きを読む


安全な食糧自給、農林漁業を核とする持続可能な地域循環経済へ

「国の根幹は農にあり」 
ワクチン敗戦国の次は食料敗戦国を許さない

 

熊本県議会議員 西 聖一

 

 私は1983年に熊本県庁に入庁し、農業改良普及員、農業行政、農業研究センター等農業技術者として23年奉職した後、自治労推薦の議員として現在に至っています。農業に対する危機感を共有し、命を守るための日本の安全安心な食糧確保を堅持していくための運動を大きく展開したい思いを述べさせていただきます。 続きを読む


コロナ禍のもとで今後の食料・農業・農村を考える

「危機の時に都市を受け入れることのできる農村」でありたい

 

農事組合法人八頭船岡農場(鳥取県)組合長 鎌谷 一也(全日農副会長)

 

 人生の最終ステージは、「本気の百姓を!」ということで、朝から晩まで、田んぼで働く。
 コロナ禍のもと、昨年から寄り合いや会議も減少し、いっそう農作業に打ち込むこととなった。
 晴天・曇天・雨天であろうと、汗を流し作業に没頭していれば、農業は新型コロナとは無縁の世界にも思える。実際は、業務用の米や野菜の販売が滞ったり、消費減により価格が下がったり、影響がないことはないが、太陽の下で働くことに閉塞感もストレスもない。米のほか、小麦、大豆、白ネギ、キャベツ、繁殖牛、原木シイタケ、ワサビなど、あれもこれも、やろうと思えばきりがないほど、仕事が増える。
 だが、旧町単位の範囲で、260ヘクタールの水田を集積、構成員は545名(旧町エリアの約8割の農家)、職員15名を抱えている農事組合法人の組合長としては、作業だけに明け暮れているわけにもいかず、昨年は10年先を考えて、第3次5カ年計画(がんばる農家プラン)を策定した。
 高齢化や人口減少により、10年先は旧町全農地340ヘクタールの半分170ヘクタールは、法人(職員)の直接管理が必要となるであろう。その時に、職員は何人必要か、その職員が食べていくだけの生産体制・経営基盤は。集落で頑張る中核的な法人構成員の育成確保、集落単位での協業や相互扶助体制の確立をどうするか。水田活用、野菜生産、耕畜連携に放牧を利用した和牛繁殖など、事業展開をどうするか。そもそもどういった農村風景・農村社会を想定し、ことを進めるべきか、これまた考えることは尽きない。 続きを読む


安全な食料自給。農林漁業を核とする持続可能な地域循環経済へ

日本農業と中小製造業を守れ

 

JAM会長 安河内 賢弘

 

 4月27日に2020年農林業センサスが発表されたが、日本農業の衰退がさらに進んでいることが改めて示された。5年前と比較すると農林業経営体は22・2%減少し、なかでも林業経営体は61・1%と壊滅的な減少である。また、年齢階層別に基幹的農業従事者の推移を見ると、5年前と比べ、85歳未満の全ての階層で減少した。
 一方で、農産物販売金額規模別に農業経営体数の増加率を見ると、5年前に比べ3千万円以上の層で農業経営体数が増加したとするものの、3千万円を超える農業経営体は全体の3・82%にすぎず、全体の約7割強が300万円未満の農家である。

図 基幹的農業従事者数(個人経営体)の推移(全国)

 2015年11月25日、TPP大筋合意を受け政府はTPP総合対策本部を設置し、「総合的なTPP関連政策大綱」を取りまとめた。その主な柱は、①中堅・中小企業等の海外展開の支援、②経済再生・地方創生の実現、③農林水産業支援、④その他必要な支援(食の安全・安心、知的財産等)であった。このうち農林水産業については、「攻めの農林水産業への転換(体質強化対策)」と「経営安定・安定供給のための備え(重要5品目関連)」が重点施策として掲げられたが、それから5年を経た2020年の日本農業の衰退は残念ながら加速している。

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中国共産党設立百周年への特別な感懐

命がけで活躍した中国人青年の想いが乗り移った私

早稲田大学名誉教授・元総長 西原 春夫

 今年7月1日、中国は共産党設立百周年の記念式典を予定している。百年前の7月23日から上海で開かれた初め

ての全国代表大会(以下「中共一大」と略称)で正式に共産党が設立されたのを祝賀するためである。
 私は日本人だし、共産主義者ではないから、中国人と同じような感情は持っていない。ところが不思議にも、私にはちょっと違った特別な「感懐」がある。これは誰にも見当つかないだろう。早稲田大学の元総長である私にとっては、共産党の設立を含む中国の近代化にそれこそ命がけで活躍した多くの中国人早稲田大学出身者の想いが乗り移っているからだ。 続きを読む


「新冷戦」を回避するために

中国にとってはもはや
どうやって米国を超克するかが問題ではない

東京大学社会科学研究所教授 丸川 知雄

 

 

アメリカ傾斜を強めた日本のメディア

 アメリカでバイデン新政権が発足してから、日本の主流メディアの中国に関する論調が変化した。アメリカはトランプ政権時代から中国への攻撃を続けてきたが、トランプ時代には、日本のメディアはアメリカの立場から距離を置いていた。中国からの広範な輸入品に対して関税を上乗せするアメリカの措置はWTOのルールに反しているので、日本のメディアは米中貿易戦争の展開をあきれ気味に報じていたし、ポンペイオ国務長官が新疆ウイグル自治区における人権侵害を「ジェノサイド」と呼んだことに対しても必ずしも同調していなかった。
 ところが、バイデン政権になって、中国に対するアメリカの攻撃的な姿勢が弱まるどころか、むしろ中国に対する非難と圧力を強めるようになると、日本のメディアの論調はすっかりアメリカ寄りになった。トランプ前大統領の極端な個性に発するとみられていたアメリカの対中政策がバイデン新大統領にほぼ継承されたことによって、まるでそうした政策の正しさが証明されたかのようである。 続きを読む


『非常勤講師はいま!』 ■ ブックレットのご案内

年百から百五十万で大学支える非常勤講師

JAICOWS会長 羽場 久美子(神奈川大学教授、青山学院大学名誉教授)

 現代日本の高等教育が非常勤講師という名の非正規雇用者によって支えられていることに多くの人は気が付いていないでしよう。非常勤講師の実態については、文部科学省の「学校基本調査」や総務省の「労働力調査」にも詳しく取り上げられることがなく、ほとんど知られていません。
 このたび、「女性科学研究者の環境改善に関する懇談会(JAICOWS)」が、非常勤講師を対象とする調査を実施し、その結果を小冊子にまとめました。 続きを読む


コロナ禍で急速に進む貧窮化と格差 ■ 女性

女性による女性のための
相談会が目指す支援のカタチ

一般社団法人エープラス代表理事・女性による女性のための相談会実行委員 吉祥 眞佐緒

 コロナ感染拡大の不安が続き、出口の見えない昨年12月29日・30日と年明けの1月2日、「年越し支援・コロナ被害相談村」(以下、相談村)が開催されました。女性への影響がかなり顕著だということで、女性専用の相談ブースが設置され、①女性来場者はまず女性相談ブースに案内する、②女性相談は女性相談員が受ける、という方針が実行委員会で共有されました。
 相談村では労働組合や市民団体など多くのボランティアが参加し、法律相談(家庭・家族・生活・労働・外国人)、医療相談、お弁当などの食料の提供もあり、3日間の利用者は337名で、女性はその約2割の62名でした。直近で行われていた他団体の相談会を考えると、女性の相談割合は増えていると痛感しました。
 相談村は男性スタッフも相談者も多かったので、会場である公園の前を何度も行ったり来たりしながら、相談会場内に入れずに帰ってしまう女性の姿が何人もあったそうです。決して男性スタッフが悪いわけではありませんが、性暴力被害やDV被害を経験している女性にとっては、そこに男性がいるというだけで、恐怖がよみがえり足がすくんでしまうのです。 続きを読む


コロナ禍で急速に進む貧窮化と格差

命と暮らしを守る政治への転換が不可避

『日本の進路』編集部

 感染発覚から間もなく1年半、コロナ禍は国内外の矛盾を一気に激化させ、露呈させた。
 「医療崩壊」が進み、病院にも行けずに亡くなる人が激増、医療関係者には法外な負担が押しつけられている。国の責任を放棄し自治体に丸投げしたワクチン接種も大混乱だ。
 国民の暮らしも深刻さを増している。経済は、20年度GDP実質成長率がマイナス4・8%。本年1︱3月期はマイナス5・1%、4︱6月期はもっと厳しいだろう。

中村進一(三重県議会議員)

 まさに安倍・菅自公政権の大失態だ。国民の命も守れぬ政権はいらぬ。オリンピックは直ちに中止し、国民の命を守れ。菅政権は責任をとって即刻総辞職せよ。

    補償なき「自粛」で、社会的に「弱い」立場の人びとが集中的に犠牲になっている。とくにもともと「人権」もまともに守られていない外国人労働者、非正規・単身子育て中の女性たち、非正規雇用の青年や高齢者などがきわめて劣悪な状況下に置かれ、自ら命を絶つような事態にまで追い込まれている。
 こうしたなか民間の努力で「共助」の献身的な支援の取り組みがなされている。こうした努力を支持し積極的に協力するとともに、政府と地方自治体に「公助」を強く求めて闘わなくてはならない。 続きを読む


全国の地方議会で意見書採択を

戦没者を二度殺すな

沖縄県議会議員 瑞慶覧 功(ずけらんいさお)

常任委員会委員長として意見書審議を進める筆者

 

 

 戦争の激戦地であった沖縄県の南部地域。特に糸満市では、その地にまだたくさんの遺骨が眠っています。戦後76年たった今でも遺族のもとに戦没者の遺骨が戻っていません。

 第二次世界大戦で沖縄の地で亡くなった米国人含めすべての人の名前が刻まれている平和の礎(いしじ)には、現在24万1593人が刻銘されています。平和公園内には全国各地の慰霊碑が建立され、国内外から世界の恒久平和を祈念し戦没者の鎮魂を祈る聖地として多くの人が訪れます。 続きを読む


コロナ禍困窮者支援の現場から

コロナ災害対策自治体議員の会共同代表
足立区議会議員  広範な国民連合・東京世話人 おぐら 修平

 コロナ禍で、パート・アルバイト、派遣社員などの非正規労働者、なかでも女性の困窮が深刻さを増している。総務省が発表した2月の女性の非正規労働者は、前年同月比89万人減の1398万人で、過去最大の減少幅。
 野村総研の調査は、新型コロナの影響で勤務シフトが半分以下になり、シフトが5割以上減少かつ休業手当を受け取っていない「実質的失業者」のパート・アルバイトの非正規労働者が、女性103万人、男性43万人と推計。
 そのような中、昨年4月の緊急事態宣言直後に片山薫さん(小金井市議)と共に、首都圏を中心とする超党派の自治体議員で「コロナ災害対策自治体議員の会」を立ち上げ、反貧困ネットワークを中心とする、NPO、法律家など約40団体による「新型コロナ災害緊急アクション」に加盟、連携しながら、連日、困窮者支援に取り組んでいる。 続きを読む