タネが危ない

野菜は人間に食べられるためではなく、子孫を残すために生きている

 

野口のタネ店主 野口 勲さん

 西武池袋線飯能駅の西北西7キロ、秩父山地のふもとに、手塚治虫の『火の鳥』と『野口のタネ』の看板を掲げた、野口勲さんの野口種苗研究所があります。タネ屋に生まれた野口さんは手塚治虫のそばにいたい一心で大学を中退して虫プロに入り、『火の鳥』の初代担当編集者となりました。虫プロが倒産した後、家業のタネ屋を継いだ野口さんは、『火の鳥』を看板に使う許可をもらい、看板に恥じないタネ屋になろうと決意しました。「生命の尊厳と地球環境の持続」です。
 野口さんは今、「タネが危ない」と、F1種のタネを大量生産するために「雄性不稔」の株を利用する技術があらゆる植物に広がっていることに警鐘を鳴らしています。野口勲さんのお話を聞きました。(編集部)

 

固定種とF1

 日本では江戸時代に、良いタネを選抜し、形質を固定して販売する専業のタネ屋が現れました。一般の農民は、形質が固定した野菜のタネ(固定種)を買い、何年も自家採種して、その土地に合った野菜にしていきました。1960年頃までは、販売される野菜のタネのほとんどはこの固定種でした。 続きを読む


友好交流を支えた苦難の4000キロ「朝鮮通信使の道」

祝・朝鮮通信使のユネスコ「世界の記憶」登録!

写真家 仁位 孝雄

1 私と朝鮮通信使

 私は、対馬をPRするため1989年から朝鮮通信使をテーマに、江戸時代ソウルから対馬を経由して江戸、日光までの朝鮮通信使の足跡をたどりながら写真を撮り続けている。撮り始めた90年代は、朝鮮通信使が宿泊したお寺(客館)に撮影に行っても、ご住職が朝鮮通信使って何ですか?と全く通じなかった。
 2002年に長崎市で開催した朝鮮通信使の写真展では、これは遣隋使ですか遣唐使ですか?との質問があるなど一般の方には朝鮮通信使は全く認知されていなかった。 続きを読む


国際環境の激変と地方・地域、自治体の課題(中)

山本 正治(本誌編集長)

3 安倍政権の国内政治、地方政策のポイント、批判的検討

 2012年12月、政権に復帰した安倍晋三首相は翌年1月28日、政権復帰後最初の国会所信表明で「危機的な状況にあるわが国の現状を正していく」と大上段から振りかざした。具体的には、「日本経済の危機」「東日本大震災からの復興の危機」「外交・安全保障の危機」、それに「教育の危機」の4つの危機を正すとした。 続きを読む


安倍政権の「林業改革」は山を荒廃させるだけ

零細な農林家が国土の7割の森林を守っている

 

農林家の能美俊夫さんに聞く

 安倍首相は1月22日、国会の施政方針演説で、「戦後以来の林業改革に挑戦する」と述べ、国会は5月25日、「森林管理経営法」を成立させた。
 日本の国土の7割近くは森林である。森林は、材木を供給するとともに、緑のダムと呼ばれ水を貯え、国土を保全し、緑の環境を維持し、CO2を吸収し酸素を供給する。薪や炭などとして熱エネルギー源でもあり、今注目のバイオマス発電に燃料を供給する。
 その森林の大半は荒れ放題である。日本の森林と林業が直面したきわめて深刻な現状と打開の方向、安倍政権が進める方向の問題点などを、農林家の能美俊夫さん(福岡県北九州市・のうみ農園主)に伺った。

 

日本の森林と林業の現状

 日本では、10ヘクタール以下の森林所有者が全体の9割を占めており、大規模に森林を持っている人たちはごく少数です。私のところは4ヘクタールくらいしかありません。その人たちが日本の森を守っているのです。その人たちはどんな人たちかというと、農業と林業をやっている農林家です。なおかつ、他の仕事もしている兼業です。基本的にはそういう人たちが一生懸命、金にもならない山を一生懸命に守ってやっているのです。 続きを読む


緊張緩和をもたらした米朝首脳会談を歓迎する

朝鮮半島の平和に日本は
歴史的責任を果たさなくてはならない

『日本の進路』編集部

 金正恩国務委員長とトランプ大統領は、6月12日、シンガポールで初の米朝首脳会談を行った。両首脳は、「両国間に数十年間続いてきた緊張状態と敵対関係の解消」をめざすことなどを確認し、合意文書に調印した。トランプ大統領は対話中の米韓合同軍事演習の中止も表明し、18日、正式に8月演習が中止された。
 朝鮮半島での半年前までの息詰まるような軍事的緊張の緩和が確認された。
 アメリカによる核戦争挑発の大軍事演習などで緊張は一触即発の極限状況にあった。朝鮮は、日本にある米軍基地も報復攻撃の対象にすると宣言し、文字通り日本国民の生命すらも核戦争の危険にさらされていた。そうした脅威はひとまず遠のいた。 続きを読む


従属関係極まる米軍基地職場

今こそ平等な日米関係を

與那覇 栄蔵・全駐労沖縄地区本部委員長に聞く

■労働者の権利守れない基地職場の現実

 全駐労は在日米軍基地で働く従業員を組織して、北は青森の三沢基地から沖縄まで、全国7つの地区本部があります。現在、全国では2万5千人くらいの従業員が働いていますが、そのなかで全駐労は1万6千人ほど組織しています。沖縄では8千700~800人くらいの基地従業員がいますが、このなかで約6千人、70%くらいを組織しています。
 在日米軍基地が職場という特殊な環境ですから、いろいろなジレンマというものを抱えています。わが国は日米同盟を基軸に防衛政策を掲げ、政治・経済あらゆる分野でアメリカと密接に関わってきました。「従属関係」とよく言われますが、実は基地の職場に集中的に問題が露呈しています。 続きを読む


激動する東アジア情勢、安倍外交に異議あり!

浅井 基文 (元外交官・元市立広島大学平和研究所所長)

 時局講演会「激動する東アジア情勢―安倍外交に異議あり!」が、東京都立川市で5月16日、開かれた。実行委員会の主催で、呼びかけ人は長谷川和男(元杉並教組委員長)、横森利幸(国労八王子地本書記長)、青山秀雄(昭島市議)、嶋﨑英治(三鷹市議)、大沢豊(立川市議)、菅谷琢磨(広範な国民連合・東京)の各氏。
 また、25日には横浜市で「『今こそ日朝対話を、国交正常化の時』神奈川集会」が開かれた。実行委員会主催で、呼びかけ人は桑原絵美(国際手話通訳者)、関田寛雄(日本キリスト教団牧師)、露木順一(元開成町長)、原田章弘(広範な国民連合代表世話人)、山本泰生(横浜国立大学教授)の各氏。
 両集会で元外交官で元市立広島大学平和研究所所長の浅井基文氏が、朝鮮半島情勢を中心に1時間余にわたって講演した。本稿は5月16日の立川市での講演の一部である。(文責編集部) 続きを読む


国際環境の激変と地方・地域、自治体の課題(上)

山本 正治(本誌編集長)

 安倍首相は今も「アベノミクスの成果を地方に」などと欺いている。日本経済は「緩やかな成長」が言われるが、国民は貧しく家計消費は伸びず、需要は海外依存、大企業の海外収益依存度は5割を超える。
 主要先進国は、どこもリーマン・ショック前の成長を超えることはない低成長傾向が続くが、なかでも日本は先進国の中で最低の成長にとどまっている。国内の需要は乏しく、バブル崩壊後の「失われた20年」を脱していない。
 安倍政権のアベノミクスで、大企業と資産家は極度に豊かになったが、地方はますます疲弊し、貧困化と格差が拡大し持続可能性が問題となっている。 続きを読む


TPP12より悪い、TPP11

鈴木宣弘(東京大学教授)

米国抜きのTPP11の発効は、日米2国間でTPP以上の対日要求に応えることとセットなので、「TPP11+米国へのTPP12以上の譲歩=TPP12以上の日本への打撃」となる。

「自由貿易」への反省の時代に入った

なぜ米国民にTPPが否定されたのか。「もうかるのはグローバル企業の経営陣だけで、賃金は下がり、失業が増え、国家主権が侵害され、食の安全が脅かされる」との米国民のTPP反対の声は大統領選前の世論調査で約8割に達している。トランプ氏に限らず大統領候補全員がTPPを否定せざるを得なくなった事実は重い。
「トランプ氏の保護主義と闘わなくてはならない」という日本での評価は間違いである。米国民によるTPPの否定は「自由貿易」への反省の時代に入ったことを意味する。 続きを読む


米国、自動車関税で恫喝。自由貿易協定を迫る

亡国・腐敗の安倍政権打倒!

自主・平和の政権をめざし連携を発展させよう

「日本の進路」編集部

 安倍政権と与党などは、離脱した米国を除く11カ国による環太平洋連携協定の新協定(TPP11)承認案を5月15日に、同関連法案を24日に、強行採決で衆院を通過させた。6月20日までが会期の参院での攻防となっている。
 この法案の本質は、鈴木宣弘東大教授が内閣委員会での参考人質疑(4~6ページに掲載)で指摘するように、「食を外国に握られることは国民の命を握られ、国の独立を失う」のであり、まさに亡国の協定である。関連法案を含めて阻止の闘いを強め、安全保障確立戦略の中心を担う恒久的な農林水産業政策確立をめざす闘いを発展させなくてはならない。 続きを読む



2018年春闘が浮き彫りにした課題

交渉力低下の背景に経済の構造変化

早川行雄(元JAM副書記長)

底上げ・格差是正には力不足

 2014年春闘で久々にベースアップ(ベア)要求が復活して5年が経過した。18年春闘は、景気拡大がいざなぎ景気を超える戦後2番目の長期にわたり、企業業績も上場企業の多くが過去最高益を更新するという景況の下で、5年連続のベア要求が方針化された。一方、政府・官邸サイドも法人税の実効税率を25%程度まで引き下げる賃上げ優遇税制を導入するなどして、3%の賃上げを経済界に要請する「官製春闘」が継続された。 続きを読む


沖縄の「夢」を全国の「夢」に

沖縄平和運動センター議長
山城博治
インタビュー

聞き手:山内末子 全国世話人(元沖縄県議会議員)

若者に届くメッセージを

――山城さんは昨日から辺野古の現場に戻られました。この間拘束されたり、裁判があったりして、なかなか現場に戻れなかったもどかしさがあったと思います。ようやく現場に戻られたということで、最初から辺野古のゲート前の闘いに関わったなかでの今の思いや、現状、これまでの課題、これからに展開について今、思っていることからお願いします。

 2016年6月に辺野古から高江の現場に移ったので、辺野古に戻るのは2年ぶり近くですね。そういう意味では感慨深い思いで、今ゲート前に座っています。
 ただ、まだ裁判中だということと、2年の刑、3年の執行猶予を求められているので、あんまり下手に動き回ってまたパクられたりすると、これからの控訴審で「反省がない」「執行猶予を取り消して実刑を」と言われかねないので、ここはまあ慎重にするしかないなあと思っています。 続きを読む


全国全地域住民に標準的な行政サービスを

トップランナー方式と地方交付税

自治体間競争をあおり、犠牲は地方住民に

東京大学法学部教授 金井利之

はじめに

 国は2016年度から地方交付税に、いわゆる「トップランナー方式」を導入している。トップランナー方式とは、民間委託などで業務を効率化している自治体を基準に単位費用を抑制する算定方式である。
 総務省が経済財政諮問会議「第7回 国と地方のシステムワーキング・グループ」に提出した資料によると、16年度の単年度の影響額は441億円で、21年度までの累積影響額は1637億円を想定しているという(『日経グローカル』18年1月1日)。つまり、トップランナー方式の導入によって基準財政需要額が抑制され、したがって、マイナスの影響を受ける個別の自治体の合計の地方交付税配分額が減少する。このような情勢を鑑みれば、個別自治体としては、さらなる経費節減・効率化の努力が求められるという。 続きを読む