沖縄の、福島の、国民の声を聞け!
11・23沖縄県民大集会の成功へ!全国で声を上げよう!
『日本の進路』編集部
臨時国会が始まっている。経済対策補正予算案が中心といわれるが、残念ながら深刻な状況にある国民の声は届いていない。
「身ぐるみひとつで牛も馬も畑も家も墓も海も捨てて島から追い出されることを絶対に認めない」、住民はこう吐露した。「有事」に全島民を1日で島外避難させるという与那国町での説明会(10月9日)でのことだ。与那国島は台湾から110㎞。
「(そもそも)日本は戦争ができる国なのか。なぜ与那国の人が島を出て行かないといけないのか。俺は行かない」「私は避難しない。島に残る」等々の声が続いたという。
今、わが国最大の課題は、中国脅威をあおる戦争準備の策動を止めることだ。日米大軍事演習が強行され、政府は中国包囲網外交を進め、「有事」をあおり立てる。中東情勢もあり、アメリカは対中国で日本をいちだんと前面に押し出そうとしている。
福島原発汚染水の海洋放出も強行された。福島県民はじめ多くの国民は納得していない。放出見直しと国民合意形成、近隣諸国との合意も重要だ。脱原発のエネルギー政策と安全・安心な食料の自給強化、食料安全保障確立は、気候変動の世界で待ったなしだ。
こうした喫緊の事態に国会は真正面から取り組むことが求められる。
重要なのは国民世論であり国民運動だ。戦場とされる危機を目の前に沖縄県民は闘いを強め、11月23日に県民大集会を開催する。沖縄も日本全国どこも戦場にさせない世論を発展させよう。
島々を戦場とする戦争計画
米海兵隊と陸上自衛隊との合同実動演習(レゾリュート・ドラゴン23)が10月14日から31日まで、北海道から沖縄までの広範囲にわたって実施された。レゾリュート・ドラゴンとは「不屈の龍」。最大の演習場となった石垣島の抗議集会で、「いのちと暮らしを守るオバーたちの会」は、「レゾリュート・ピース」の横断幕を掲げ決意を示した。抗議行動が県内各地で連日繰り広げられている。
この合同実動演習は、米海兵隊の機動展開前進基地作戦(EABO)を踏まえた陸自と米海兵隊との共同訓練だ。昨年も実施されたが、今回は中国をにらむ沖縄・九州が主演習地となり、人数も約2倍の6400人で過去最大規模だ。
EABOは、米軍の新たな対中国戦争計画である。海兵隊を再編した海兵沿岸連隊(MLR)が中国のミサイルの射程圏内に踏みとどまって、巡航ミサイル「トマホーク」(射程約1600キロ)や高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」で対抗する作戦である。MLRは沖縄島のほか、石垣島、宮古島、与那国島などを中心に展開し、沖縄の島々を戦場とする計画だ。
前泊博盛沖縄国際大学教授は、「MLRは有事の際に前方に展開し、敵を引きつける役割を担い、周りから攻撃させる。日本政府にはMLRを沖縄に置くことで米軍を引き留める狙いがあるとみられるが、敵の攻撃を引きつけ、住民が巻き添えの被害に遭うリスクを高める。傍観者的な国防論がまかり通り、そこに住む人の視点が足りない」と批判する(朝日新聞10月8日)。
外交は「中国包囲」政策だけ
8月に麻生自民党副総裁は台湾を訪問し、日・米・台湾で「戦う覚悟」を主張。さらに台湾の「建国記念日」には「日華議員懇談会」の与野党国会議員が訪台。その折、萩生田自民党政調会長は「防衛力の抜本強化を一気に進めていく。行動こそがすべてだ」などと講演、戦争をあおった。
こうした一連の動きは、台湾が中国の不可分の一部、ひとつの省であり、日本と台湾との関係は観光や経済など民間交流にとどめるという「日中復交3原則」を大きく逸脱する。「台湾独立」をあおっていることは明らかだ。
上川外務大臣がベトナム、タイなどASEAN4カ国を10月はじめに歴訪、岸田首相も11月はじめにフィリピンとマレーシアを訪問する。そのねらいを朝日新聞は「東南アジアは、米中対立の『主戦場』ともいえる。米国と同盟を組む日本の懸念は、ASEAN諸国の中国への経済的依存が強まることだ」(10月13日)と解説した。
日中関係の平和的発展は日本の真の国益である。福田康夫首相(当時)による2008年の「日中共同声明」では、意思疎通強化のため「毎年どちらか一方の首脳が他方の国を訪問すること」を取り決めた。厳しい状況にある今こそ、この共同声明に立ち戻り、岸田首相は首脳会談を実現するべきだ。
日本経団連など経済界は来年1月に訪中団を派遣する。全国の自治体や青年を中心に広範な民間友好交流などが進むことを期待したい。
福島県民は納得していない
東京電力の汚染水海洋放出について、世論調査では「政府と東京電力の説明が十分か」という設問に対して、「不十分だ」が60%で、「十分だ」はわずか26%に過ぎない(毎日新聞)。
近隣諸国の国民も納得していない。言論NPOが行った世論調査では韓国国民の7割が放出に反対し、中国では放出が「心配」と答えた人は47%。台湾の世論調査では「海洋汚染が心配だ」と答えた人は6割を超え、中国政府による日本産水産物の全面禁輸措置についても半数が「合理的だ」と答えている。
臨時国会でも、この問題を徹底解明すべきだ。来年度以後の処理計画もまったく示されていない。福島県民をはじめ国民の声を聞き、また、近隣諸国の理解を得る努力をしなくてはならない。そうでなくては、岸田首相が放出に当たって「必要な対策を今後数十年の長期にわたろうとも、全責任をもって対応する」などと言っても何の保証もない。
岸田首相は昨年夏、歴代政権の原発事故以降の「原子力への依存度を低減する」方針を大転換した。このときも国民への説明もなく国国会審議も経ていない。繰り返させてはならない。
水俣病をめぐり大阪地裁は原告を患者として認める判決を出した。国はここでも「国際的な科学的知見」などを口実に控訴を決めた。被害者はすでに高齢化し、亡くなった方も多い。政府が責任を取りきれないことは明白だ。同じ過ちを犯してはならない。
求められる新しい日本の基本政策
政治が何をなすべきか。激動の世界で生き抜く日本の将来像であり、しっかりとした基本政策を打ち立てることだ。それには国民の声がいちばんの基礎だ。
ところが岸田首相は、国民の声を聞く耳を持たない。アメリカの声ばかりが聞こえるようだ。それに国民に説明しない。汚染水海洋放出も、軍事費5年で倍増も、原発依存度低下変更も説明なしだ。
沖縄では、新しい動きが始まっている。
若者を中心に県民大集会など県民の運動が発展する。自治体議員有志の会も生まれている。与那国の住民説明会での活発な住民の姿に、「島の一大事に意見を交わし合う住民の姿に自治の原点も感じる」と琉球新報コラムは書いた。
玉城沖縄県知事は「地域外交」を始め、沖縄と中国との交流促進で成果も上げ始めている。玉城知事は、県民の声に忠実な県政運営をめざしているにすぎない。民主主義、法治国家というのであれば、それが最も大事だ。政府は代執行訴訟など取りやめて、沖縄県と話し合うべきだ。
これからの日本は、「地域のことは地域で決める」、これである。そして、「日本のことは日本が決める」、そうした政治をめざすときだ。まずは、沖縄を支持し、全国に闘いを広げよう。