12・22県民大会にオンライン参加して

  これを「最後の県民大会に」

一県民、母親としての願い

輝く未来創りアンバサダー 東江 真澄(南城市民)

 私の生まれ育った宜野湾市には、世界一危ない基地と言われる普天間基地があります。学生時代、教室では突然空からの爆音とともに窓ガラスがガタガタと騒ぎ出し、先生の声が聞こえなくなり授業はいったん中断してしまう。物心つく頃に漠然とした恐怖感は日常の当たり前になり、低空飛行する米軍機に安心と安全な学びの機会を奪われ続けてきました。
 昨年、沖縄県の南部にある南城市に引っ越して、空がとても静かなことに驚きました。実家の宜野湾市に寄ると、いまだ米軍機の飛行経路下になっていてうるさく、何も解決していない、むしろより深刻な状況になっていることに不安をかき立てられます。
 1945年、米軍が沖縄本島に上陸して以来、米軍基地が存在することで派生する事件・事故が続発する暴力、強姦、殺人、環境破壊の悪質性は、沖縄が置かれている不条理な実態を表していると思います。米軍基地の負担を「本土の理解が得られないから」ということからでしょうか、沖縄に7割もの基地を押し付けられる構造的な差別。本土の人たちはどのくらい知っていて関心を持っているのでしょうか。

被害に遭った少女に安心できる日常を

 そんな中2023年12月、16歳未満の少女誘拐・性的暴行事件が起きました。しかし事件発覚は、半年後の24年6月になってようやくでした。被害者が未成年だったことや半年も伏せられ取り決められていた通常の情報提供の手順が全く機能していなかったことなども重なって、沖縄県民は不信感と強い憤りを覚えました。
 また少女は、那覇地方裁判所の法廷で犯人の米兵が衝立越しにいる中、自分に起こったことを5時間も証言することに耐えないといけませんでした。これは身体的、精神的にさらに何重にも苦痛を与えたと想像できます。
 今回の事件を知っていくうちに私自身も精神的に不安になり悪夢を見るようになりました。被害者である少女はいったいどんな状況なんだろうと考える日々が続きました。一刻も早く少女が安心できる日常を取り戻せるよう心から望みます。

傍観者にならず、行動を

 2024年12月に県女性団体連絡協議会がけん引し、賛同した約150団体で県民大会という抗議と再発防止を訴える集会が開催されました。本会場と同時に名護、石垣、宮古島の三つのサテライト会場、さらに札幌、東京、大阪はじめ全国各地で連帯のアクションが行われました。私は当日どうしても会場に行きたかったのですが、宮古島から沖縄島に移動中で間に合わずオンライン中継で参加しました。
 「あなたは悪くない、私たちはあなたの味方」と女性の権利を守るシンボルのミモザにちなんだ黄色い色を付け少女に寄り添い集まった人で連帯の輪を広げていました。沖縄市民会館大ホールに入りきれずロビーにも多くの人があふれていました。
 今までの大会と違い、ふつうの県民が中心の訴えが続きました。「性暴力」という言葉の意味を知らなかった10代の子どもや、沖縄高校生平和ゼミナールの抗議声明の一文が私の心を打ちました。「こんなアピールを子どもが出すのは今日で最後にしたい。今こそこの国の主権者として、私たち一人ひとりが勇気を持ってこの理不尽に対してはっきりと怒りを突き付けて叫ぶべきです。沖縄を返せ、沖縄に返せ!」と声を上げる。
 こうした発言に、大人に課せられた役割を果たせてなく大変申し訳ないと思うようになりました。これまで沖縄にはどうしようもできないと思われるような解決が難しい問題が多発していました。いつの間にか向き合うことがなくなり、長い間、主権者であるという意識が薄くなっていたことに気付かされました。
 大人の私たちは、未来ある子どもたちにこのままの沖縄をスライド継承してはならない。戦後続く諸問題を解決しないままに、子どもたちはこの地で生きていかざるを得ないのか。
 子どもや女性が蹂躙され軽視され続けている負の連鎖をなくすには、沖縄と本土の誰もが関係者であって沖縄の犠牲が今も続いていることに無自覚ではいけない。このことを自覚し、共に解決に向けた行動をしていただきたいです。
 県外出身の大学生の訴えでは中塚静樹さんが「沖縄が置かれた不平等な構図が問題であり、一人ひとりがそれを認識する必要がある」と力強く声を上げてくれました。また16年に米兵に暴行、殺害された事件が起きた際に13歳で県民大会に参加した北谷町出身の大学生の崎浜空音さんも発言されました。2度目の参加となり、繰り返される異常さに、「もう絶対に繰り返してはならない」と未来に残してはいけないという思いを込めて訴えていました。
 今は、いかに国民一人ひとりが傍観者にならず社会を変えていく意識を持って行動できるかが問われる瀬戸際だと思います。

「事件をなかったことにしない」

 2024年に米軍関係性犯罪は過去10年間で最多になりました。基地外での行動を制限する形だけの「リバティー制度」は何の効力も持ちません。
 不平等な日米地位協定を変えると同時に、沖縄から米軍基地を撤去すればすぐにでも解決できる問題です。しかし、日本政府は実効性ある対策を一度もしてくれたことはありません。私たち沖縄県民は何世代にわたって犠牲を強いられてきました。沖縄で生きるだけで人権が侵害され続けています。日本政府にとって沖縄とは何なのでしょうか。いまだに、本土防衛のための捨て石の位置付けなのでしょうか。
 しかし、大会では画期的な報告もありました。24年10月にスイスのジュネーブで開かれた国連女性差別撤廃委員会に沖縄から参加したBe the Change Okinawa代表の親川裕子さんが発言していました。委員会での日本政府審議報告では、在沖米軍による深刻な性被害の訴えに、女性に対する性的暴力の防止や加害者に対する処罰について日本政府に初めて勧告が出されたという報告です。今回の勧告により沖縄が置かれている不条理な軍事性暴力を解決する道が開かれ希望の前進になればと思います。
 大会の最後に、事件を「なかったことにしない」と掲げ、①被害者への謝罪と補償、②二次被害の防止、③速やかな情報提供、④日米地位協定の抜本改定を求める―との決議を会場にいた参加者全員で採択しました。同決議の実現を求めて、12月23日に外務省沖縄事務所と沖縄防衛局へ要請しました。25年1月末には東京の国会でも要請行動をするとのことでした(その後、2月6、または7日に予定)。女性たちの主導で、政府などへの働きかけを加速させるために万単位のオンライン署名も進んでいます。
 今年戦後80年の節目に沖縄から平和を広げたい。暮らしと命が脅かされるのは二度とごめんです。人権の尊重と基地から派生する事件・事故を起こさないためにも米軍基地は撤去すべきです。軍拡を進める日本政府の動きに国民が「NO!」を突き付けるよう呼びかけたい。
 これが最後の県民大会になるよう一県民として3人の子どもを育てる母親として心から願います。