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主張 ■ 曖昧さを許されない台湾問題

日中関係強化への注目すべき新たな動きも

『日本の進路』編集長 山本 正治

 バイデン米大統領は、台湾「総統」選挙での民進党頼清徳候補勝利について問われて「われわれは台湾独立を支持しない」とだけ述べたという。一線を守ったということだろう。
 それと比べてもわが国上川陽子外務大臣は、「頼氏の当選に祝意」を表し、「台湾は基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーで、大切な友人だ」「日台間の協力と交流の更なる深化を図っていく」とわざわざ述べた。「台湾独立を支援していく」と言っているようなものだ。
 こんなことをしていては衰退する米国の「台湾有事」策動に引き寄せられ、日本はアジアの孤児に再びなりかねない。
 日中国交正常化以来、確認されてきた「台湾は中国の不可分の一部」の原則をキチンと確認し、両国の平和友好、協力関係発展を実現しなくてはならない。

中国と向き合うカギは
台湾問題

 上川談話はこれまでと同様との弁明もある。だが、同じ言葉でも、環境の全体の中で違った意味を持つ。しかも、麻生太郎自民党副総裁の「潜水艦、戦艦で台湾海峡で戦う」発言の直後だ。親台湾派の「日華議員懇談会」は祝賀代表団を送り、頼「総統」の訪日を招待した。「台湾独立」の頼新総統を大いに激励したのは間違いない。
 日本にとっての台湾を、歴史を踏まえてキチンと確認しなくてはならない。
 日本は、日清戦争で台湾を清国から奪い取り、1895年植民地化した。すべてはそこから始まる。その後も中国東北部での満州国デッチ上げ、さらに大陸侵略の全面戦争と続く。そして敗戦、日本は中国大陸から追い出された。内戦で大陸を追い出された蔣介石は米軍に守られ台湾に逃げ込み「中華民国」を名乗り、日本は米国の支配下で「中華民国」と国交を結ぶ。中華人民共和国との平和条約は結ばれず敵対関係、戦争状態が続く。
 1972年、この長い戦争状態に終止符を打ち日本は中国と国交正常化を実現した。
 台湾問題は日中間の近現代史の一貫した焦点であり、正常化交渉でも最後まで残った対立点だった。共同声明では、「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府」を確認した。台湾については辛うじて、「台湾が中国の領土の不可分の一部である」との中国政府の立場を「十分理解し、尊重する」と合意した。それすらも田中角栄総理の文字通りの英断でだった。
 その後、周知のように日中相互関係は日ごとに強まり経済、文化、スポーツ、観光交流など大きく発展し、双方の経済発展に大きく寄与した。とりわけ中国の発展は目覚ましい。科学技術を含めて世界をリードする位置に立った。
 すでに購買力平価GDPでは米国を凌いだ。米国は内部対立も激しく、中国の台頭に焦っている。
 アジアの一員として歴史も踏まえて日本がどうすべきか。明らかであろう。

「台湾」は国交正常化後も争いの歴史

 日中共同声明は「日本はポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持」と確認したが、その内容はカイロ宣言の履行だ。そこには「満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ」とある。
 共同声明で台湾は、中国(「中国の唯一合法政府」である中華人民共和国)に返還された。
 しかし自民党の一部反動派は、田中総理帰国直後に「この場で切腹せよ」と迫るところから始まって、台湾との公的関係を継続強化しようとさまざま画策し、日中間の合意をなし崩しにしようとした。その策動は今日まで続き、中国の強大化で中国敵視が強まるとともに、ますます激しくなっている。
 福田康夫総理は2008年、共同声明で「台湾」について再確認する。
 これは日中間の「4つの基本文書」の核心である。こうした合意は日本国と中国との国家間の合意であり、平和友好条約で固められている公的関係である。
 ところが今日、自民党の麻生副総裁はじめ幹部や、国会議員も地方議員も台湾を相次いで訪問し、「独立」を煽る。上川外相はじめ政府高官も、「重要なパートナーで、大切な友人」と平然と言い放つ。
 とくに問題は2022年12月「安保3文書」の国家安全保障戦略で、中国について「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と位置付けたことだ。しかも、「(中国政策の)基本的な立場に変更はない」と言いながら、「台湾は、極めて重要なパートナー」と断定。これは実質的に完全な立場の変更だ。
 台湾問題を、「核心的利益中の核心」と位置付ける中国が激怒するのも当然である。
 野党もキチンとしないといけない。野党の国会議員、地方議員も、日中間の取り決めを知らずか、そのふりをしてか、相次いで台湾を訪問し、台湾「総統府」とも接触し、あたかも独立国かのように扱う。これは日本の真の国益に反し、東アジアの平和の阻害要因となる。
 日中の平和と友好関係を強化発展させようとするならば、「台湾は中国の不可分の一部」の原則を遵守しなくてはならない。そうでなければ、実質上「台湾独立」をそそのかす米国の戦争策動を容認することになる。
 台湾問題はわが国の対外関係と東アジアの平和にとって試金石である。

日中関係強化で
戦争をさせない

 昨年末、伊波洋一参議院議員を団長に「沖縄平和友好訪中団」が北京を訪問し、各方面と交流・参観し、平和協力を確認してきた。
 「再び戦場化」の危機が迫る沖縄では一昨年来、東アジアの対話と交流で平和をめざす動きが広がり、玉城デニー知事訪中はじめ沖縄県の「地域外交」も始まり、昨年11月の県民平和大集会では日中平和友好条約に沿った平和構築が訴えられていた。こうした沖縄の前進を確実にする重要な訪中団だった。沖縄は、東アジアの交流と発展のハブであり、そのためにも地域平和の確保は絶対的条件である。
 中国を訪問中であった髙良鉄美参議院議員も要所要所で参加したこの団は沖縄にとどまらず日中関係全体でも重要だ。何カ所かで、「コロナ後訪問された初めての国会議員の団です」と言われた。政府もそうだが民間も日中関係打開の努力が余りにも不足している。
 また、国交正常化以来を振り返りながら、「民をもって官を制す」と言われた。日中関係の発展は、岸田政権だけには期待できず、民間の努力が重要だということだろう。
 1月18日から福島みずほ党首が団長となって社会民主党訪中団が北京を訪問した。「日米同盟」強化の中国敵視論一色のような野党陣営の中で誠に貴重な動きだ。決断に敬意を表し、今後の奮闘に注目したい。
 また、日本共産党の党大会で志位和夫委員長(当時)は、「東アジアの平和構築のために、さまざまな形で国民的・市民的運動にとりくむことを、この大会として国内外に呼びかけることを提案」した。「『ASEANまかせ』というわけにはいきません」と他人任せに反省も表明し、努力する旨を表明した。
 九州では「日中不再戦、沖縄に学ぶ自治体議員の会」といった運動も呼びかけられている。
 こうしたさまざまな努力を支持する。労働運動でも呼応する努力を期待したい。財界は日本経団連会長を先頭に1月末に代表団を中国に送った。断固支持したい。
 与野党の政治家たちをはじめ民間の日中不再戦、友好協力関係を発展させ、東アジアの平和を確保しなくてはならない。2024年を日中の平和協力発展への転機の年にしよう。