統一地方選を前に 地方自治体の現場から 藤本 寿子

水俣市議会 「軍事費」発言取り消し攻撃を許さない

水俣市議会議員 藤本 寿子

 私は、昨年12月議会の一般質問の前語りにおいて、このように発言した。
 「水俣市も多くの問題を抱えておりますが、私は何より日本政府の軍事費拡大には反対であります。ましてや、増税にも反対であります。政府は同盟国との軍事訓練などで緊張をあおらず、平和共存の話しあいを重ねるべきであります。そして、税金は、困窮する国民のため投入するべきです」
 このように発言したのだが、その後の議会運営委員会で保守系議員より、この「軍事費」という表現は、本当は「防衛費」であり、「軍事費」というのは間違いであると言い、藤本議員は、曲解しているとの言いがかりがあった。そのため「軍事費」という表現を取り消せという委員からの申し入れであった。


 もちろん、私を含む議員数人で猛反発。「防衛費と軍事費とどう違うのか」、「国を守る」ということが防衛費であるとすれば、この間、岸田首相が打ち出している敵基地攻撃能力、さらに「国家防衛戦略」は、名前こそ防衛とついているが中身はアメリカとの軍事行動を行うということをより明確にしたものだと反論。
 私は、同じ会派の代表と議会運営委員会での申し入れには応じなかった。

JNC(元チッソ)議員からの本会議での動議

 12月22日、最終日の議会運営委員会は、誰も発言なしで静かなものであったが、本会議で発言取り消しを強行するとのシナリオはできていた。
 JNC選出K議員が、動議の内容を読み上げた。それに対する質疑で彼の動議の軽さが浮き彫りになる。これまでこのような内容の発言を取り消したことがあったのかという質問に「わからない」と答えた。この動議が採決されたあと、議会議事録を調べると、私を含め6人の議員から、同じ内容で過去発言の記録があり、何ら発言取り消しなどという動きはなかったのだ。
 当日、発言取り消しを求められた議員は、議場を出て部屋で待機しなければならないのだが、控えの部屋に座って、議場での様子を想像しながら、ひとりで座っていたが、ひとりでいることの寂しさや、惨めさもなかった。
 むしろ、地方議会といえども、これを認めることの方が悔いの残ることになると思った。そして、議場では、同じ思いの議員たちが、的を射た質疑、討論をしてくれた。そして、本人の陳述も認めたので、私はこのように発言した。「まず、軍事費の定義を見ると、軍事上の目的のため、支出される国家経費、平時には、国防費ともいう。この定義の上で、現在岸田首相が国家戦略として打ち出しているのは、敵基地攻撃能力など、アメリカとの軍事協力により、相手国を攻撃できる、まさに軍事的中身のことであり、私が発言した軍事費拡大は、曲解でも何でもない発言であり、この発言を取り消すことには応じられない」と主張した。
 しかし、保守系議員から、あくまで水俣市議会での発言として妥当でないと採決による発言取り消しを強行した。

水俣市議会における
保守系議員の横暴

 極論を書いて申し訳ないが、第2次世界大戦もわが町の水俣病も、国が大きな過ちを犯した結果であったと思う。
 この間、この水俣病の問題で保守系議員は、明らかに「水俣病のまち」のイメージ払拭の策動をあからさまに進めてきた。水俣市議会には、水俣病を巡る諸問題の解決のため、「公害、環境問題特別委員会」という委員会があったが、3年ほど前に議会運営委員会で、名称から「公害」を取る、つまり、水俣病を取るに等しいことだが、それを提案し、これも強行し、なくしてしまった。これには、いまだ解決に至らない被害者や市民から猛反発があったが、力によるねじ伏せであった。
 そして、最悪なのは、名前を環境対策特別委員会に変更したその「環境対策特別委員会」は、山積みの環境問題を横目に見ながら、この3年以上、一度も開催されていないままである。

環境対策特別委員会の
委員長に立候補

 私は、これではどうにもならないと、特別委員会の委員長を決めるとき、「いつまでも特別委員会を開催しないというのは、議会の損失である。開催をするため、委員長に立候補する」と名乗り出た。
 公害、水俣病を冠から取った委員会の様変わりであっても、水俣では未認定患者の裁判は続いている。また、現在、膠着状況となっている「不知火海沿岸地域の健康調査」については、国も県も方針を出せない状況のなかで、水俣市議会が当事者の議会として、国や県に住民の現状を踏まえ何らかの動きをするべきだと思っている。しかしながら、勉強会や、意見聴取などの動きはなく、機能を果たしていない。
 それどころか、一般質問で水俣病のことを質問すると、JNC関係の議員から、発言の停止を求められるということが、たびたびあった。今回の「軍事費拡大に反対」の発言取り消しも同じ議員からであり、体質が変わっていないこと。軍事費問題にも通じるものがあると感じている。

全国から、平和を守ろうの声が

 1月13日、年をまたいでしまったが、水俣市議会の私の所属する「無限21会派」であらためて、「議会における発言取り消しと議長判断に対する抗議」ということで、抗議文を手渡した。議長に「軍事費」と「防衛費」の違いはどのようなもので、発言取り消しに値するのかと問うても、答えはなかった。採決が8対7であり、それに従ったということであった。そこでこちらからは、議会が自ら「議員の発言自由の原則」を踏みにじるということであり、厳重に抗議すると主張した。この抗議の後押しとなったのは、水俣だけでなく、東京や九州の人々からの嘆きと励ましの声を受けて、しっかり抗議しなければと思ったからだ。

南西諸島の軍事基地化は、わが身の問題

 辺野古新基地建設ももちろんだが、現在進められている鹿児島馬毛島、奄美、沖縄諸島の軍事基地化の進展には、心から憂慮している。
 私の母方のルーツは徳之島であり、軍事基地化したときの攻撃のリスクを考えると、いたたまれない。
 岸田首相には、近隣の国々へ武器を向けるのではなく、憲法9条をもつ国として、誇りをもって平和のための話し合いを重ねてほしい。コスタリカのように、100万回でも平和の交流を重ねることを国の指針としてほしい。
 あの美しい島々を決して戦場にしてはいけない。「平和主義」は、日本国民として戦後歩んできた、私たちの精神的指針であることを、思い起こしたい。
 ともに今こそ手をとり合って頑張りましょう!