課題・言葉一覧

世界史的転換点を映す――ダボス会議、ミュンヘン会議

しっかりとした国の進路を定めなくてはならない

本誌編集長 山本 正治

 新型コロナウイルスが世界を揺さぶっている。安倍政権の対応はお粗末極まりない。即刻政権を代える以外にない。官民の知恵と力を総結集した強力な対策を強く求める。
 「歴史的に見れば新興感染症は世界史的転換点で発生してきた」(中西寛・京都大学大学院教授)といわれる。時あたかもこの時期に二つの国際会議が開かれた。
 一つは通称「ダボス会議」、全世界の有力な企業経営者やトランプ米大統領など政治家、それに研究者など3000人以上が集まった世界経済フォーラム総会が1月末にスイスで、もう一つはドイツのミュンヘンで、「安全保障版のダボス会議」とも呼ばれる国際安全保障会議が2月中旬に開かれた。当然どちらでも新感染症対策は議論になった。
 これらの会議も、歴史的な大転換期を経過していることを全世界に印象付けるに十分だった。 続きを読む


特集■「自立日本の総合安全保障を考える」農は国の本、国家安全保障の要

東京大学大学院教授 鈴木 宣弘

 

 国民の命を守り、国土を守るには、どんなときにも安全・安心な食料を安定的に国民に供給できること、それを支える自国の農林水産業が持続できることが不可欠であり、まさに、「農は国の本なり」、国家安全保障の要である。そのために、国民全体で農林水産業を支え、食料自給率を高く維持するのは、世界の常識である。食料自給は独立国家の最低条件である。 続きを読む


特集■「自立日本の総合安全保障を考える」環的中日本主義の勧め

SDGsの実現のため分際をわきまえた国家を目指す

 

篠原 孝 衆議院議員

 

 安倍政権は明らかに大国を目指している。一番の願いは軍事大国である。だから、執拗に自衛隊の加憲による憲法9条の改正にこだわり続けている。国民はその必要性を感じていない。世論調査も58%が反対し、62%は安倍政権ですることはないと警戒心を持っている。国民の健全性を示している。 続きを読む


「韓国は敵ではない。共同すべき大切な味方である!」

東アジアの対立をあおり紛争を待望する同盟国アメリカ

青山学院大学教授 羽場 久美子

本稿は、羽場久美子青山学院大学教授が、「韓国は『敵』なのか」緊急集会(8月31日、東京都内)での発言に大幅に加筆したものである。(一部タイトルは編集部)

 集会のタイトルは「韓国は『敵』なのか」ということですが、私は、「『敵』ではない、共同すべき大切な味方である!」という立場で話させていただきます。私は元々ヨーロッパ研究の国際政治学者ですが、21世紀に入って足かけ20年にわたり、東アジアの地域協力について研究してきました。 続きを読む


「命をつなぐ政治」を国政に

滋賀県知事から参議院議員へ

嘉田 由紀子 参議院議員

 学者が知事職に挑戦して何をやりたかったのか、とよく聞かれます。もともと環境社会学者だった者が知事選挙に挑戦しました。2006年のことです。今となって振り返りながら、私は迷わず「命をつなぐ政治を求めてきた」と答えます。そのポイントは二つです。一つは、「子どもが生まれ育ち、そして親もうれしく元気、社会全体としても子育てを前向きに評価ができる」ということです。「子育て三方よし」と私は名付けました。二つ目は「災害で命を失わない」ということです。これはいわば「入り口」と「出口」です。この両方を2期8年、私なりに政策実現をめざしてきました。 続きを読む


韓国「敵視」を煽り、支持浮揚を図る安倍政権

自主外交で、アジア近隣諸国との平和・共生へ

『日本の進路』編集長 山本 正治

わが国は避けようもない大激変に翻弄される!

 間もなく終わるが、「恐怖の夏」だそうだ。大恐慌の引き金となった1929年ニューヨーク株価暴落も、2008年リーマン・ショックも、夏の終わりに起こったからだろう。深刻な金融危機の爆発はいつか、世界中の投資家たちは身構えている。
 経済危機の中、世界中で貧困層が急拡大。世界一の「経済大国」アメリカでも、低所得者向け食料費補助(フードスタンプ)で国民の6人に1人が生き延びているありさま。生活必需品すら買えない人が激増、世界中が購買力不足、需要不足となるのは当然である。世界経済は中央銀行の資金供給、金融の肥大化に辛うじて依存してきたが、それも限界点を越えている。世界中、企業も家庭も、政府も借金だらけである。 続きを読む


農業とJAと地域環境

JA菊池代表理事組合長 三角 修

本稿は、8月17~19日に熊本市で開催された第16回全国地方議員交流研修会での三角修組合長の報告要旨である。文責編集部

 まずは、先ほどからお話があったように3年と4カ月前、あのような地震がございまして全国の皆さま方から本当に温かいご支援をいただきました。ありがとうございました。(一同拍手)
 私どもJA菊池の宣伝を少しさせていただきます。私どものところは熊本市のベッドタウンという感じのところで、熊本市の中心部までJA菊池の本所から40分、50分というところです。全国にJAは607くらいありますが、そのなかでも人口増加しているJA管内というのは私のところと、あといくつかあるかないかだと思います。 続きを読む


やはり「失うだけの日米FTA」

米中紛争の「はけ口」もセットで「TPP超え」いつの間にか消えた捏造語TAG

東京大学教授 鈴木 宣弘

「TPP水準」を意図的に強調する姑息

 日米FTA交渉をめぐって、多くの報道で農産物の開放を「TPP水準にとどめた」かのように強調されているが、これは間違いである。
 ①そもそも、TPP水準が大問題だったのだから、TPP水準にとどまったからよかったかのような報道が根本的におかしい。
 ②加えて、米中貿易戦争で行き場を失った米国農産物の「はけ口」とされ、トウモロコシなどの大規模な追加輸入の約束がセットで行われたのだから、これは明らかな「TPP超え」だ。 続きを読む


特集■農林漁業の再生へ国民的運動を!

日米FTA原則合意     
9月署名、臨時国会批准を許さぬ闘いを

 

 G7サミット時に行われた日米首脳会談で、日米貿易協定交渉が「原則合意」となった。トランプ大統領は、「原則合意に達した。非常に大きな取引。農家にとってとてつもない合意だ」と農業分野での成果を強調した。会談に同席した米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は、農産品について「70億ドル(約7400億円)超の市場を開くことにつながる」との見通しを示した。 続きを読む


持続可能な農業・農村再生への取り組み(下)

全日本農民組合副会長 鎌谷一也(前鳥取県畜産農業協同組合長)

2、地域からの農と食の再生(未来づくり)への取り組み

②広域農業生産法人の取り組み

 飼料稲の取り組みを行う中で、畜産と提携すべき耕種側の組織の必要性を痛感する。とくに、高齢化が進み60歳以上が9割(65歳以上8割)といった情勢の中で、地元で集落営農法人に取り組む。畜産側で飼料稲の栽培などコントラクターの取り組みを強めたが、連携対象の耕種側は、地域に密着し世代を超えて地域の農地・農業を守るべき組織・農家であるべきという思いで、コントラクターでの利用権設定はせず、全面受託を原則としてきた。一方、当時の農政上も、集落営農法人等を組織すべきという課題が登場していた。 続きを読む


全国唯一の財政再生団体・夕張市の厚谷司新市長に聞く

「真の再生」に重要なのは「計画」にあるのではなく「人」

――このたびは当選おめでとうございます。

 ありがとうございます。私の前任者の鈴木直道前市長は2期務められた。その中で不可能であろうと見られていた財政再建策の抜本見直しも行って、財政の再生だけでなくて地域の再生もしっかり取り組んでいこうと舵を切られました。現在もまだその事業は例えば建設事業等が継続しています。まず私はその事業をしっかりと着地させるということが一つです。 続きを読む


オヤジの遺志継ぎ、日朝国交正常化めざす

金丸信吾氏(故金丸信自民党副総裁秘書・ご子息)に聞く

「泥かぶる」政治家いでよ

1990年の3党共同宣言(日朝関係に関する日本の自由民主党、日本社会党、朝鮮労働党の共同宣言)は、「自主・平和・親善の理念にもとづき日朝両国間の関係を正常化し発展させることが両国国民の利益に合致し、新しいアジアと世界の平和と繁栄に寄与する」と宣言した。以後、30年近くたつが日朝関係は前進しないどころか敵対関係が深まっている。宣言の中心におられた金丸信自民党副総裁(当時)を秘書として支え、以後一貫して日朝関係前進のために奮闘されている金丸信吾さんにお話を伺った。文責・編集部

 板門店での米朝首脳会談は今までにない画期的なものでした。昨年6月のシンガポールでの首脳会談まで、米朝は一触即発の状態で大変危険な状況でした。それが米朝の首脳が何回もお互い顔を合わせることで、雰囲気は大きく変わりました。もちろんこれからにかかっていますが。 続きを読む


対抗軸を明確に 安倍政権打倒の国民的戦線の発展を

参議院議員選挙の結果について

『日本の進路』編集部

 第25回参院選が終わり、闘いの秋を迎える。安倍政権は難問山積である。財界・大企業のための対米従属政治はいっそう国を危うくし、国民大多数にさらなる苦難を押し付けて乗り切ろうとする。
 まずは参院選で安倍政権を追い詰めるため奮闘されたすべての皆さんにエールを送りたい。結果には悲喜こもごもでしょうが、選挙戦の中で安倍政治に対する有権者の激しい不満と怒りを実感されたことだけは確かであろう。その不満と怒りに直接に依拠することだけが前進の手掛かりである。 続きを読む


改定漁業法は根本的に間違っている

東京大学教授 鈴木 宣弘

最近の法改定は国家私物化の「総仕上げ」

規制改革、自由貿易の名目で、公共的・共助的なルールや組織を破壊し、日米オトモダチ企業に地域を食い物にさせる動きが止まらない。農業での最近の象徴的「事件」はH県Y市の農業特区である。突如、大企業が農地を買うことができるようになった。その企業はO社(M前会長)の関連会社である(民有林・国有林の「盗伐」合法化も木材チップのバイオマス発電を手掛けるO社への支援である)。そしてO社の社外取締役に就任しているのは、人材派遣大手会長T氏とLファームを展開したN氏である。政権と結びついた「利益相反」で地域を食い物にしている「常習犯」の、たいへん有能なMTNの3人だ。あまりにもわかりやすすぎる。 続きを読む