第22回全国地方議員交流研修会in横浜〜地方から政治を変える〜

第4分科会 女性の貧困 非正規労働、ケア労働から考える

 非正規公務員、ケア労働、女性・ひとり親の貧困、社会保障の確立をめぐって

 

 第4分科会は「女性の貧困 非正規労働、ケア労働から考える」をテーマに、福岡市議会議員森あやこさんと筑紫野市議会議員春口あかねさんが座長を務め討論が行われた。冒頭、森あやこ座長より、いま社会保障が本来果たすべきセーフティーネットの役割が果たされていない、この現状を地方から変えていくために、明日の厚労省に対する要請の内容をしっかり議論し、設立の提案を行う「社会保障の確立を求める自治体議員連盟」が果たす役割や行動につなげていこうとの訴えがなされた。

非正規公務員――「官製ワーキングプア」をなくす

 北海学園大学経済学部教授川村雅則さんの問題提起で始まった。非正規公務員問題では、会計年度任用職員を中心とする非正規公務員が全国で100万人を超える規模となっている。保育、学校給食、図書館、相談業務など、恒常的に必要な仕事が1年単位の任用によって担われているが、低賃金に加え、任用期間、再公募、雇い止め、昇給の打ち止めなど働く人の生活と雇用を不安定にしている実態が示された。
 特に会計年度任用職員の約4分の3が女性であり、保育士、看護師、図書館職員、相談員など女性が多い職種では、その割合がさらに高いこと。このため、非正規公務員問題は単なる雇用問題ではなく、女性の低賃金、ケア労働の社会的評価、ジェンダー不平等とも深く関係する問題であることが指摘された。

スポットワークとケア
労働――命を預かる仕事を不安定雇用にしない

 次に事例報告として「自治体が積極的に提携する介護現場のスポットワークの問題点」とのテーマで、介護福祉士・フリーライターの白崎朝子さんから介護・保育などの現場に広がるスポットワークについて事例報告が行われた。
 マッチングアプリを通じて面接や履歴書なしで短時間働く仕組みが広がっているが、介護現場では、十分な経験や利用者との関係性がないまま働くことによる安全面の問題が指摘された。実際に介護現場で事故が発生し、利用者が死亡した事例も報告された。障害児を対象とする放課後等デイサービスなどでも、発達障害や自閉症などの特性を理解し、継続的な関係を築くことが求められる仕事との適合性が課題となっていること。一方、介護労働者自身も低賃金と物価高に苦しみ、生活のためにスポットワークに頼らざるを得ない状況が生まれていること。人手不足を安価で不安定な労働力で埋めるのではなく、賃金と労働条件を改善し、専門性と継続性を保障することが必要であること。そのため、スポットワークの実態を調査し、性別や雇用形態を含めた統計を整備することも求められているとの提起がされた。

ひとり親・女性の貧困―「もっと働けばよい」
では解決しない

 次に、「働いても報われない 逃げても制度につながらない」と題し、春口あかねさんから事例報告された。ひとり親家庭では、子どもの送迎、病気への対応、家事などを一人で担いながら働かなければならず、現在の就労制度が「もう一人の大人」がいることを前提としていることが問題となっていること。さらに、収入が増えると児童扶養手当が減少し、税や保育料、学童保育などの負担が増えるため、「働く時間を増やしても生活が豊かにならない」という問題も指摘された。そのため、単に就業率を高めるのではなく、実際に可処分所得が増え、生活が改善しているかを指標として見る必要があることが強調された。
 子ども食堂についても、支援を必要とする家庭ほど利用につながりにくいという課題が示された。行政によるアウトリサーチ、食料・日用品の宅配、学校、民生委員、NPOなどとの連携を進め、家庭側から支援を求めなくても必要な支援が届く仕組みを整えることが重要であること。また、DV被害者や女性への支援について、相談、一時避難、生活再建まで切れ目なく支える体制の必要性が確認された。女性の健康、生理用品、性教育、妊娠・出産、不妊治療などについても自治体の取り組みを進める必要があることが提起された。
 分科会は次に東京都の中原純子さんから、次々に進む労働法のさまざまな改悪の実情について問題提起が行われ、そして春口あかね座長から「社会保障の確立を求める自治体議員連盟」の設立の提起がなされ質疑討論が行われた。

介護・保育・学校など公共サービスの担い手を守る

 討論の中で、介護保険制度については、制度開始から長期間が経過する中で保険料が上昇する一方、家族介護の負担が十分に軽減されていないとの意見が出された。今後の制度・条例改定では、保険料だけでなく、利用者負担、介護サービスの質、介護労働者の処遇などを含めて検討する必要があることが確認された。また、学校図書館司書、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、保育・子育て支援職員など、子どもや家庭を支える専門職の多くが会計年度任用職員や低い委託料によって支えられている実態も報告された。専門性と経験が必要な仕事を不安定雇用で担わせることは、働く人だけでなく公共サービスの質にも影響するため、安定した雇用と適切な処遇を確保することが必要であることが確認された。

公契約条例と自治体の責任

 自治体が直接雇用する非正規公務員だけでなく、民間企業に委託・発注する公共サービスで働く人の労働条件についても、自治体議員がチェックする必要性が提起された。自治体は発注者として、仕様書、予定価格、人件費の積算基準などを確認できる。低い賃金を前提に発注すれば、委託先でも低賃金・不安定雇用が再生産される。その歯止めとして、公契約条例の制定・充実が重要であること。公共サービスに関わる労働者の賃金・労働条件を適正化し、公共サービスの質を守ることが自治体の責任として求められることが確認された。

社会保障の確立に向けて――地方から制度を変える

 働くことが困難な時には社会保障が生活を支える仕組みを強化することが必要である。そのためには、自治体議員が当事者、労働組合、研究者、弁護士、福祉関係者、市民団体などと連携し、実態を調査するとともに、優れた取り組みを自治体間で共有し、議会質問や条例制定につなげていくことが重要であること。また、非正規公務員、ケア労働、ひとり親・女性の貧困、公共サービス、公契約を個別の問題として切り離すのではなく、社会保障と労働政策を一体的に捉えることの重要性が第4分科会として共有された。
 今回分科会では初めて女性の貧困問題が取り上げられ、その問題も含めて各分野で質疑討論が活発に行われた。共通して指摘されたことは、雇用や社会保障を家族や個人の自己責任に委ねるのではなく、今日的な状況のもとで、国と自治体が公的責任を果たし、国民が安心して暮らし続けられる制度の運用、制度の改正と創設が極めて重要であること。そしてその実現のためには、行動が求められているとの方向が第4分科会参加者一同で共有された。