食料安全保障を推進する自治体議員連盟

『食料安全保障を推進する自治体議員連盟』
立ち上げに向けて

兵庫県宍粟市議会議員 今井 和夫

 8月の長崎での全国地方議員交流研修会は延期になりましたが、実はその時に、第1分科会(農業部会)において、次ページの『食料安全保障を推進する自治体議員連盟』設立の提案をさせてもらおうと、第1分科会の世話役の間で話をしていました。
 繰り返して私が説明するまでもないと思いますが、鈴木宣弘先生が孤軍奮闘、あちこちで体を壊してでも講演されています。今、日本は食料が危ない。流通が止まれば7000万人が飢え死にする。そんな国は日本だけ。


 だけど、政府がこのたびやろうとしている農業基本法の改正では、食料自給の確立はもう求めないがごとく、同盟国、つまりアメリカほかカナダ、オーストラリアを含めて食料自給を考えればよいではないか……。そんな、とんでもない、聞いたこともないような理論が出てきて、いよいよ日本の農業をつぶそうとしているかのごとくです。
 言うまでもなく、それはすなわち、農村の荒廃、国土荒廃に直結します。そんななかで地方は「ブランド化」とか、できもしない大規模化とかを強要され、「それができないものが悪い」がごとくの農政をされてきました。
 いよいよ国としての本来の農政を取り戻そうではありませんか。
 すなわち、基幹的な農業生産において、欧米では当たり前にされている価格補償、所得補償を、国民の食料安全保障のために要求していきましょう。それはすなわち、地方・農村の維持・持続、国土保全に直結します。(それなしでは農村の維持・持続はできません)
 そして、その政策を国民と政府の義務とする「(仮称)食料安全保障推進法」をつくろうではありませんか。
 長崎での交流会当日に提案しようとしていました「議員連盟設立趣意書」を紹介しますので、ぜひご一読ください。そして、党派を超え、都市・地方を超え、国民すべての食料安全保障のために、ぜひとも皆さん全員にご賛同いただき、全員でこの議員連盟を立ち上げていこうではありませんか。
 とりあえずは、地方議員からスタートし、賛同者をどんどん増やし、そして、議員の枠を超え国民運動となっていくように、みんなで頑張ろうではありませんか。
 これは、私見ですが、これが本当に力を持ってきた時には、必ずアメリカとぶつかります。経団連等とぶつかります。戦後今までのアメリカ従属、農業・地方切り捨て重工業偏重という日本の路線の大転換につながるものです。
 ふざけた「農業基本法」をつくろうとしている今までの日本を牽引してきた者たちを追い払い、すべてのことにつながって日本を変えていく突破口になっていくものだと、私は思っています。
 食料を守る、安全な食料を国内で生産していく、ということは、それだけの力を持っているものと思います。
 その意味で、ぜひとも皆さん、ご賛同いただき、共に立ち上がろうではありませんか。
 延期になった10月末の長崎での交流会で正式な立ち上げをさせていただきたいと思いますが、それまでに準備会等もできればと思います。
 関心のある方、ぜひともお問い合わせください。また、建設的なご意見のある方、ぜひともご意見をお寄せください。

 問い合わせ先 北口雄幸・北海道議/西聖一・熊本県議/今井和夫・兵庫県宍粟市議/広範な国民連合事務局

『食料安全保障を推進する自治体議員連盟』設立趣意書(案)

 日本の食と農の現状は危機的状況と言わざるを得ません。
 カロリーベース食料自給率は37%と先進国と言われる国の中で飛び抜けて低く、さらに昨年のウクライナ戦争以降、おカネを出しても思うように食料が手に入らない状況になっています。輸入食料、肥料、飼料、燃料が高騰し、多くの食品や資源を輸入に依存しているわが国は危機的状況にあります。
 それはすなわち、日本の農業・水産業の衰退に直結しています。耕作放棄地は年々増加し、このまま進むと農村は維持できません。特に、日本の国土の7割を占める中山間地域と言われるところは、この先数十年でほぼすべての農地が荒廃し、無人地帯と化してしまうと言っても過言ではない状況です。
 このような国が成り立つはずがありません。日本という国は、本来、四季があり温暖で雨がよく降り、美味しい農作物がよくできる世界でも恵まれたところです。私たちの先祖はその自然の恩恵を最大限に受け止め、大地を耕し美しい農村を作ってきました。それを私たちの世代がまさに今、壊そうとしているのです。
 なぜそうなるのでしょうか。
 それは、第2次世界大戦後、日本は工業立国を確立するために、つまり、工業製品を輸出するために農作物を輸入品に替えてきたこと。そして、アメリカが余剰農作物の輸出先として日本をとらえ、また、日本人の食を握ることで事実上、日本を支配し続けようとしてきたことによるのではないでしょうか。
 その結果、日本ではほとんど報道されませんが、欧米先進国では当たり前に行われている国民の食料を守るための農家への直接支払制度、つまり、生産価格と販売価格との差額を国が補助金で補塡する等、国を挙げての農業食料保護政策が非常に不十分な状態です。EU諸国ではなんと農家所得の8割前後が国からの直接支払いといいます。そのように、国として農業生産者をしっかり守り、国民の食料を確保する政策が行われているから欧米先進国の自給率は高く、農地は美しく保たれているのです。
 逆に日本では、「農家は補助金を多くもらっているから競争力がない」などという間違った世論がつくられてきましたが真実は真逆なのです。
 日本においても、すべての農地・地域が生き残るには、販売価格とその地域ごとの生産価格との差額を補助金で補償し、どの地域でも安心して農業を若者の仕事とすることができる「食料安全保障基礎支払い制度」をつくっていくしかないのではないでしょうか。おそらく、3~4兆円あればできるでしょう。それで日本の農地はすべて守られ、農村は維持され、国民の食料の多くは確保されるのです。これこそが国防であり、何よりの安全保障ではないでしょうか。
 ともすれば、「食料自給」という独立国としての当然の権利であり義務の行使を妨げられてきた今までの農政を根本的に転換すべきときではないでしょうか。
 私たちはこのことを実現するために、ここに『食料安全保障を推進する自治体議員連盟』を設立したいと思います。
 党派を超え、地域を越えて、都市の議員も地方の議員も、ともに手をつなぎ、農地の維持、国民の食料確保のために声を上げようではないですか。
 農業予算の大幅な増額を要求し、基幹的となる農業分野において、それが若者の仕事となるように、地域の条件ごとの、国による「食料安全保障基礎支払い制度」の確立を要求していこうではないですか。そして、それらを国民と政府の義務とする『(仮称)食料安全保障推進法』を作ろうではないですか。
 農地は一度荒れてしまえば、簡単には元に戻せません。農地だけでなく作り手も一度消えてしまえば簡単にはできません。今なら、まだなんとか間に合います。先祖が大いなる苦労の中で築き上げてきたこの農地を守っていける農政を実現していきましょう。子どもたち、孫たちが、子々孫々、安心して日本に、郷土に住んでいけるように、手をつなぎ声を上げようではありませんか。

農業・食料情勢資料

■食料自給率、カロリーベース13年連続40%を下回る

 農水省は8月7日、2022年度の食料自給率を公表した。カロリーベースの食料自給率は37・64%で前年の38・01%から0・37%低下、40%を下回るのは13年連続。
 小麦は作付面積は3・3%増えたものの、豊作だった前年に比べ単収が12・4%減となったことや、サバ類やカツオなど魚介類の生産量が減少した。その一方で原料の多くを輸入に頼る油脂類の消費が価格上昇の影響で減少、自給率のプラス要因となった。そのため整数では38%と前年と同水準となった。このうち米は輸入量が5・2%減となり、自給率のプラス要因となった。
 ちなみに20年の諸外国の自給率は、カナダ221%、フランス117%、米国115%、ドイツ94%、イタリア58%。
 1959年に就任したフランスのド・ゴール大統領は「自国の食料を外国に頼る国家や民族は、独立国家とはいわない」と発言、78%だった自給率を10年で128%まで引き上げた。他の主要国も食料自給率を向上させているが、低下し続けているのは日本だけ。
 世界人口の増加、気候変動、日本の経済力の低下、さらにウクライナ戦争など、世界の食料危機は高まり、食料を輸入に依存する時代は終わった。大転換が必要だ。にもかかわらず「食料・農業・農村基本法」見直しの「中間取りまとめ」では、食料自給率の向上とそのための施策(真の食料安全保障)が欠落している。

■飼料高騰、酪農家の減少加速

 農水省が7月7日公表の畜産統計(今年2月1日現在)によると、全国の酪農家の戸数は1万2600戸で、前年より700戸(5・3%)減少した。高齢化などに加え飼料高騰などにより離農が加速した。
 乳用牛の飼養頭数は135万6
千頭、前年比で1万5千頭(1・1%)減少した。
 酪農危機を受け、1キロ当たりの生乳価格が昨年11月に10円、今年8月に10円値上げされた。しかし、飼料価格は高止まり状態が続いており、酪農家の経営は依然として深刻な状態が続いている。
 また肥料価格の上昇も続いており、燃料費の高騰も含め、国内農業全体の深刻さは続く。

■オーガニック給食を全国展開へ――超党派の議員連盟が発足

 6月15日、超党派の国会議員有志がオーガニック(有機)給食を全国に実現する議員連盟を立ち上げた。全国の小・中学校でオーガニック給食を広め、併せて有機農業を全国に展開して、子どもの健康に配慮した食材を提供しようというもので、入会議員30人超で発足した。共同代表に坂本哲志氏(衆)、川田龍平氏(参)が就任した。
 みどりの食料システム戦略に基づき、有機農業産地づくりが進んでいる。設立総会では与野党の議員のほか、全国オーガニック協議会の役員らが出席。同協議会代表理事で、小・中学校の給食で100%オーガニック化を実現している千葉県いすみ市の太田洋市長が、オーガニック米を学校給食用に1俵(60キロ)を2万円で買い取り、差額を市で補塡していることを報告。

・就任した議連の役員
▽顧問=塩谷立(衆・自民)、長妻昭(衆・立憲)▽共同代表=坂本哲志(衆・自民)、川田龍平(参・立憲)▽副代表=宮下一郎(衆・自民)、稲津久(衆・公明)、金子恵美(衆・立憲)、池端浩太朗(衆・維新)、舟山康江(参・国民)、田村貴昭(衆・共産)、たがや亮(衆・れいわ)