第22回全国地方議員交流研修会in横浜〜地方から政治を変える〜

第5分科会 エネルギーの地域自給をめざして

 ~脱炭素/脱原発/地域自給の実践~

松戸市議 岡本ゆうこ

 

 第5分科会では、「エネルギーの地域自給をめざして〜脱炭素・脱原発・地域自給の実践〜」をテーマに、会場の参加者の皆さまとともに、前半の原発事故の検証から、後半の地域での具体的実践、そして最新の地域課題に至るまで、極めて濃密で熱い議論を行いました。以下、その成果をご報告申し上げます。

原発事故から15年の現実

 前半は、福島原発事故から15年目の現実と第7次エネルギー基本計画の問題点について、福島県議会議員の古市三久さんよりご報告をいただきました。
 事故から15年が経過しようとしている今なお「原子力緊急事態宣言」は解除されておらず、深刻な人口減少や避難者の乖離、破綻したデブリ回収など、原発事故被害は現在進行形です。
 古市県議からは、「無理なデブリ取り出しではなく、100年単位の長期監視・保管へ舵を切るべきだ」との提起がなされました。
 続く質疑・討論では、非常に切実で本質的な議論が展開されました。
 ①健康被害と初期被ばく対策の、いわゆる予防原則についてです。福島県内で400人を超える小児甲状腺がん等が確認されながらも「放射線影響とは考えにくい」と整理されている現状に対し、「情報開示と住民の納得が不十分である」との指摘がなされました。
 また、安定ヨウ素剤の事前配布や速やかな指示など、「安全宣言を優先するのではなく予防原則に立った防災体制こそが不可欠である」との共通認識が示されました。
 ②除染土の県外最終処分と復興再生土への懸念です。
 中間貯蔵施設の除去土壌を、全国の公共工事等で再利用させようとする国の方針に対し、「放射性物質は『閉じ込め・集中管理』が原則であり、全国拡散ではなく排出事業者の敷地等で長期管理すべきだ」との厳しい指摘などがありました。
 ③なぜ政府は「原発回帰」へ舵を切るのか?についてです。
 参加議員からの疑問に対し、経済・化石燃料輸入への焦燥感や、大手電力・重工メーカー・経産省等の一定の構造的な結びつきが存在している可能性が今回の議論の中で浮かび上がってきました。
 さらに、再エネの系統接続申請容量の約7割が接続拒否・制御されている現実から、「電気の供給が不足しているのではなく、送電網の優先制度や政策の振り向け先がゆがんでいる」こと等の意見が出ました。

飯田市の自然エネルギー地域自給

 

菅沼利和さん

「おひさま進歩エネルギー」の報告
 後半は、長野県飯田市「おひさま進歩エネルギー」の実践事例として、おひさま進歩エネルギー㈱の菅沼利和代表より、20年以上にわたる市民・自治体主導の地域エネルギー自給の先進モデルが報告されました。
 主な事例報告として、まず、市民出資と「おひさま0円システム」についてです。
 市民出資や地域金融機関と連携した「メガさんぽおひさま発電所」や、初期費用0円で太陽光を設置し10年目に無償譲渡するモデルにより、地域のお金とエネルギーを循環させており、防災センターへの非常用電源確保や、公立中学校で「生徒会選挙の公約が大人や行政を動かして校舎へのパネル設置を実現させた」という感動的な教育実践が紹介されました。
 次に、地域環境権条例と人材育成についてです。
 売電収益1%の地域還元、全国初の「地域環境権」条例の制定、専門人材を育てる「飯田自然エネルギー大学」など、地域が主体となる制度基盤が示されました。
 後半の質疑応答でも、現場を見てきている参加議員たちから、極めて実践的な提起がなされました。
 ①「日照の少ない地域での蓄電所」の質問に対し、菅沼代表より「発電出力の経済性や調整力としてのガス火力との比較、原発自体が持つ定期点検や不測の停止という大きな変動リスク」が指摘されました。
 また、ペロブスカイト太陽電池の実用化・供給量にはまだ時間がかかる見通しも示されました。
 ②自治体における「計画作成」と人材不足の壁については、小規模自治体では担当者の兼務で多忙を極め、計画がコンサル頼みや形骸化になりがちである現実に対し、中間支援組織の活用や伴走型支援の必要性が共有されました。
 ③データセンターや再エネ事業等に対する「条例整備」の急務についてです。小田原市などの事例とした話があり、参加議員からは、莫大な電力を消費するデータセンターや大型再エネ事業、各種施設の進出に対し、自治体として建築基準法任せにせず、住民への事前説明会を義務付けるなどの「迷惑防止条例」や「生活環境配慮条例」を独自整備することの重要性が急務であるとの意見がありました。

具体策と希望が
凝縮された分科会に

 最後に、共同座長を務めた石川県志賀町議会の堂下健一議員の総括も踏まえ、第5分科会から以下のまとめを提示いたしました。
 ①エネルギーは「地域の総有財産」であるということ
 大手電力依存から脱却し、農業用水路での小水力発電など地域資源を市民の手で取り戻すことが、地域経済の循環と防災力向上に直結する。
 ②原発再稼働の責任を地方に押し付けさせないということ
 原発事故の記憶風化が現実にあるが、しかし、安易な再稼働に対し、住民の命と地域の未来を守る責任を自治体・議会が毅然と果たす必要がある。
 ③適切な規制条例の整備と地域自給の推進について
 野放しを防ぐ環境権・手続条例の整備と、市民出資・学校教育と結びついた地域自給の推進を、両輪で進めることが不可欠である。
 全国の自治体で直ちに活用できる具体策と希望が凝縮された第5分科会となりました。
 この成果をそれぞれの地域へ持ち帰り、エネルギー自給の輪を広げていくことを決意し、報告といたします。

 座長:堂下健一(石川県志賀町議)   
 座長:岡本ゆうこ(千葉県松戸市議)
 サポーター:井上みか子・前鎌倉市議

 分科会の最終討論では、全国の自治体議員が当事者や関係団体、国民と連携し、政府への要請、調査研究、政策提言を進める「社会保障の確立を求める自治体議員連盟」を設立し、社会保障政策の転換をめざすことが確認された。