国民生活危機突破!
政府や自治体への要求と闘いを!
全国農団労 大谷 篤史

米国・イスラエルによるイラン攻撃から4カ月が経過し、イラン・米国政府間で戦闘終結協議が始まったがどうなるか。しかも、猶予期間は60日だ。
原油やナフサの供給不足・価格高騰で、各国国民生活への影響は日に日に深刻になってきている。
実際、原油輸入量は激減している。4月は448万キロリットル(前年同月比63・7%減)、5月も57・3%減となっている。価格は4月、1キロリットル当たり10万1400円(前年同月比37・9%高)、5月は67・2%と大幅上昇傾向である。
ナフサの輸入量は114万キロリットルで前年同月比47%の半減である。それも大半を占める中東からは79・1%減となり、他地域からかき集めたものだ。政府は「ナフサの代替調達が従来の85%水準まで回復」と言っているが実際は異なるのだ。供給不足が現状だ。
6月15日にイランと米国との間で行われてきた「戦争終結交渉についての了解覚書」がまとまったものの、協議の行方は分からない。協議が実施されても、合意はまったく不透明な状況だ。たとえ合意に至ったとしても、イランの石油施設に被害が出ていることや、機雷が設置されている現状を踏まえれば、原油やナフサの不足がすぐに解消するわけではないことは明らかだ。
今の原油やナフサの供給不足・価格高騰が長期化することは避けられない状況である。
広がる食品価格の値上げ
この原油高の影響を受けて、食品メーカーは商品価格の値上げを相次いで発表しており、値上げの動きは広がっている。帝国データバンクの調査によると、6月に値上げされる飲食料品は合計1078品目にのぼり、5月(84品目)と比べ大幅に増加している。7月はさらに値上げラッシュと目される。5年連続で年間1万品目を突破するとの見通しが示されているがそれにとどまらないだろう。
国民生活のさらなる悪化は避けられない事態である。
こうした飲食料品の値上げ要因は、「原材料高」が97・7%、続いて「物流費」が74・1%、「包装・資材」が73・7%となっている。この資材値上がりについて例えば食品容器大手のエフピコが6月1日出荷分から全てのトレー製品を20%超値上げした。輸入原材料価格高騰は、製造企業にとっては調達コスト増となり、さらなる食料品価格の値上がりにつながりかねない。
そうした調達コスト増に対し、イトーヨーカ堂はプラスチック製の蓋をラップ包装に変更するなど容器の見直し、ファミリーマートも包装の簡素化などである程度の価格抑制を図ろうとしている。しかし、いずれは企業努力では何ともならない事態となり、価格転嫁することになりかねない。
特に、大手に比べ経営体力の劣る中小スーパーでは、食品トレーなど包装資材の高騰による価格転嫁に大手より先に踏み切らざるを得なくなる可能性は高い。加えて何よりも、価格競争で劣位に立たされる。倒産という最悪の結果を招くことになりかねない。すでに5月の倒産件数が他の産業企業では減少にもかかわらず小売業は前年同月比14・6%増の94件と増加である。
これまでも食料品価格の値上がりで困難な国民生活だが、食料品のさらなる値上がりは避けられない状況だ。国民生活危機は一段と進む。
食料品供給が滞る懸念も拡大
食料品の川下に限らず川上の農業においても重大な影響が避けられない。
全農(全国農業協同組合連合会)は2026年度秋肥(6~10月)の肥料価格について、中東情勢の長期化に伴う影響拡大を見通すことが困難なことを理由に値上げを発表した。影響は肥料だけにとどまらない。
例えば野菜の個包装用の袋の価格が高騰し、入手困難の事態も起きている。価格転嫁が難しく農家経営を圧迫するだけでなく、入手困難で野菜を出荷できないケースが相次いでいる。この個包装用の袋は、袋の中の湿気による水滴を防ぎ鮮度を保つため、不可欠な資材である。こうした事態を受け農水省は「農産品を適切に包装できなければ、賞味期限や輸送距離にも影響する。さらに、資材の値上げ分は、価格にも反映される」と、こうした包装資材不足の事態は未経験であり、対応に追われていることを明らかにしている。
その他にも、ナフサ由来である米袋の値上げが相次いでいる。これに加え、燃料高による流通・保管コストも上昇している。目下、令和のコメ騒動は一服し、コメ価格は落ち着いているものの、収穫時の乾燥作業など燃料高による営農コスト上昇分により、思ったより新米価格が下がらない可能性があることをコメ流通業界関係者から懸念が示されている。
こうしたさまざまなコスト増に対し、農家が負担に耐えられるかが大問題だ。実際に「作付面積を減らすことを検討した」農家が出始めている。農業総合研究所は「農産物はあるのに出荷できない、あるいは作ること自体を諦めざるを得ない」事態に陥っていることを指摘している。さらに、こうした生産縮小の動きが拡大することになれば、農産物の市場価格が押し上げられるだけでなく、来年以降の農作物供給にも影響する。
今夏はエルニーニョ現象の発生が予想されており、発生した場合、台風の到来など天候的な不安要因が増すことになる。豪雨災害など直接的な被害が想定されるが、農産物に関しては収量減少や品質低下につながりかねない。
コメに関して言えば、昨年の備蓄米放出により在庫は96万トンから32万トンに減少している。不作により今年度の収穫量が落ち込むことになれば、深刻な食料不足を招きかねない。そうなれば農作物のさらなる価格高騰要因になる。
事実上、生産調整が延長されている現在の農政では、こうした事態に対処しきれないことは明らかだ。
生活防衛の実効策が
求められる
原油不足による食料品価格の値上げはまだ始まったばかりに過ぎない。イラン・米の交渉がどうなろうが、影響は世界経済にとって根本的で、少なくとも長期化は避けられない。農畜産物の供給不足に対する懸念も生じている。化石燃料などに依存する経済からの根本的転換を図る必要がある。
一方で、こうした状況を改善するために当面、原油などの資源を確保し、これ以上悪影響が拡大することを食い止めなければならない。政府は物価高対策として電気・ガス代支援や、ガソリン等の暫定税率廃止を実施しているが、供給不足への対策ではなくその場しのぎの人気取りに過ぎない。
こうした政治に対する不満や明日の生活への不安は国民の間に拡大している。とりわけ若者や女性などに広がる全国でのイラン戦争反対の動きの広がりにも見て取れる。それだけ国民生活が深刻な事態に陥っていることの表れでもある。
共同通信の6月世論調査結果では、内閣支持率が前回5月から5・5ポイント減少。若年層(30代以下)の支持が13・5ポイント、女性も9・2ポイントの大幅下落である。
国民生活の危機の一段の深刻化と長期化が想定される中、こうした国民の生活への危機感に政府は応える責任がある。こうした国民の声を拡大し結集し、政府や自治体に対応を迫っていく必要がある。
