侵略と植民地支配の歴史を総括し
「日中韓連携」アジアに生きる日本へ
日本敗戦80年の8月15日が目前となった。
トランプのアメリカは、覇権維持をねらって中国抑え込みに躍起だが「対米依存」の日本を突き放してもいる。ところが石破政権は「交渉」に明け暮れる。
わが国は、「対米依存脱却」を明確にしない限り譲歩を迫られるだけだ。
近隣諸国、中国、韓国などと共に「アジアに平和に生きる」道を選択する時だ。そのためには日本の過去の侵略、植民地支配の歴史の清算が不可欠である。
韓国李新大統領はチャンス
6月4日、韓国で李在明新大統領が就任した。
韓国世論調査では、李新大統領が真っ先に解決すべき国政課題として「経済回復と国民生活の安定」が最多である。経済一つをとっても、尹錫悦前政権とは違う方向が求められている。
李大統領は、「国益極大化」を唱え、「実用外交」を提起する。とくに、「日本は重要な協力パートナー」と言い、中ロとの関係発展にも意欲的で、対北朝鮮でも「対話を通じて平和を構築する」と言う。こうした動きをトランプ政権は牽制している。
この韓国の変化は、近隣地域の平和と安全保障でも経済面でも大きく良い変化をもたらすであろう。
李大統領は中国習近平主席にも10日、「韓中両国の互恵・平等精神のもと、経済、安全保障、文化、人的交流など多方面で活発な交流と協力を進めていくことを望んでいる」と伝えた。習氏は「両国が交流を強化し友好的な隣国への道を堅持し、世界と地域の産業、サプライチェーンを共同で守る中韓の戦略的協力パートナーシップがさらなる利益を両国にもたらし、混沌とした地域・国際情勢にさらなる確実性を与える」などと応えたという。
日中韓3国関係の安定と発展はわが国の平和と発展の条件である。
歴史を忘れてはならない
だが、容易でない問題がある。
韓国国民は日本の過去の植民地支配を許していない。最近の韓国世論調査結果でもそれは明瞭に出ていた。日本はこの植民地支配とそれに関連した諸問題を反省謝罪し、必要な賠償や補償もして、きちんと清算できていない。
就任式から初閣議など一連の行事に臨んだ李大統領の左胸には日本統治下の抗日独立運動の象徴とされる「津寛寺太極旗」を模したバッジがあった。これは国民の意思と言ってよいだろう。
いわゆる従軍慰安婦や強制徴用・連行などの問題、学校教科書での韓国併合と植民地支配の歴史問題、しかも60年前の日韓国交正常化時に過去の併合・植民地支配の違法性を認めず反省謝罪もせず「もはや無効」と切って捨てた基本条約の問題、有償無償合わせても8億ドルなどという少なくとも35年間に及ぶ植民地支配の賠償を「経済協力」でごまかし、しかも過去の問題が「完全かつ最終的に解決された」などと確認した「請求権協定」など、両国関係には見直すべき課題がまだ山積みである。
しかもこの日韓条約は、韓国が「朝鮮にある唯一合法政府」と朝鮮民主主義人民共和国それ自身の存在すら否定するといった根本的問題をもっている。植民地支配の反省と謝罪、賠償とともに国交正常化を急がなくてはならない。
日韓関係、日朝関係の今後はひとえに日本政府の対応にかかっている。その核心は過去の植民地支配の完全な清算にある。
台湾植民地化に始まる日中関係にも同様の問題が残る。国民も80年に際して改めて歴史を直視しなくてはならない。
3国連携だけが
日本の生きる道
日中韓3国合わせると世界経済(GDP)の約25%、総貿易量の約20%を占める。日本も韓国も中国が最大の貿易相手国であり、日本と韓国の貿易関係も深い。
さらに今日、3国は少子高齢化などの共通の内政課題を抱え、気候変動危機や感染症危機への共同対処も迫られている。
そもそも3国は数千年前から隣国として付き合い発展してきた歴史がある。今日も文化やスポーツなど広範な方面で交流は活発だ。
不幸な歴史はごく短期間で、しかも、いずれも日本が侵略者として惨禍を招いた。
カギは3国の政治的関係の安定だ。
最近3月末の3国経済貿易大臣会合は自由貿易協定(FTA)をめざした交渉の加速化を確認した。3国首脳会談も早急に開催し、関係強化で東アジアの平和と安定、発展を確認すべきである。
世界の世論も急速に変化している。中国の好感度が2022年の調査開始から初めて、25年1月にトランプが大統領に就任して以降、米国を上回った(世界41カ国を対象にした米調査会社の好感度調査)。
日中韓連携の発展は平和の傾向を促進し、世界の希望となるに違いない。