日米地位協定の抜本改定をめざして 2

『日米地位協定とは何か』講演学習会(横浜市、2月22日)

国家主権を持たないことの危うさを知る

『日米地位協定とは何か』講演学習会

 「日米地位協定とは何か」第二弾、伊勢埼賢治さん講師による講演学習会が2月22日、横浜市のかながわ労働プラザ(Lプラザ)で200人を超える参加で熱気のうちに開催された。第一弾は昨年6月8日、布施祐仁さんの講演で、この時は170人(オンラインも含む)の参加だった。
 国会議員や地方議員、弁護士や大学名誉教授や市民運動の方、在日4世の朝鮮青年や大学生、国民連合・神奈川の世話人などなど二十数人の実行委員会主催で延べ5回の相談会を行って準備してきた。多くの人たちの間で知られていなかった朝鮮国連軍とその地位協定についての講演の内容、まだまだ少ないが十数人の青年・学生の参加があったこと、参加者の半数以上が女性だったこと、学者や市民運動の活動家など社会的影響力ある人の参加があったことなどが、今回の特徴と言える。
 そして、国家として主権を持っていないことの危うさ、従属国家の実態を知ることができた。

日本は大国に挟まれた「緩衝国家」

 伊勢埼さんは、自分はもともと理科系の人間で歴史は嫌いなので70年、80年前のことは話しませんが、今ある朝鮮国連軍地位協定と日米地位協定、日本ジブチ地位協定の三つについて話しますと言われて講演を始めた。
 日本が大国に挟まれた「緩衝国家」だという自覚を呼びかけた。大国は、自国への激突を避けるためにクッションを置き、これに「代理戦争」を戦わせる。米国は、「緩衝国家」ウクライナに「代理戦争」を戦わせ、ロシアの弱体化に成功した。東アジアでは「北朝鮮が挑発している」ように見えるが、より強大な「日米韓」も毎年軍事演習を繰り返して挑発している。日本や韓国も「代理戦争」を戦わされる可能性のある「緩衝国家」である。
 続けて朝鮮国連軍地位協定を紹介した。
 1950年、朝鮮国連軍が主導する戦争が始まった。すると米軍を中心とする連合国軍の占領下にあった日本はその戦争に参加する、しないの決定権はなく自動的に参戦することになった。
 朝鮮戦争はいまも停戦中に過ぎない。わが国には朝鮮国連軍後方司令部が横田基地に置かれ、朝鮮国連軍地位協定を結んでいる。朝鮮国連軍は在日米軍の施設・区域を日本政府の「同意」の上で使用できる。わが国は米軍に基地・区域の提供義務を負い、日米地位協定で「日本国内の施設及び区域の使用」を許されている。
 万が一、「朝鮮有事」になり米軍が日本から出撃すると、わが国は当然にも相手国の攻撃対象となる。
 日本はジブチ共和国に自衛隊基地をもち、地位協定を結んでいる。その協定では、自衛隊員が罪を犯した場合、ジブチ側は裁けない。しかし、日本には軍法がなく、刑法は「国外犯」を管轄外としている。だから、日本でも裁けない。これは「日米地位協定」よりもっと不平等だと指摘。日本はすでに加害者なのだと。
 詳しい内容は、参加者の一人が自分のブログで発表されたコミックエッセイのブログを参照してください(すごく良くできています! QRコードで全体が)。

1カ月たっても
感動の感想が次々

 また会合では昨年の沖縄県民大会(12月22日)で発言した崎浜空音さん(慶応大学生)に特別報告してもらった。「沖縄で起きている性暴力、PFAS等の問題は、住んでいる人の命・生活の問題、1秒でも早く変わってほしいと思っている。でも本土にはなかなか届かない、届いても大変ねとどこか人ごとになっている。本土にいる私たちにもできることがきっとあるはず。地位協定を変えるのは政治家かもしれないが、世論を作り与党・野党を監視するのは、私たち」などと発言された。この報告に、「共感とともに希望を持った、子どもたちや若者に崎浜さんのこの話を知ってもらいたい」「沖縄の置かれている苦しみを、私たちはもっと自分事としてとらえなければ…崎浜さんのお話に賛同します」などの感想が寄せられた。
 そのほか参加者からは、「日米地位協定という課題で200人も集まるとはびっくり」「朝鮮国連軍のことは知らなかった。さらに朝鮮国連軍との地位協定を結んでいるなんて」「ジブチの地位協定は初めて知ったが、日本も他国に対してこのようなひどい協定を押しつけていたとは!」「質問の時間をもっとつくってほしかった」「なぜもっと大きな会場を準備しなかったのか」など、たくさんの感想が寄せられている。
 催しが終わって1カ月になるが、グループラインや周辺でさまざまなやり取りが行われている。私たちが関わったことのある数多くの催しで1カ月後もこれほどに好意的な意見や感想が出る取り組みはそんなに経験したことがない。
 ある憲法学者は、「最近の法律家6団体の会議で前半は地位協定の勉強会だった。私は、伊勢埼さんの講演に刺激を受けて国連軍地位協定と日本ジブチ地位協定を加えて地位協定のことについて報告した。この法律家6団体で地位協定について検討するのは今回が初めて……」とFacebookに書かれていた。

文字通りの県民運動を
めざす

 総括会議(反省会)では、国会議員をはじめ実行委員の15人もが集まった。「歴代首相で日米地位協定の改定を言っているのは石破首相だけで、こんなチャンスまたとない」「トランプ大統領も日米安保条約の不平等さを主張しているから、日本からも日米地位協定の不平等を訴える必要がある」「日米地位協定問題で予想を超える反響だった」などの感想が出された。
 その上で、①県下のすべての自治体議会で日米地位協定抜本改定の意見書提出の採択を求めよう、②昨年とは違った形で渉外知事会の会長である黒岩県知事への要請行動を行おう、③第三弾の学習する機会を準備しようなどが出され、県民世論を盛り上げようと意気軒高な話し合いができた。
 この講演学習会が大成功しその後も反響が続いていることは、思想信条や支持政党の違う20人もの人たちが集まって、意見の違いを認め合って話し合って統一の行動ができた結果だと思う。
 地位協定抜本改定へ、全県に呼びかけ自民党から共産党まで文字通り超党派の広範な県民運動をつくっていく。

(広範な国民連合・神奈川事務局)

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