沖縄・中国の青年交流発展を確認
「沖縄平和友好訪中団」(団長・伊波洋一参議院議員、23年12月25日~30日。本誌2月号参照)の報告会が2月12日、那覇市・沖縄青年会館で開催された。
伊波団長は訪中団の意義について、「『再び戦場になる』という不安が沖縄を覆っている。そのなかで、中国の方々にこの状況と、沖縄の人びとは平和を望んでいるということをしっかり伝えたいという思いで訪中した」と述べた。さらに、中国人民抗日戦争記念館(盧溝橋)で、沖縄でも「平和の礎」が建設されたことを中国側に伝えたと強調した。また、中日友好協会で程永華副会長(元駐日大使)が、「すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」との日中平和友好条約に触れながら、「中国が日本に武力を行使することはない」と繰り返し発言したことも紹介した。
中国国際交流協会の劉洪才副会長との話のなかで、「台湾問題は中国の内政問題。『一つの中国』原則は日本もアメリカ、国連も認めている」と強調されたことを紹介、「一つの中国」原則に同意するとともに、「日中がさまざまな問題を解決し、早期に正常軌道に戻ることを願う」と応じたと述べた。最後に伊波団長は、「沖縄と中国との600年もの交流の悠久の歴史を実感した。これからも幅広く中国の方々と交流しなければならない」と報告を締めくくった。
中国の人びとの抗日戦争への思いを共有することが大事との認識に
次に訪中した団員から報告が行われた。
花谷史郎・石垣市議は冒頭、島の自衛隊配備の現状と反対運動を通じて市議になったことなどを自己紹介するとともに、「次のステージとして日本と中国を戦争させようというアメリカの作戦を止めることが必要。そのために中国側と対話して、お互いのさまざまな誤解を石垣、沖縄、そして日本全国で解くことが戦争という最悪の状況を止めることにつながる」と述べ、今回の訪中への思いを語った。
そして、かつて石垣に中国人が流れ着き、住民が助けるなど、中国との交流関係が長らく続いているとともに、今日、中国との関係発展が沖縄、石垣における新たなビジネスを生み出す可能性を強く感じたと述べた。
また、抗日戦争記念館を訪問したことに触れ、「〝抗日戦争〟という言葉を知らなかった。中国は、そこを歴史の起点として捉えている。中国人が日本の侵略に対抗して、一丸となって闘ったこと、そして、日本に打ち勝って、今の発展があるという思いを感じた」「(記念館は)日本との平和と友好を謳い、『侵略したのは軍部であって、人民同士は友好を深めなければいけない』という平和のメッセージが盛りだくさんだった」「日本、中国とで違うことも互いに理解することで、ようやく歴史の共有の一歩が踏み出せる」と述べた。
沖縄国際大学法政研究所研究助手の神谷めぐみさんは、華語シンクタンクとのシンポジウムにおいて、辺野古における新基地建設について「代執行」という形で岸田政権が強行していることを報告したことを紹介、中国側の関心の高さを実感したと述べた。
抗日戦争記念館を訪問した感想についても、「加害者としての歴史を見るのは大変つらいが、二度とこういうことを起こしてはならないとの思いを強くした」と話した。
また、程永華中日友好協会副会長について、「深い歴史的見識をもった方と感じた」と述べ、駐日大使を務めた2010~19年の間に「尖閣国有化」という事態など、日中関係が困難なときも程氏の努力によって決定的な関係悪化に至らなかったのではと、その印象を語った。
そして、訪中を通じて、「新しい日中関係を切り開けるように少しでも貢献したい。引き続いて『沖縄を平和のハブに』の活動を続けたい」と今後の抱負を述べた。
「沖縄対話プロジェクト」などで活動してきた神谷美由希さんは訪中全体を通じて、「(中国は)アメリカと戦争しようとも、覇権争いをしようとも思っていない。望んでいるのは相互信頼だと実感した」と語り、日本で盛んに言われている「中国脅威論」が実態を伴っていないこと、また、明・清時代には琉球の官生(留学生)を受け入れていた国子監を訪問した感想として「留学生が当時住んでいた寮もあり、病気で亡くなる人もいたが、その親族に中国から送金するなど、中国の方々は沖縄の人を大切に扱っていたことを知ってとても親近感を覚えた」と述べ、「こうした歴史を沖縄の人に知ってもらえば、中国と沖縄の友好につながるのでは」と語った。そして、「沖縄戦や米軍統治下における性暴力について話したところ、共感してもらった。(侵略を受けたという)共通する経験があったからだ。共感によって、相手との距離が縮まって、理解が深まる。その意味で抗日戦争記念館を訪れたことはとても大きなことだった。自分は加害の歴史を学ぶ機会はあまりなかった。こうしたことを知らなければ、平和外交も前に進めない」と語り、「正しく相手国を理解し、周りにその経験をシェアすることが大事だ」と締めくくった。
沖縄と中国の関係を青年たちが進めると確信した
続いて参加者から発言があった。
照屋義実・沖縄県副知事は昨年3月に呉江浩駐日大使と面談したことなどに触れながら、「(互いに)何回も顔を合わせながら友好関係をつくっていくことが大事だ」と述べた。そして、中国との関係では「4つの基本文書」に基づいた交流が重要であると述べた。
ガマフヤーの具志堅隆松さんは辺野古への新基地建設において、防衛省は沖縄戦で亡くなった人の遺骨が混じる南部の土砂を使用することへの怒りを表明するとともに、対中戦争を想定した自衛隊の撤去を強く求めた。
東アジア共同体研究所の瑞慶覧長敏・琉球沖縄センター長は、昨年7月にセンターで訪中した際に中国の市民と交流したことに触れながら、人びとが戦争を望んでいるとは思えないと当時を振り返りながら語った。
上里賢一・琉球大学名誉教授は、「若い人をどんどん中国に連れていこう。中国からも青年、若者をたくさん沖縄に招こう」と提起、大きな拍手を受けた。「今日の報告を聞いて沖縄にはものすごい可能性があると強く感じた」と述べた。
又吉盛清・沖縄大学客員教授は「やっと沖縄と中国との関係を描くという運動が始まった」と強調した。そして、今年9月に北京から福州まで『平和の旗』を掲げ踏破するイベントを提案した。
喜友名智子・沖縄県議会議員は昨年3月に県議会で、「日本政府に対し対話と外交による平和構築の積極的な取組を求める意見書」に1年強もの時間をかけながら採択できたことを報告した。そして、「歴史を振り返ることを県議会でできたことは、非常に大きな経験だった」と述べた。
東江芝軍・日本沖縄華僑華人総会会長は、沖縄と中国との友好関係の発展に期待を示した。
羽場久美子・青山学院大学名誉教授は、「アジア大陸の人びとは皆、平和を望んでいる」と述べ、特に北東アジア5カ国における自治体外交の重要さを強調、沖縄県が進める「地域外交」に期待を込めた。
最後に伊波団長が閉会あいさつに立ち、「中国側にも『今回は第一歩だ』と伝えている」と述べ、今後の沖縄と中国との交流発展への抱負を示し、特に青少年交流を進めていこうと呼びかけ満場の拍手で閉会を迎えた。