2021年一覧

米中対立を乗り越えて沖縄の基地負担軽減を

復帰50年の現状は日本という国家の堕落の象徴

沖縄国際大学准教授 野添 文彬

 

 近年、米中対立が激化し、特に台湾海峡における緊張が高まっている。3月9日には、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)が、「6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性がある」と発言した。 続きを読む


中国と私の85年

「天の呼ぶ声」に導かれた中国との関係

早稲田大学名誉教授・元総長 西原 春夫

「盧溝橋」の形で登場した「中国」

 1937(昭和12)年7月7日、盧溝橋事件が勃発した。その後、支那事変(現在でいう日中戦争)、大東亜戦争(現在でいう太平洋戦争)へと拡大していくきっかけになった事件である。 続きを読む


盧溝橋事件、柳条湖事件記念日――歴史を鑑とすべき

「尖閣問題」 何故、中国と話し合わぬのか

『日本の進路』編集部

 7月7日は、1937年に日本の中国侵略戦争が本格化した盧溝橋事件の記念日である。9月18日には中国侵略を始めた柳条湖事件(「満州事変」、1931年)から90周年を迎える。

 日本は歴史を鑑に、発展し強国化する隣国中国と向かい合わなくてはならない。アジアの共生だけがわが国の生きる道である。 続きを読む


オリンピックを続けるために東京オリンピック中止を

パンデミックの中で実施できない。それが憲章の精神だ。

広範な国民連合代表世話人・元日教組副委員長 西澤 清

 今、世界はコロナ・パンデミックのさなかにある。ウイルスは、自らは生殖能力を持たないが感染を繰り返す中で増殖し、変異し感染力を強め毒性を強化する。世界中から狭い日本に集まる感染の機会の増大は、ウイルスにとって絶好の機会だ。 続きを読む


【抗議宣言】「重要土地利用調査規制法」の強行成立を弾劾する

 国会は、6月16日未明、自民・公明与党と一部野党の賛成をもって、急速に高まる危惧と反対の声を恐れるかのように、「重要土地利用調査規制法」を強行採決、成立させた。
 菅政権は、日米共同宣言で中国を名指しで敵視し、「台湾有事」を喧伝して、軍事的緊張を煽り、列島弧、とりわけ沖縄、南西諸島に長距離ミサイルを大量に配備し始めている。「敵基地先制攻撃能力」保有と併せて、戦争準備のための法整備を強引に進めている。その一つが、この「重要土地利用調査規制法」だ。私たちは、声を大にして怒りを表明し、政府と国会を弾劾する。 続きを読む



沖縄戦没者遺骨混入土砂採取問題から考える

適切な当事者意識を育み、
持続的な国民主権の実践を!

イェール大学学生 西尾 慧吾

 

 防衛省・沖縄防衛局が、沖縄戦没者の遺骨や血が染み込んだ沖縄本島南部の土砂を用いた辺野古新基地建設を計画している「遺骨土砂問題」。5月14日、沖縄県知事は鉱山開発業者に措置命令を出す最終判断を下した。土砂採取を巡り、県と業者との協議を条件付けた点で一定の評価はある一方、中止命令を求めてきた遺族や具志堅隆松さんらにとって、満足のいく結論ではなかっただろう。特に遺族の方にとっては、「今にも肉親の遺骨が基地の材料として売り払われるのではないか?」と案ずる日々が続くことになる。 続きを読む


流域治水法成立

「流域治水」は住民と行政の楽しい覚悟から?

―人口減少時代の骨太の国土再生哲学を―

参議院議員 嘉田 由紀子(前滋賀県知事、元環境社会学会会長)

1.130年ぶりの治水政策のコペルニクス的転換

 2021年4月28日、参議院本会議で「流域治水関連法案」が成立した。改正案の概要は次の4点だ。「流域治水の計画・体制の強化」、「氾濫をできるだけ防ぐための対策」、「被害対象を減少させるための対策」、「被害の軽減、早期復旧、復興のための対策」である。
 

図1 「流域治水イメージ図」(国土交通省HP より)

図1が、国が示す流域治水のイメージ図だ。この図を見ると、水を集めてくる「集水域」と「河川」と「氾濫域」の3つの地域を明示的に示し、これらの流域全体で、水害被害を軽減する、という方向が示されている。
    今回の流域治水法では、「河川から溢れることを前提」として、氾濫域からの住宅の高台移転や、要援護者の避難体制の強化、ハザードマップ作製の拡大を示した。日本では明治29(1896)年の最初の河川法制定以降、高い連続堤防とダムにより河川の中に洪水を閉じ込める近代技術主導の河川政策が主流であった。この明治以来の「河川閉じ込め型治水」から「溢れることを前提とする治水」は、河川政策のコペルニクス的転換でもある。溢れることを前提としたら、人びとが暮らす生活の場からの水害対策が基本になるからだ。つまり「河川管理者視点」から、氾濫原に暮らす「住民視点」への転換が必要となる。 続きを読む


安全な食糧自給、農林漁業を核とする持続可能な地域循環経済へ

「国の根幹は農にあり」 
ワクチン敗戦国の次は食料敗戦国を許さない

 

熊本県議会議員 西 聖一

 

 私は1983年に熊本県庁に入庁し、農業改良普及員、農業行政、農業研究センター等農業技術者として23年奉職した後、自治労推薦の議員として現在に至っています。農業に対する危機感を共有し、命を守るための日本の安全安心な食糧確保を堅持していくための運動を大きく展開したい思いを述べさせていただきます。 続きを読む


コロナ禍のもとで今後の食料・農業・農村を考える

「危機の時に都市を受け入れることのできる農村」でありたい

 

農事組合法人八頭船岡農場(鳥取県)組合長 鎌谷 一也(全日農副会長)

 

 人生の最終ステージは、「本気の百姓を!」ということで、朝から晩まで、田んぼで働く。
 コロナ禍のもと、昨年から寄り合いや会議も減少し、いっそう農作業に打ち込むこととなった。
 晴天・曇天・雨天であろうと、汗を流し作業に没頭していれば、農業は新型コロナとは無縁の世界にも思える。実際は、業務用の米や野菜の販売が滞ったり、消費減により価格が下がったり、影響がないことはないが、太陽の下で働くことに閉塞感もストレスもない。米のほか、小麦、大豆、白ネギ、キャベツ、繁殖牛、原木シイタケ、ワサビなど、あれもこれも、やろうと思えばきりがないほど、仕事が増える。
 だが、旧町単位の範囲で、260ヘクタールの水田を集積、構成員は545名(旧町エリアの約8割の農家)、職員15名を抱えている農事組合法人の組合長としては、作業だけに明け暮れているわけにもいかず、昨年は10年先を考えて、第3次5カ年計画(がんばる農家プラン)を策定した。
 高齢化や人口減少により、10年先は旧町全農地340ヘクタールの半分170ヘクタールは、法人(職員)の直接管理が必要となるであろう。その時に、職員は何人必要か、その職員が食べていくだけの生産体制・経営基盤は。集落で頑張る中核的な法人構成員の育成確保、集落単位での協業や相互扶助体制の確立をどうするか。水田活用、野菜生産、耕畜連携に放牧を利用した和牛繁殖など、事業展開をどうするか。そもそもどういった農村風景・農村社会を想定し、ことを進めるべきか、これまた考えることは尽きない。 続きを読む


安全な食料自給。農林漁業を核とする持続可能な地域循環経済へ

日本農業と中小製造業を守れ

 

JAM会長 安河内 賢弘

 

 4月27日に2020年農林業センサスが発表されたが、日本農業の衰退がさらに進んでいることが改めて示された。5年前と比較すると農林業経営体は22・2%減少し、なかでも林業経営体は61・1%と壊滅的な減少である。また、年齢階層別に基幹的農業従事者の推移を見ると、5年前と比べ、85歳未満の全ての階層で減少した。
 一方で、農産物販売金額規模別に農業経営体数の増加率を見ると、5年前に比べ3千万円以上の層で農業経営体数が増加したとするものの、3千万円を超える農業経営体は全体の3・82%にすぎず、全体の約7割強が300万円未満の農家である。

図 基幹的農業従事者数(個人経営体)の推移(全国)

 2015年11月25日、TPP大筋合意を受け政府はTPP総合対策本部を設置し、「総合的なTPP関連政策大綱」を取りまとめた。その主な柱は、①中堅・中小企業等の海外展開の支援、②経済再生・地方創生の実現、③農林水産業支援、④その他必要な支援(食の安全・安心、知的財産等)であった。このうち農林水産業については、「攻めの農林水産業への転換(体質強化対策)」と「経営安定・安定供給のための備え(重要5品目関連)」が重点施策として掲げられたが、それから5年を経た2020年の日本農業の衰退は残念ながら加速している。

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中国共産党設立百周年への特別な感懐

命がけで活躍した中国人青年の想いが乗り移った私

早稲田大学名誉教授・元総長 西原 春夫

 今年7月1日、中国は共産党設立百周年の記念式典を予定している。百年前の7月23日から上海で開かれた初め

ての全国代表大会(以下「中共一大」と略称)で正式に共産党が設立されたのを祝賀するためである。
 私は日本人だし、共産主義者ではないから、中国人と同じような感情は持っていない。ところが不思議にも、私にはちょっと違った特別な「感懐」がある。これは誰にも見当つかないだろう。早稲田大学の元総長である私にとっては、共産党の設立を含む中国の近代化にそれこそ命がけで活躍した多くの中国人早稲田大学出身者の想いが乗り移っているからだ。 続きを読む


「新冷戦」を回避するために

中国にとってはもはや
どうやって米国を超克するかが問題ではない

東京大学社会科学研究所教授 丸川 知雄

 

 

アメリカ傾斜を強めた日本のメディア

 アメリカでバイデン新政権が発足してから、日本の主流メディアの中国に関する論調が変化した。アメリカはトランプ政権時代から中国への攻撃を続けてきたが、トランプ時代には、日本のメディアはアメリカの立場から距離を置いていた。中国からの広範な輸入品に対して関税を上乗せするアメリカの措置はWTOのルールに反しているので、日本のメディアは米中貿易戦争の展開をあきれ気味に報じていたし、ポンペイオ国務長官が新疆ウイグル自治区における人権侵害を「ジェノサイド」と呼んだことに対しても必ずしも同調していなかった。
 ところが、バイデン政権になって、中国に対するアメリカの攻撃的な姿勢が弱まるどころか、むしろ中国に対する非難と圧力を強めるようになると、日本のメディアの論調はすっかりアメリカ寄りになった。トランプ前大統領の極端な個性に発するとみられていたアメリカの対中政策がバイデン新大統領にほぼ継承されたことによって、まるでそうした政策の正しさが証明されたかのようである。 続きを読む


『非常勤講師はいま!』 ■ ブックレットのご案内

年百から百五十万で大学支える非常勤講師

JAICOWS会長 羽場 久美子(神奈川大学教授、青山学院大学名誉教授)

 現代日本の高等教育が非常勤講師という名の非正規雇用者によって支えられていることに多くの人は気が付いていないでしよう。非常勤講師の実態については、文部科学省の「学校基本調査」や総務省の「労働力調査」にも詳しく取り上げられることがなく、ほとんど知られていません。
 このたび、「女性科学研究者の環境改善に関する懇談会(JAICOWS)」が、非常勤講師を対象とする調査を実施し、その結果を小冊子にまとめました。 続きを読む