「丸川知雄」一覧

高市発言後の日中経済関係

 中国との関係悪化を口実に

軍事産業の拡大など誤った方向へ

東京大学社会科学研究所教授 丸川 知雄

 

 

 2025年11月のいわゆる台湾有事をめぐってなされた高市首相の国会答弁以来、日中関係は十数年来で最悪の状況に陥っている。高市発言の直後から、中国中央テレビ局のニュースでは連日高市首相批判が展開され、中国の公式メディアはやがて日本を「新型軍国主義」と非難するようになった。中国から日本への団体旅行はぱったりと止まり、日中の学術交流活動も次々とキャンセルされている。日本への個人旅行を制限する動きはないが、中国政府から訪日旅行者に対して日本の治安状況についてやや過剰な注意喚起が行われている。今年1~7月の中国からの訪日客は昨年同期に比べて56%も減った(表参照)。 続きを読む


日中平和友好条約45周年 丸川 知雄

処理水(核汚水)騒動のなかで迎えた45周年

東京大学社会科学研究所教授 丸川 知雄

 

 

 日中の平和と友好が大事と考える人々にとって今年(2023年)の夏はなかなかつらかったと思う。いうまでもなく、福島第一原発の敷地内に溜まった核汚染水を処理した水を海洋に放出する作業が始まったからである。日本政府と東京電力は、汚染水に含まれる放射性物質を極力取り除くものの、トリチウムは濾過しても取り除けないので海水で希釈したうえで放出するのだと説明している。

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中国共産党第20回全国代表大会 ■ これからの日本と中国

中国の改革開放は終わるのか?

東京大学教授 丸川 知雄

 

 

 

習近平の全面勝利に
終わった党大会

 2022年10月に開催された中国共産党の第20回大会およびその直後の中央委員会総会は習近平の全面的勝利となった。共産党のトップ7人である中央政治局常務委員のうち5人は「習近平派」とされる人々で固められ、「共青団派」に属するとされる李克強と汪洋は続投も可能な年齢だったのに、自発的に退任させられた。また、「共青団派」のホープだった胡春華は政治局委員からヒラの中央委員に降格となった。

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「対中国外交の転換を求める」問題提起 丸川 知雄

中国をめぐる経済外交への提言

東京大学教授 丸川 知雄

 私からは中国をめぐる経済外交を3点に絞ってお話ししたいと思います。
 日本のメディアでは米中貿易戦争がずっと続いていると報道されています。トランプ政権下の2018年7月の301条発動からどんどんエスカレートして、ファーウェイといった特定の企業をターゲットにしてアメリカ市場から追放し、そればかりでなくファーウェイと付き合うような企業も追放だと。敵の味方も敵だ、みたいなかなり徹底した封じ込めをやっている。トランプ政権の最後、2020年1月には第一段階の合意というのがあって、中国がアメリカから財・サービスの輸入を2000億ドル増やすから、もうこれ以上貿易戦争の戦線を拡大しないという合意がなされた。それで一安心と思ったら、新型コロナがそこから始まって、米中関係が非常に悪くなって、バイデン政権でもそのまま続いていると理解しております。

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「新冷戦」を回避するために

中国にとってはもはや
どうやって米国を超克するかが問題ではない

東京大学社会科学研究所教授 丸川 知雄

 

 

アメリカ傾斜を強めた日本のメディア

 アメリカでバイデン新政権が発足してから、日本の主流メディアの中国に関する論調が変化した。アメリカはトランプ政権時代から中国への攻撃を続けてきたが、トランプ時代には、日本のメディアはアメリカの立場から距離を置いていた。中国からの広範な輸入品に対して関税を上乗せするアメリカの措置はWTOのルールに反しているので、日本のメディアは米中貿易戦争の展開をあきれ気味に報じていたし、ポンペイオ国務長官が新疆ウイグル自治区における人権侵害を「ジェノサイド」と呼んだことに対しても必ずしも同調していなかった。
 ところが、バイデン政権になって、中国に対するアメリカの攻撃的な姿勢が弱まるどころか、むしろ中国に対する非難と圧力を強めるようになると、日本のメディアの論調はすっかりアメリカ寄りになった。トランプ前大統領の極端な個性に発するとみられていたアメリカの対中政策がバイデン新大統領にほぼ継承されたことによって、まるでそうした政策の正しさが証明されたかのようである。 続きを読む