緊張緩和の南北合意を断固支持する

わが国も民族の運命を自らが握る道へ!

「日本の進路」編集部

 新年を迎え、韓国と朝鮮民主主義人民共和国の双方は、朝鮮半島情勢を劇的に転換させるべく動いた。昨一年、対中国を中心に強引な「巻き返し」を狙うアメリカ・トランプ政権の登場で、とりわけ朝鮮半島での軍事緊張は限界近くにまで高まっていた。こうした中で南北双方は1月9日、閣僚級会合を板門店で開き、緊張を緩和へと導き、民族の運命を自分たちの手に握るための壮挙、誠に意義深い合意に達した。われわれはこの動きを歓迎するとともに、日本でも呼応し、緊張緩和へ日朝関係打開の世論を促さなくてはならない。

南北間の問題はわが民族で解決することを確認

 朝鮮民主主義人民共和国の金正恩委員長は1月1日新年の辞で、韓国・平昌で開かれる五輪・パラリンピックに言及し「選手団を派遣する用意がある。南北当局が至急に会うこともできる」と提唱した。さらに朝鮮建国70周年と平昌五輪・パラリンピック開催の2018年を「民族史に特筆すべき年として輝かせるべきだ」と述べた。
 文在寅韓国大統領は、これを歓迎し、即座に北に具体的な対応を呼びかけた。さらに「南北対話と核問題解決は『別々に進められる問題ではない』」として、「同時並行で進めるべきだ」との考えを示した。大統領はトランプに、米韓合同軍事演習を五輪・パラリンピック期間中は実施しないことを再度要求し、受け入れさせた。
 こうして開かれた閣僚級会談では、朝鮮が五輪・パラリンピックに代表団を派遣すること、「南と北は、軍事的な緊張状態を緩和し、朝鮮半島の平和的な環境をつくり、民族的な和解と団結を高めるために共同で努力すること」を確認し、軍事当局会談開催でも合意した。会談の中で、朝鮮の祖国平和統一委員会李善権委員長は「われわれが保有する核爆弾など最先端兵器は徹頭徹尾、米国を狙ったもので、同族に向けたものではない」と発言したという。
 さらに会合後の共同発表文によると、「北と南は、北南宣言を尊重し、北南関係において提起される全ての問題を『わが民族同士』の原則に基づいて、対話と協商を通じて解決していくこと」を確認した。以後、次官級会合など実務者会談が開かれている。
 「北南宣言」は、2000年に金大中大統領と金正日国防委員長との間で合意されたものである。そこでは、「南と北は国の統一問題を、その主人であるわが民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していく」原則を確認している。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は12日、金委員長の新年の辞は「北南関係大転換方針」を示したものだとの論評を発表した。
 われわれはこの南北合意を断固支持する。今後も紆余曲折は避けがたいだろう。パラリンピックが終わると、米韓軍合同の戦争挑発再開がすぐ問題となるなど、アメリカの朝鮮敵視政策、休戦状態にすぎない米朝関係には変化はないからである。アメリカのアジアでの巻き返しの力の政策は、中国が自国に代わる大国としての登場を阻止するためであり、ますます強まるからである。アジアの不安定化は避けがたい。
 だからこそ南北の政権が、軍事緊張を緩和し、統一に向けて「南北関係で起こるすべての問題を、その当事者として朝鮮民族自身が解決していく」との原則を改めて確認した意義は計り知れない。
 アジアのことはアジア人が決めなくてはならない。始まった自主で平和のこの流れを大きく発展させなくてはならない。
 中国外務省は「南北が、朝鮮半島情勢について対話交渉で解決するという正しい道のりに取り組むことを希望し、積極的に支持」を表明した。ロシアも「このような対話によってのみ朝鮮半島の緊張解決が可能だ」と述べるなど、世界は歓迎している。
 国連安全保障理事会ですらも非公式協議後、議長国カザフスタンのウマロフ国連大使が、「安保理メンバー国は対話の開始を歓迎」とするコメントを発表した。国連のグレテレス事務総長は、「希望の兆し」と高く評価した。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、「北朝鮮と韓国政府に心から感謝する。平昌冬季五輪が、朝鮮半島に明るい未来を開く扉となることを期待する」と歓迎し、南北合同チーム結成についても「五輪競技の融和の力の象徴」と高く評価した。
 これが世界の趨勢である。

世界の流れに背を向け、一人危機をあおる安倍政権

 ところが、わが国安倍政権だけはただ一人、「制裁強化」をさらに唱え、世界中に触れ回っている。マスコミ大手も、「時間稼ぎ」とか、「米韓日の分断策」「合同チームはおかしい」などと非難に余念がない。
 安倍首相は、年頭から東欧6カ国を歴訪し、朝鮮の核ミサイルは東欧にとっても脅威だなどという言い草で制裁強化を呼びかけた。河野太郎外相はこともあろうにアメリカが提唱しカナダで開催された朝鮮戦争での「国連軍」関係20カ国外相会合に当事者でないにもかかわらず出席し、恥知らずにも中ロ両国に制裁強化履行を要求した。
 このように南北の緊張緩和、諸問題の平和的解決の努力を妨害しようと無駄骨を折っている。いったいどこまで自主性なき対米依存でアジア諸国に敵対するのか。
 これを口実に、憲法改悪、軍事大国化を進めている。首相は施政方針演説で、「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と叫んで「従来の延長線上ではない防衛力」強化を打ち出し、自衛隊が初めて米艦艇と航空機の防護にあたったことも発表した。空母保有や巡航ミサイル・トマホーク導入などが公然と語られ進められている。

日米同盟の枠から抜け出し、国の運命を自身が握るとき

 米韓同盟に縛られ内外に困難を抱える韓国だが、文在寅大統領は民族の運命を民族自身が握るために勇気ある行動に出た。金委員長は、それに大転換方針で応えた。それぞれの政権、その政策に評価はいろいろあるだろう。
 しかし、文字通り平和と国の存亡がかかったとすら言える今、南北朝鮮の政権が進めたように、他国に自国の命運を委ねない、民族自立の政治こそ求められている。わが国も、日米同盟の枠から抜け出して、自民族の運命を自らが握る道を選ぶべきである。
 だが、安倍政権はどこまで屈辱的なのか。保守政治家はなぜ黙っているのか。民族の自立を実現しようとする政治家はいないのか。
 野党はどうなのか。野党再編や政局の話は出てくるが、対朝鮮政策の見直しを求める声、自主外交の声は聞こえない。南北合意を評価した共産党も、「制裁強化」の方針には変更を加える気配はない。野党まで、事実にも反する朝鮮脅威論に与するようなことで、安倍政権の憲法改悪を含む戦争への策動を打ち破れるだろうか。
 劇的なこの情勢変化に、わが国も呼応すべきである。朝鮮半島への侵略、植民地支配の歴史をもつわが国は、隣国朝鮮民族のこの歴史的前進に呼応すべきである。
 朝鮮半島とわが国に未曽有の惨禍をもたらす核戦争の危機を終わらせるため、諸懸案を抱える日朝関係の打開、国交正常化はますます喫緊の課題となっている。

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