米中対立一覧

日中不再戦のために ■ 羽場 久美子

 戦後79年 沖縄戦、広島・長崎の原爆

戦争回避・東アジア不戦共同体の実現

青山学院大学名誉教授 羽場 久美子

 

 戦後79年の暑過ぎた夏。沖縄戦、広島・長崎の原爆、終戦の日を迎えるたびに、なぜ政府も、国民も、戦争を止められなかったのか、と深く自問します。さらになによりも、遅過ぎたのが終戦宣言です。なぜすべてを失うまで、戦争をやめることができなかったのか。
 イスラエルによるガザのジェノサイド戦争と、沖縄・広島・長崎の民衆の悲劇がダブって見えます。それは始まったら止められない東アジアの戦争の予兆でもあります。 続きを読む


ペロシ米下院議長訪台

日中国交正常化50周年に考える平和と労働組合の役割

ものづくり産業労働組合JAM会長 安河内 賢弘

 

 

 1991年、ナンシー・ペロシ氏は天安門広場で、「中国の民主主義のために亡くなった者たちへ」と刺繡された横断幕を掲げた。およそ30年後の2022年8月3日、下院議長のナンシー・ペロシ氏は蔡英文総統と会談し、自身の訪台は米国が台湾を見捨てないことを明確に示すものだと伝えた。

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日中国交正常化50周年  東アジアの平和と共生を

中国封じ込めでなく、共同発展を

神奈川大学教授、青山学院大学名誉教授 羽場 久美子

 

 

 

 

本稿は、羽場久美子先生の「日中国交正常化50周年記念、東アジアの平和と共生を求める」講演会(5月29日、横浜)での講演の一部。ウクライナ戦争をどう見るかなど豊富な論点が述べられたが、先生がこれまですでに本誌で触れられている点については割愛した。見出しともに文責編集部。

 

 日中国交正常化50周年でありながら、今、日中両国が大変な緊張関係にあります。その背景にアメリカの東アジア戦略が大きく関わっています。バイデン大統領はなぜ日中の協力関係にくさびを打ち込むのでしょうか。QuadやAUKUSというアメリカの軍事同盟が着々と東アジアにつくられている今、いかに東アジアの平和と共生をつくっていくべきか、を考えていきたいと思います。

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台湾有事を避けるために

日本の外交・安保はどうあるべきか 
安心供与の外交こそ大事

新外交イニシアティブ(ND)代表・弁護士 猿田 佐世

 

 

 

 

ウクライナ紛争からの教訓

 2月24日にロシアがウクライナに侵攻し、世界は騒然としました。凄惨な被害を受け続けるウクライナの情勢を見て、元来9条護憲を掲げていた方々の中には、これまでの信念が揺らぎ、軍事力拡大が必要なのではないか、と考えを変えた方がいるとも耳にしています。私も、攻撃開始後1週間ほど、今後の自分の考えをどのように伝えるべきか、大きく影響を受けた日本社会の中で悩みました。

 大国が戦争を決意したら「抑止力」とかなんとか言っていても戦争になるんだ、そういう決意をさせない環境づくりが大事なのだと改めて実感しました。戦争が始まってしまったら取り返しはつかず、戦争を始めさせないことが重要です。

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日本を戦場にする米国「台湾有事」戦略

日中平和友好条約こそ基本

参議院議員 伊波 洋一

 

 

 

戦争あおる南西諸島の軍事化

 私はオール沖縄の参議院議員として外交防衛委員会で、南西諸島の軍事化の問題を重視して取り組んでまいりました。

 今、私たちの国はたいへん危険な方向に向かっています。10年の中国漁船と海上保安庁の巡視艇の衝突事故を契機に12年に尖閣諸島が国有化され、日中関係がたいへん厳しい状況になっていく中で、「南西諸島の軍事化」が米国から日本に求められたと思っています。現在は、日本が自らの国益や本来の主権を見失って、アメリカの意のままに翻弄される状況です。

 今年1月7日に開催された日米の外務・防衛閣僚2+2協議では共同通信が報じた自衛隊と米海兵隊の台湾有事の共同作戦計画原案をさらに進展させる南西諸島の自衛隊基地の日米共同使用や「日米共同作戦」策定の合意となりました。5月5日には岸防衛大臣がワシントンでオースティン米国防長官と会談し、日本の防衛力の抜本的強化と双方の戦略を緊密な協議を通じて擦り合わせていくことを確認しました。まさに戦争への道をまっしぐらに進む状況になっています。

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台湾問題に関する提言

戦争という愚かな選択をしないために

 

ND(新外交イニシアティブ)
柳澤協二
 ND評議員/元内閣官房副長官補
マイク・モチヅキ
 ND評議員/米ジョージ・ワシントン大学准教授
岡田充
 共同通信社客員論説委員
半田滋
 防衛ジャーナリスト/元東京新聞論説兼編集委員
津上俊哉
 現代中国研究家
猿田佐世
 ND代表/弁護士(日本・ニューヨーク州)

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民主主義サミットなるもの

〝米の民主主義〟って、本物?

 

広範な国民連合代表世話人 原田 章弘

 〝民主主義〟という言葉を聞いた時、それは、18、19世紀の「市民革命」で、封建専制政治を倒し、市民が勝ち得たものというイメージだ。では、アメリカは?
 多くの人が知る通り、アメリカは独立戦争を経て「自由・平等・民主主義」を旗印に建国された。この理念は、アメリカ人にとって誇りであり、国をまとめる力であり、宗教的とも言える大きな意味を持ち、軍隊を外国に派遣する時にも、常に「錦の御旗」とされている。では、アメリカこそが、人類の求める究極の民主社会と言えるのか?

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米中激突の東アジア、問われる日本の進路 2-4

第17回全国地方議員交流研修会 ■ PART2 パネルディスカッション

宮古、八重山地方の状況

沖縄県議会議員 國仲 昌二

 今日の先生方のお話を聞いてですね、台湾有事、あるいは米中対立ですね、非常に危機感を強くしています。
 逆に言えば、こうした問題について、日本全体の認識がまだまだちょっと甘いのではないかとも感じています。
 先ほどから話にありますように、台湾有事が起きますと、宮古、八重山は必ず巻き込まれるという危機感を持っています。 続きを読む


米中激突の東アジア、問われる日本の進路 2-2

第17回全国地方議員交流研修会 ■ PART2 パネルディスカッション

中国での人権や自由への弾圧を
どう考えるか?

羽場久美子

 ありがとうございます。
 重要なご指摘ありがとうございました。中国の「人権侵害」への批判はしていくべきだと思いますし、経済の問題だけで日中関係を考えるわけにいかない、というのもそのとおりだと思います。ただそれを、中国は専制主義だから民主化しなければならない、軍拡しているからこちらも対抗しなければならない、というのは違うのではないかと思います。 続きを読む


「抑止一辺倒を越えて」を提言して

日本は嬉々として米国陣営の「雄」となり、「熱戦」の道を進むのか

NPO「新外交イニシアティブ(ND)」

代表・弁護士 猿田 佐世

 米中対立は激しさを増す一方であり、このままでは「新冷戦」にとどまらず、この地域で「熱戦」が起き、日本も戦場になりかねない。世界も米ブロックと中国ブロックに二分されていく。この状況下で日本には、軍事力強化の声しか存在しないかのような空気である。筆者が代表を務める新外交イニシアティブ(ND)では、この事態を強く懸念し、安全保障についての政策提言書「抑止一辺倒を越えて~時代の転換点における日本の安全保障戦略」を発表した。ぜひ、ご注目いただきたい。 続きを読む


米中対立を乗り越えて沖縄の基地負担軽減を

復帰50年の現状は日本という国家の堕落の象徴

沖縄国際大学准教授 野添 文彬

 

 近年、米中対立が激化し、特に台湾海峡における緊張が高まっている。3月9日には、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)が、「6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性がある」と発言した。 続きを読む


「新冷戦」を回避するために

中国にとってはもはや
どうやって米国を超克するかが問題ではない

東京大学社会科学研究所教授 丸川 知雄

 

 

アメリカ傾斜を強めた日本のメディア

 アメリカでバイデン新政権が発足してから、日本の主流メディアの中国に関する論調が変化した。アメリカはトランプ政権時代から中国への攻撃を続けてきたが、トランプ時代には、日本のメディアはアメリカの立場から距離を置いていた。中国からの広範な輸入品に対して関税を上乗せするアメリカの措置はWTOのルールに反しているので、日本のメディアは米中貿易戦争の展開をあきれ気味に報じていたし、ポンペイオ国務長官が新疆ウイグル自治区における人権侵害を「ジェノサイド」と呼んだことに対しても必ずしも同調していなかった。
 ところが、バイデン政権になって、中国に対するアメリカの攻撃的な姿勢が弱まるどころか、むしろ中国に対する非難と圧力を強めるようになると、日本のメディアの論調はすっかりアメリカ寄りになった。トランプ前大統領の極端な個性に発するとみられていたアメリカの対中政策がバイデン新大統領にほぼ継承されたことによって、まるでそうした政策の正しさが証明されたかのようである。 続きを読む


日米首脳会談 ■ 台湾問題の「踏み絵」を踏んだ菅首相

安全保障も経済も 「反中国同盟」ではわが国はやっていけない

『日本の進路』編集部

 日米首脳会談が4月17日、ワシントンで行われた。そこで菅首相は、米国の覇権維持のための対中国戦略に全面的に合意し、日米同盟の深化、「防衛力を強化すること」を約束した。
 米国の「日本を前面に立てて中国を抑え込む」策略に取り込まれた。中国は当然にも猛反発している。焦点は台湾問題である。東アジアの政治・軍事、経済の緊張は一気に高まる。 続きを読む


香港問題をどう考えるか(1)

『日本の進路』編集長 山本 正治

より歴史的にとらえないと未来を誤る

 私たちは、自由を求める香港の青年たちの要求と闘いに深い共感をもっている。いかなる政権であってもこうした行動を力で弾圧することは許されない。
 しかし、香港の問題(国家安全維持法制定)は完全に中国の内政問題である。アヘン戦争によって奪われた香港の領土と主権を回復する歴史的課題が中国国民と政府にはまだ終わっていない。「国際社会」による、「自由」とか「人権」という言い分での乱暴な内政干渉は許されない。それは植民地主義の手法である。問題を解決できるのは中国国民だけである。 続きを読む