米軍の性暴力にNO 沖縄県民大会(12/22)

日米地位協定の抜本改定求め決議

 「米兵による少女暴行事件に対する抗議と再発防止を求める県民大会」が2024年12月22日、同大会実行委員会が主催し沖縄市民会館大ホールで開かれた。会場内や立ち見、ロビーなど合わせて2500人超が集まった。
 女性の権利を守るシンボルになっている「ミモザ」にちなんだ大会テーマカラーの黄色を身に着けた参加者たちは、米兵による相次ぐ性的暴行事件に満身の怒りを示し、被害に遭った少女に寄り添い、事件を「なかったことにしない」という決意がみなぎっていた。被害者への謝罪と補償などと日米地位協定の抜本改定を求める大会決議を参加者全員で採択した。
 県民大会には最終的に148団体が参加・賛同。県内では宮古島、石垣、名護にサテライト会場が設けられた。また、オンラインで全国が結ばれ多数が視聴し、東京や大阪などでは連帯の集会が開かれた。
 実行委員会代表を務めた沖縄県女性団体協議会会長・伊良波純子氏は大会で次のように呼びかけた。
 「1995年の県民大会から約30年。女性や子どもが踏みつけられる変わらぬ状況に私たちは声を上げた。残念ながら県議会は大会実行委に加わることはできなかったが、多くの参加をいただき大変心強く思う。戦後80年がたつ今も、沖縄では悲惨で非道な事件が繰り返し起きている。中でも、女性や子どもの尊厳を踏みにじる性暴力は絶対にあってはならない。しかし、日米両政府から謝罪はいまだにない。日米両政府の責任。日米地位協定改定など(県議会の)意見書が求めているのは過大な要求ではない。意見書の一日も早い実現を日米両政府に求めよう」
 大会実行委員会は23日、大会決議を外務省沖縄事務所と沖縄防衛局に直接手渡すなど抗議行動を続けている。
 そうしたさなか、今年1月に入って昨年11月にあった米海兵隊員による性暴行事件が発覚、繰り返される悲惨な事件に怒りが高まっている。22日は県民大会実行委員会主催で抗議行動が行われた。

若者は皆で協力し、声を上げよう

 会場では若者の発言が目立った。地元大学生の中塚静樹さんは、「沖縄に何度も押し寄せる悲しみの波はいつになれば止まるのか。県民を守らず、被害者の人権よりも日米関係を重視するような政府に大変憤りを感じる。県民の人権はこんなにも軽いのか。事件を県民に知らせず、危険にさらした政府の責任は重大であり第二の加害者は政府。一番苦しいのは被害者だ。被害者に寄り添い、被害者の視点に立って考えなければならない。沖縄が置かれた不平等な構図が問題であると、一人ひとりが認識する必要がある。それがこれ以上被害を生まないための第一歩につながるのではないか。次世代を担うのは私たち。このような事件が二度と起こることのない平和な未来をつくるために若者皆で協力し、声を上げよう」と決意を表明した。

私は沈黙を貫きたくない

 東京の大学に通う大学生、崎浜空音さんは、「基地のある街、北谷町で生まれた。大学で上京した時、自分がいた環境はどれほど人権が侵害され続けているかを痛感した。どうして沖縄に生まれたからと青春を奪われなければならないのか。米兵による犯罪を二度と繰り返さないために、不平等な日米地位協定を変えなければならない。私は沈黙を貫きたくない。数年後、事件が起きてここに今の中高生を立たせてしまうのか。絶対に立たせてはいけない。これが最後の県民大会になるよう、私はこの言葉を、その重みを、未来の子どもたちに希望を持たせるために使う。『もう絶対に繰り返さない』」と結んだ。
 崎浜さんは1月17日、発覚した11月の性的暴行事件に抗議し東京新宿で抗議行動を呼びかけ実行した。

玉城デニー知事 米軍は「国にお帰りください」

 あいさつに立った玉城デニー知事は、「軍そのものの構造的な責任」「私たちは人が人として尊敬されること、人権が尊重されるようこれからも声を出していかないといけない」と訴えた。大会後には、「差別構造が事件を生むのであればもはや地域とは相いれない」「国にお帰りください」と、これまでにない強い表現で米軍を批判した。
 報道によると知事の念頭にあったのは、米軍準機関紙「星条旗」が直前17日に報じた米軍幹部のインタビュー。そこでは相次ぐ米兵暴行事件は「(地域との)関係の小さな一側面だ」と表現した。これに対し、玉城知事は「個人の問題で組織とは関係ないというような話が出るということ自体、由々しき問題」だと厳しく批判。「申し訳ないが、どうぞ組織ごと国にお帰りくださいという思い」と不快感をあらわにした。
 知事の怒りの発言は当然だ。
 もはや米軍と沖縄県民はいかなる意味でも共存できないことは明らか。

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米兵による少女の誘拐と性的暴行事件に抗議する県民大会
再発防止求める決議

 2023年12月、沖縄県内の16歳未満の少女が、米空軍兵により誘拐され性的暴行を受けていたことが、県民には24年6月になって初めて知らされた。被害者が未成年だったことで県内に大きな衝撃が走ったが、性暴力が半年間も伏せられていたことは、県民に強い不信感を抱かせた。
 沖縄で1995年に発生した米兵による少女暴行事件を契機に、日米間では「在日米軍に係る事件・事故発生時の通報手続き」が合意されていた。しかし今回、捜査当局および外務省から県へ情報提供はなく県民へも知らされなかった。
 その後、2023年1月から24年5月末までの間に、米兵による性犯罪が他に4件も起こっていたことが明らかになった。即座に通報されていれば、後に続いた性暴力を防ぐことができたのではないか。隠蔽の影響は大きい。
 性暴力は人間の尊厳を蹂躙する行為であり、非難されるべきは加害者である。
 県議会は事件発覚直後の24年7月、「相次ぐ米軍構成員等による女性への性的暴行事件に関する抗議決議」と同「意見書」を全会一致で可決し、県内全41市町村議会でも、県外の自治体においても抗議決議が可決された。
 24年10月、スイスのジュネーブで国連女性差別撤廃委員会の日本政府審査が開かれ、沖縄から参加した女性たちが、在沖米軍による県内での深刻な性被害が相次いでいることについて訴えた。
 委員会は、米兵らによる女性への性暴力について「加害者を適切に処罰し、サバイバーに十分な補償を提供するための適切な措置を講じること」を日本政府に初めて勧告した。これは国際社会からの重要な勧告である。米兵による性暴力を起こさせない責任は、一義的に日米両政府にある。
 12月13日、わいせつ目的誘拐と不同意性交等罪に対する裁判で、懲役7年の求刑に対し5年の有罪判決が出た。性交同意年齢に満たない少女に対するわいせつ目的誘拐、性的暴行が卑劣な加害行為であったことを思うと、この量刑では軽すぎる。
 「被害者は決して悪くない」。私たちは、勇気ある訴えに応えたい。今回の性暴力事件とその後、決められた通報手続きが無視されたことに対して満腔の怒りをもって抗議するとともに、徹底した再発防止に向けて下記の事項が速やかに実現されるよう強く要求する。

1、被害者への謝罪と丁寧な精神的ケアおよび完全な補償を行うこと。
2、被害者のプライバシーの保護と二次被害の防止を徹底すること。
3、事件発生時の県・市町村等自治体への速やかな情報提供を確実に行うこと。
4、米軍構成員等を特権的に扱う日米地位協定の抜本的改定を行うこと。