「漁場を返せ!」漁民が防衛省を告訴
種子島の漁師 浜田 純男さん
馬毛島の唯一の漁港である葉山港の周辺は、対岸の塰泊浦集落の共有地である。浜田さんはその地権者の一人でもある。
本誌編集部は浜田さんにお話を伺った。
私は西之表市の、塰泊浦という漁村集落に生まれて、祖父母の代から漁業をしてきています。馬毛島の漁場は宝の海です。アオリイカ、ヒラマサ、カンパチ、種子島特産のトコブシは特に豊かです。
小さい頃はトビウオ漁のために、家族で5月ごろから2カ月ほど馬毛島に泊まり込んでいました。馬毛島で一番高い岳之腰という丘に遊びに行って迷ってしまい、父が捜しに来てくれたことがあります。背中におんぶされたその時の、力強い父親の頑丈な背中とぬくもりを、馬毛島を思うたびに今でも忘れることができません。そういう思い出も詰まったところが馬毛島です。
私がなぜ訴訟を起こしたのか、ぜひとも皆さんに訴えたいことは、漁協と防衛省の不正についてです。漁協はそもそも広域合併したことで漁協による管理も広域化し、自衛隊OBでもある組合長が防衛省と内々の話し合いを進め、補償額を決め、結果的に工事が着々と進められています。私たち塰泊浦の漁民は、他の地区の漁民よりも馬毛島での漁の際には地先権を有し、これまで葉山漁港の管理も行ってきましたが、塰泊地区に対し防衛省からは一度も説明も了解を求めることもありませんでした。
私たち漁民の漁業権を侵害されて生活が成り立たなくなっているにもかかわらず、漁民の声を無視して工事が進められていることが納得できません。工事が進んだら伝統ある豊かな漁場はほぼ全部壊滅となり、漁業はもうできなくなると思います。率直に言って漁場を盗まれたという気持ちでいっぱいです。
工事を進めるにあたって馬毛島でボーリング調査をやりましたが、その時は基地建設とは関係ないかのような説明でした。ところが、
ボーリング調査が終わった途端に基地建設着工です。漁民を全部騙して工事を進めている。こういうやり方が許されるかと思っています。
私は1981(昭和56)年にUターンして故郷に帰りました。漁協に付された「漁業権」は漁業をいま営む権利でしかありません。私たちは伝統的に漁場を守り漁業を営んできた事実を主張し、次の世代も漁業を営むことができるように守ることが、私の願いです。
とにかく、漁民として漁場を返してほしいということを強く訴えたいと思います。
今回の裁判の次は9月10日、次々回は10月29日鹿児島地裁で開かれます。ぜひとも多くの皆さんに傍聴とご支援をお願いします。