日中国交正常化は本当の安全保障であった
鹿児島県議会議員 上山 貞茂
「日中不再戦、平和友好を進める九州自治体議員の会」の訪中団の副団長として、中国国際友好連絡会の計らいで4月23日から28日の日程で北京・南京を訪問しました。
中華人民共和国外交部への表敬訪問、程永華中日友好協会副会長・元駐日大使との懇談会、華語シンクタンク主催の意見交換会、盧溝橋・中国人民抗日戦争記念館(鹿児島県高等学校教職員組合の寄せ書き布も展示されていました)、天安門、江蘇省人民代表大会常任委員会表敬訪問(議場も見学)、南京大虐殺記念館、中山陵(「中国革命の父」と呼ばれる孫文の廟)と江蘇・福岡友好桜花園見学(福岡県議会と江蘇省人民代表大会の友好の架け橋として福岡県民からの約3000本の桜の植樹公園・記念碑)など日中戦争の実録を直視するとともに日中友好の足跡にも触れる訪中でした。
一方で、自動運転技術やEV車普及の取り組み、環境改善に向けた植林事業や省政府・議会の環境対策の紹介など、中国の技術や社会発展に向けた戦略の一端も垣間見る視察となりました。最終夜は、華語シンクタンク主催で色形鮮やかな提灯の明かりで彩られた白鷺洲公園内のレストランで琴や琵琶演奏を交えた盛大な送別会。南京師範大学で中国語を学んでいる鹿児島県職員の方にも来ていただき語り合うことができました。
もう一度「日中不再戦」の誓いを
今回の訪中で認識を新たにした言葉は「日中不再戦」という文言でした。劉江永中国精華大学国際関係院教授から、「日中不再戦は古い言葉であるが、平和への誓い・志の言葉でもある。国交正常化がされた当時は、『友好の船』とか『友好の翼』など平和への気持ちをもって盛んに交流し合っていた。安倍政権後期からアメリカの対中敵視政策が表面化し、岸田政権では中国を意識した防衛費増・軍備増強が進められている。日中の今の関係は悲しいことだ。国交正常化は、戦争から平和への誓いであり本当の安全保障だと思う。不正常な状態を正常にしていきたい」と今回の訪中団の役割に期待が寄せられました。
1972年9月29日の日中共同声明は、国交正常化の実現を確認し、日本国政府は中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認しました。そして、「①中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。②中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。③日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。④両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」などが確認され、「両国間の国交を正常化し、相互に善隣友好関係を発展させることは、両国国民の利益に合致するところであり、また、アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献するものである」と宣言しています。
その後、78年8月12日、北京で日本国と中華人民共和国との間で日中平和友好条約が締結されました。劉江永教授の主張は、日中不再戦という両国間の誓いを蔑ろにしてはならないと警告されたものと受け止めました。
地方自治体での日中関係強化の重要さを再確認
中華人民共和国外交部での表敬訪問では、アジア局参事の張梅先生から、「日本との互恵関係でウィンウィンを目指す文化・経済交流をさらに深めていきたい。九州とは地方間同士の交流が盛んでありクルーズ船も頻繁に寄港している。青年の方々にも中国に来てもらいたい。平和は守らなければならない。対話・協議で解決を図るべきであり行動で示すべきだ」とわれわれの訪中目的を踏まえて見解が示されました。
中国日本友好協会の程永華常務副会長(「中日平和大使」として自己紹介)との意見交換は、さらに奥深いものでした。「以前はお互いの立場が違うが努力していく気風があった。日米同盟は分かるが反中同盟はダメだ。台湾有事は日本有事という考え方は危険だ。台湾を日本の植民地として意識している」と批判されました。
台湾有事がまことしやかに語られ、抑止力の名のもとに鹿児島県の馬毛島基地や奄美大島など南西諸島から琉球列島への自衛隊基地増設、弾薬庫建設、自衛隊による空港・港湾の特定利用指定、奄美大島や徳之島、沖永良部など南西諸島での日米共同演習も最近になって頻繁に実施されています。離島の防衛を目的と言っていますが、演習も大規模化してきており不安を訴える住民の声も大きくなっています。
最後に程永華氏は、中国には「民をもって官を促す」「地方をもって中央を促す」「経済をもって政治を支える」との言葉で、地方が活発に交流を深めることで平和を築く礎になると進言しました。まさに自治体間の地域外交で平和の絆を深めていくことの重要性を説く名言だと感動しました。
自治労青年部時代以来30年ぶりに訪れた南京大虐殺記念館では、「南京大虐殺という悲惨で痛烈な歴史を銘記し、無残な死難者たちを記念し、平和的発展の道をそれることなく歩んでいきたいという中国人民の願望と決心を伝え、歴史を銘記し、過去を忘れず、平和を愛護し、未来を開拓す、という中国人民の固い立場を宣布したい」と展示の目的が明記されていた。憎しみではなく歴史そのものを記録し平和につなげていこうとする中国の懐の深さを感じました。慰霊碑に対して訪中団一同献花し、6週間で30万人以上の死難者を生み出した日本軍の虐殺行為に対し心から陳謝の意を示しました。
鹿児島県では、江蘇省との友好交流の促進に関する協定を結んでおり、経済・観光・文化・スポーツ・青少年などの交流や国際交流員の配置、研修生受け入れを行っています。現在、鹿児島大学や鹿児島県立短期大学など県内10大学において国費・私費合わせて344人もの中国留学生が学んでいます(昨年5月1日現在)。鹿児島県国際交流協会を拠点としたイベントも数多く開催されています。
議会で自治体外交を問う
さっそく6月議会では、わが県民連合会派の代表質問で「アジア圏域との国際交流・地域外交政策について」と題し、知事のアジア県域での国際交流事業への参画状況、自治体外交についての見識と九州各県と連携した地域外交を展開する考えについて質問を予定しています。
お世話になった中国の皆さま、日本の皆さま、共に訪中した仲間たちにも感謝の意を表します。今回の訪中が平和への礎につながるよう活動してまいります。