今こそ公助の出番!
コロナ災害対策自治体議員の会共同代表
広範な国民連合・東京世話人/足立区議会議員
おぐら 修平
8月10日に開催された全国地方議員交流研修会で、コロナ禍の困窮者支援の現場からの報告を行った。コロナ禍で失業、家賃滞納や派遣切り寮退去などで職も住まいも失った人々を支援する現場から見えてきた課題と、国や自治体に求める政策について述べたい。
〈首都圏では職も住まいも失う人々が続出〉
東京都内にはさまざまな事情で住まいを失い、ネットカフェで暮らしながら日雇い派遣などで働いている人が推定4000人いる(2018年東京都調査)。
これらの人々をはじめ、製造業派遣、日雇い派遣、飲食サービス業、個人請負などで働く非正規の若者や女性が職も住まいも失っており、新宿、池袋など都内で実施している困窮者支援団体による食料配布と相談会には、昨年4月の緊急事態宣言以降、毎回、食料を求める人の行列が増え、以前の倍以上、300人を超える人々が訪れている。若者や女性、外国人など多様な人々が食料を求めている光景は、リーマン・ショック後の年越し派遣村も含めて初めてである。
昨年4月、私と片山薫・東京都小金井市議で首都圏を中心に困窮者支援に取り組む超党派の自治体議員ネットワーク「コロナ災害対策自治体議員の会」を立ち上げ、反貧困ネットワーク、「つくろい東京ファンド」など約40団体でつくる「新型コロナ災害緊急アクション」に参加。職も住まいも失った人々のSOSに対して、現地に駆けつけ、緊急宿泊場所(ビジネスホテル)や生活保護申請同行、アパート転宅など数多くの人々の支援に奔走してきた。
〈コロナ禍で寄せられた相談の一例〉
・警備会社の派遣、寮で生活しながら働いていた40代男性。仕事が激減し退職するが、次の仕事も見つからず所持金ゼロになり路上生活。
・北関東の製造業派遣で雇い止め。寮退去、上京してネットカフェに宿泊しながら職探しをするものの職に就けず所持金500円になった20代男性。
・ガールズバーで働いていた20代女性。コロナ禍で失業、スマホ料金滞納で利用停止、3年以上ネットカフェ暮らしで所持金1000円に。
相談者の特徴としてほぼ全員、非正規で若い世代が多いことや、失業給付や住居確保給付金など社会保障を一切受けていなかったこと。
製造業派遣で雇い止め寮退去、地方から仕事を求めて上京するものの職に就けず、ネットカフェ暮らしやアパート初期費用などの理由で製造業派遣や夜の街など寮付きの仕事しか選択肢がない人も。
〈コロナ禍の困窮者支援の現場からの提言〉
これらの現場の状況を踏まえて、厚生労働省や東京都への要請や議会質問の内容、新たな提言などについて述べたい。
1、あらゆるセーフティネットの制度や相談窓口について、政府広報、自治体からの周知徹底を
コロナ禍の困窮相談では、公的な相談窓口や制度について全く知らない人が多く、生活保護を知らない若者なども。
昨年4月から東京都がネットカフェ生活者に緊急宿泊場所(ビジネスホテル)を確保したことについて都知事が記者会見で述べたことがテレビやネット記事で配信され、ネット記事を見た若者が相談に訪れた事例や、TwitterやGoogleで検索したりYouTubeを見て困窮者支援団体への相談につながった事例を挙げながら、ネットやSNSを通じた周知について東京都や厚労省に要望し、駅やコンビニ、ネットカフェなどに各種相談窓口や生活保護などの制度のポスター掲示やパンフレットの設置など議会質問した。
2、非正規、個人請負等々の実態調査と労働者派遣法(特に日雇い派遣)をはじめとする見直しを
貧困問題=労働問題といっても過言でない。コロナ禍で職も住まいも失った人々の大半が非正規で、製造業派遣では2008年~09年のリーマン・ショック後の年越し派遣村と同様、約3カ月契約の雇い止めや解雇が続出していることや、ウーバーイーツやアマゾンの配送をはじめとする個人請負で何一つ補償もない労働環境で働く人の社会保障と労働規制が必要である。
また、工場や警備会社などシフト制の労働契約が抜け穴になっており、雇用契約は継続していてもシフトを減らされ月額給与が数万円で寮費を払うと手元に全く残らない人の相談も数多く寄せられている。日雇い派遣は原則禁止されたが、実際には日雇い派遣で生計を立てている人が後を絶たない。
これまでの相談者の誰一人としてハローワークに相談に行くこともなくネットで職探しで、国の統計にカウントされておらず、労働現場の実態調査が必要である。
3、生活保護の制度の抜本的な見直しを
親きょうだいに知られたくないと生活保護申請のネックになっている家族に援助依頼の通知をする「扶養照会」は、足立区の2019年度の新規申請件数2275件に対して援助がたった7件であることがメディアでも大きく報道され、扶養が見込めず本人の意向によって扶養照会しないことを厚労省から自治体へ通達されたが、現場での周知徹底が必要である。
また、福祉事務所で生活保護を申請させない水際作戦も後を絶たず、相談・申請の録音・録画の可視化を求めている。
12年のメディアや一部の政治家による生活保護バッシングにより生活保護に対するネガティブなイメージが非常に強く、絶対に生活保護だけは受けたくないという若者を何人も目の当たりにしてきた。韓国が生活保護制度から国民基礎生活保障制度へと改めたように、生活保護から「生活保障」へと名称を改め、預貯金・資産要件の緩和や住宅費、生活費、医療費などを切り分けて必要な部分を支給するなど使いやすい制度へと抜本的な転換が必要である。
4、家庭環境に関係なく人生の選択肢を。給付型奨学金をはじめとする制度の整備を
相談者の大半が、ひとり親家庭や親からの暴力、養育放棄、親も生活保護など、生まれながらの家庭環境が将来の人生を左右しており、ほぼ全員が高卒か高校中退であった。
家庭の経済的事情に関係なく誰もが等しく学ぶことができる環境整備に向けて、特に給付型奨学金の大幅な拡充や専門学校や大学の学費負担軽減などの施策、生活費を給付しながら資格取得などの職業訓練メニューの充実が必要である。
5、住まいの貧困対策を
家賃滞納、派遣切り寮退去などで一度住まいを失うと、アパート確保のハードルが高く、寮で生活しながら製造業派遣や夜の街で働いている人は寮付きの仕事しか選択肢がない実態を数多く目の当たりにしてきた。
まず、家賃滞納でアパート退去とならないために住居確保給付金を恒久的な制度にすることや、家賃補助や空き家の準公営住宅的な活用などを支援団体が求めている。
首都圏ではアパート入居の際に連帯保証人でなく保証会社に加入して、家賃を肩代わりする責任はない緊急連絡先に登録する契約が多く見られるが、登録する家族や友人・知人もなく私が何人もの緊急連絡先に登録しており、公的な保証会社や緊急連絡先登録制度について議会質問した。