主張 ■ 高市政権がもくろむ「安保3文書」改定

 非核三原則の見直し、抑止力強化一辺倒は破局の道

アジアに生きる自立外交こそ展望

『日本の進路』編集部

 

 高市政権はわが国の安全保障政策の骨格とされる「安全保障関連3文書」の改定を年末までに閣議決定しようとしている。焦点は米国の求める防衛費増額などとともに「非核三原則」の見直しである。
 岸田政権による2022年の改定時に「非核三原則の堅持が明記された点に反対だった」という高市首相は、「改定は国家の命運を左右する重要な取り組み」と意気込む。日本維新の会は「核兵器を持ち込ませず」を否定し、「核共有」を提言して原子力潜水艦保有も主張する。
 防衛費大幅増額と「非核三原則」見直し、原潜保有などの改定は戦後日本の安全保障政策の、根本的な、あるいは決定的な転換となる。高市首相ら反動派は、わが国が核攻撃力を持った軍事大国としてアジアに登場することをめざしている。許してはならない。

「専守防衛」から「核共有」へ

 1954年自衛隊創設以来「専守防衛」はわが国安全保障の原則だった。次第になし崩しにされてきていたが91年、ペルシャ湾に掃海艇を派遣し実働させて以来、海外での軍事行動に公然と参加するようなった。
 2013年の第二次安倍政権で3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)がそろって制定され、15年には集団的自衛権の行使を容認する安保法制が成立した。
 前回22年の3文書改定は、「歴史的」転機となった。「反撃能力」という呼び名で国民をあざむき、敵基地攻撃能力の保有が明記された。先制攻撃力を持つ国になったことで「専守防衛」原則は事実上放棄された。さらに長距離ミサイル配備が打ち出された。
 こうして今年3月、熊本市の自衛隊基地に最終的に射程1500キロメートル(ちょうど中国・北京までの直線距離だ!)の長距離ミサイルが配備された。来年には静岡県小山町にも予定され、北海道、宮崎県など全国に展開予定である。潜水艦から発射可能な米国製トマホークの導入も決定されている。
 だが、核ミサイルなど核兵器問題が残されていた。
 今年の防衛白書ではわが国の外交安全保障環境として近隣地域に「核兵器を含む大規模な軍事力」を保有する「国家や地域が複数存在する」と指摘する。昨年12月には安全保障担当の首相官邸関係者が「日本は核兵器を保有すべきだ」と発言し大問題となった。さらに小泉防衛大臣は、核兵器を巡って「あらゆるタブーなく議論しなければならない」さらに「原潜も検討」などと繰り返し発言していた。
 このように米軍の核持ち込みを公然と認める方向に踏み込もうとしている。

世界の趨勢に逆行する
高市政権

 米軍が世界を支配する時代はイラン戦争で終わりを告げた。中国を先頭にグローバルサウスが世界の中心に台頭しており、米国の世界支配終焉は世界の共通認識である。
 東アジアでも安全保障の新しい時代が始まっている。米国中心の安全保障体制に依存していたASEAN諸国も地域の大国インドネシアが対中連携に踏み込むなど、中国との関係強化に動いている。中国はこの世界で「平等で秩序ある世界の多極化」をめざしていると見える。
 トランプは9月24日、中国の習近平国家主席をワシントンに迎え入れ、今年二度目の首脳会談を行った。発展する中国との貿易、投資など経済交流なしに米国経済は成り立たないのだ。ましてや11月の中間選挙を控えるトランプは中国との関係改善は避けられない。
 どの国も同様である。昨年末のフランスのマクロン大統領にはじまって仏英米ロという国連安保理の常任理事国のトップがすべて北京に行っている。30以上の国の首脳が今年すでに北京を訪問している。
 こうした中でわが国だけが高市政権の下で、中国を「脅威」とし、世界の趨勢に完全に立ち遅れた国家安全保障戦略を定めようとしている。
 本来、わが国にとっても中国との関係は不可欠である。
 日本の貿易では中国との関係が断トツで輸出も輸入も総額の二十数パーセントを占める。直接投資でも主要国の中で中国が圧倒的で約30億ドル、次いで韓国が22億ドル、米国20億ドル(25年)といった具合である。
 高市政権とその軍事大国化をアジアは警戒する。陸上自衛隊東北方面総監を務めた松村五郎元陸将も、「アジア諸国は『日本は強化した防衛力を使って国際秩序をつくり直すつもりなのか』という不安を持つでしょう」(朝日新聞7月8日)と警鐘を鳴らす。

米策略を利用し
軍事大国を画策

 田中角栄首相による1972年の日中国交正常化は歴史的事業だった。台湾が「中国の領土の不可分の一部」であることを確認し、米国の台湾海峡分断策動への加担を拒否した。
 ところが2019年菅首相は日米共同声明で「(台湾海峡の)両岸問題の平和的解決を促す」と中国の内政である台湾問題に踏み込んだ。これは1969年に佐藤栄作首相とニクソン大統領が共同声明で「台湾地域」防衛を再確認して以来である。国交正常化の原点を完全に否定するものだった。
 高市政権はさらに「台湾有事は日本の存立危機事態」と踏み込んだ。「防衛費」もGDPの3・5%目標を定め軍事力強化一辺倒だ。南西諸島を中心に自衛隊配備増強を急テンポで進めて中国に軍事対峙し、日米両軍は「演習」を繰り返す。当然にも中国も対抗する。
 これは米国の策略そのものである。日本と中国とは軍事的な対抗関係に陥って、極めて危険な状況となった。
 だが、高市ら反動派にとっては米国の衰退と策動、対日要求はチャンスでもある。軍事力強化を求める米国の「要求」に従う形で軍事大国となって、米国の後ろ盾の下、あるいは取って代わってアジアで振る舞おうとしている。高市自身が8月15日に語ったように、「日本はインド太平洋の輝く灯台」をめざしている。
 高市政権はすでに、武器輸出の全面解禁に踏み込んで、閣僚は武器商人となった。経済の軍事化が急テンポで進み、三菱重工などは生産を急拡大させ利益も急増だ。高市政権の成長戦略では軍需生産で経済活性化の方向が打ち出されている。
 だが、これは完全に時代錯誤だ。
 中国はすでにGDP一つをとっても日本の5倍近くで、米国を追い越す勢いの先進大国だ。「二度目は茶番」ではすまない。高市らが進んでいるのは破局への道である。

反省と謝罪の上に
日中関係の再構築を

 今年は中国東北部への本格侵略の号砲となった柳条湖事件(九一八事変)から95年である。
 歴史の反省と謝罪の上に日中関係の再構築のため政治が動くべきである。
 最近与野党の国会議員が北京を訪問し関係改善をめざしている。結構なことである。だが国内で高市首相らの中国敵視と対峙せず、中国に注文を付けるだけでは筋違いというものである。「台湾有事」発言に象徴される高市の一連の態度と敵視を批判し、撤回を迫るべきである。
 わが国として歴史認識と台湾問題で日中国交正常化の原点に明確に戻らなくてはならない。
 今、重大な岐路にある。年末の「安保3文書改定」を許さない世論形成と闘いが求められる。