370兆円を大企業ではなく生活苦の国民のために使え
『日本の進路』編集部
「物価高騰の秋」。とくに生活必需品、飲食料製品値上げ予定件数は9月が4531品目で本年の最多見通しだ。10月も、少なくとも年内は続くという。
いま国民多くの最大の関心事はこの異常な物価高、毎日の生活だ。国民は物価高対策、生活が成り立つ、生きていける政治を切実に求めている。世論調査では「高市内閣の物価高対策を評価する」はわずか18%(毎日新聞)。同調査で「内閣を支持する」人は過去最低で41%だが、その半分もいない。
秋には「食品消費税1%」の国会審議も予定されている。同調査ではそれを「評価しない」が47%で圧倒的である。
本当に国民生活を守る抜本的政策とそれに基づいた緊急対策が求められる。
国民生活はギリギリを「超える」!
4―6月期実質GDP(国内総生産)は年率換算1・1%増で、関係者予想の2%程度を下回った。GDPの半分以上を占める個人消費が8四半期ぶりのマイナスだったことが影響した。「食料品などの物価高の影響で家計が節約志向に向かっている可能性」と指摘されていた。それは多くの国民の実感であろう。
厚生労働省が7月に発表した「2025年国民生活基礎調査」によると、「生活が苦しい」と答えた世帯は55・4%。なかでもシングルマザー(母子世帯)では82・1%、児童のいる世帯では61・5%、高齢者世帯は52・1%。
独り者の若者・子育て世代だけでなく、高齢者を含めて幅広い層で生活不安が広がっていた。
食費の消費支出に占める割合を示すエンゲル係数(総務省。25年)は28・6%、44年ぶりの高水準となった。しかもそれは平均である。全世帯を10段階に分けた年間収入が「最も少ないグループ」では34・4%。生活費の4割近くを食費につぎ込まざるを得ない。
しかもこれは2025年の数値である。この年の9月からコメをはじめ食料品価格が高騰し始めた。そして今年2月からのイラン戦争・ホルムズ海峡危機での物価高である。
まずホルムズ海峡の平和と安定を
しかも原油高騰や円安などを受けた物価高が消費の分野に本格的に波及するのは夏から秋である。国民多くにとって食べるにギリギリの秋となる。
米国とイスラエルのイラン攻撃は、もちろんイラン国民の、中東地域の人びとの、命と安全の危機である。だがそれだけでなく私たちの暮らしの、生活の危機であり、農家や中小企業の経営の危機である。農家は飼肥料と光熱動力の価格高騰に苦しめられ、それに生産者米価の4割とも言われる暴落が追い打ちで、離農・倒産に拍車がかかる。中小企業、とくに零細な事業者も原材料高、物流費増などでの倒産廃業が激増傾向だ。
政府がやるべきは電気代やガス代、ガソリン代などを補助金で下げる前にやらなくてはならないことがある。
まずはこの危機の直接の契機である原油高騰をもたらしたイラン戦争、ホルムズ海峡危機を解決するためトランプ政権と向き合うことだ。米国のイラン攻撃に強く抗議し、戦争終結のために動け。国際刑事裁判所(ICC)赤根智子所長へのトランプ政権による制裁に強く抗議し撤回を求めろ。
ペルシャ湾、中東の平和と安定こそ、高市政権がやるべき物価対策のイの一番だ。
国民の「生活危機」に
根本から立ち向かえ
物価は、労働者にとっては賃金との相対的な指標である。非正規雇用をはじめ、すべての労働者の賃金大幅引き上げこそ物価問題解決の基礎だ。ところが高市政権は、石破政権が決めた最低賃金目標「2020年代の全国平均時給1500円」実現方針すら、先送りを決めてしまった。
日本の労働者の実質賃金は戦後順調に増えてきたが1996年ころに頭打ちとなり、今も低下のままだ。2020年を100とする指数で96年は116・5であったが、30年後の昨25年は98・0にとどまる。実額で見ても97年に37万1670円の現金給与総額だったが、昨年はまだ35万5941円だ(いずれも毎月勤労統計調査)。
他方、消費者物価(指数)は2025年を100として1997年には85であった。とくにこの5年ほどの上昇が大きい。その最大の原因は、極度の円安だ。とくに最近の39年ぶりといわれるような円安は、輸入物価を大幅に割高にして輸入に頼る企業も国民の生活も苦しめている。
しかし、安倍政権以来の円安誘導政策は輸出大企業の輸出促進と利益の大幅増加をもたらしている。
それに国民生活を苦しめるのは国民の闘いで戦後長くかかって積み重ねられてきた制度・規制のあいつぐ緩和・撤廃で暮らしが厳しくなったことだ。とくに『社会的弱者』と言われる厳しい条件に置かれた人びとは深刻だ。
いままた企業家たちが言い出して高市政権は労働時間規制緩和を進めようとしている。すでにあいつぐ労働の規制緩和で若者など労働者の多くは限界だ。極度の低賃金の非正規雇用は蔓延し、多くの若者たちが生きるにやっと、とても結婚・出産・子育てなど望むべくもない状況に追い込まれている。社会保障「改革」は、生産に役立たないものは「不用」と言わんがばかりの社会をもたらした。
原油高をもたらしたイラン戦争はこうした日本社会の根本問題を暴き出している。
多国籍化大企業と
金持ちだけが潤った
一方、笑いが止まらないのは多国籍化した一部大企業と資産家だ。
上場の大企業利益はこの5年連続最高を更新し、来年3月期もさらに利益増と企業は予測する。高額所得者も急増、その多くは株高など金融資産収益増だ。
ちょうどこの三十数年は消費税が導入され、税率があいついで引き上げられてきた時期だった。所得の少ない生活困難層ほど消費税負担は重い。それに社会保険料負担は低賃金の若者層の大きな負担となっている。
他方、大企業の法人税と高所得者の所得税とは、減税に次ぐ減税の30年間だった。一部の大企業と高額所得者だけが恩恵に浴している。しかも高市政権は、「成長戦略」と称して370兆円もの企業支援を決めた。
消費税そのものを問い直せ
1989年消費税導入以来37年間の消費税収総額は571兆円。他方、法人税、所得税、住民税の税収総額は606兆円も減った。消費税導入のねらいが、主に大企業の法人税と富裕層の所得税の減税のためだったことは結果から見て歴然だ。
「2年間食料品消費税1%」の国会議論が始まる。この機に消費税そのものの37年間を総括する必要がある。不平等と格差を広げた消費税を廃止だ。負担は、37年間も「減税」で潤ってきた大企業や金融所得者に求めて当然だ。
米の圧力はねのけ「国民の生活を保障する」政治へ
こうした背景には米国の要求、圧力も強かった。歴代自民党政権は撥ね返すことはなかった。日本の衰退の根幹にある問題だ。
高市政権はむしろその米国の圧力をテコに政権に就き、支配を維持しているかにも窺える。中国敵視の安全保障分野はもちろんのこと、金融や投資、貿易などことごとくトランプの要求を受け入れている。これでは潤っている大企業でさえ容易でなくなる。
いまこそ広範な国民が力を合わせるときだ。
