米国の戦争、国際法無視、核先制使用の恫喝に抗して

 地方・自治体から、若者たち女性から

平和と市民を守る改革を!

青山学院大学名誉教授 羽場 久美子

 「平和で持続可能な日本を目指して」ということで、「地方から、そして若者から政治を変える」という問題提起をさせていただきたい。

戦争を始めるのは政府 犠牲になるのは地域

 まず一つ目は、現在の政権・高市政権があらゆる手段と法律を使って、日本を戦争ができる国にしようとしている。これが最大の問題です。その背景には、日本の意図だけではなく、アメリカの強い意図があるということです。
 アメリカはG2と言い中国とは戦争しません。中国と日本とを敵対させて戦わせようとしている。日本は、そのアメリカの意図に基づいて着々と戦争の準備をしているということを最初に指摘したい。
 それを止めなければ犠牲になるのは私たち国民であるということ。全国に米軍基地があり、自衛隊基地がある。ミサイルが配備され、弾薬が次々に運び込まれている。それらの地域が真っ先に犠牲になる。それは皆さんの地域です。それを止めなければならない。止めることができるのは政府ではなくて皆さんの自治体からであります。
 自治体は、国民、住民の命と暮らしを守っている根本のところですね。私たちが生まれ、育ち、学校に行き、そして職場に行き、さらには年を取って介護の施設に入り、最後は亡くなっていく。それらは全て自治体で行われることです。戦争を始めるのは政府ですけれども、戦争が行われ犠牲になるのはそれぞれの地域、自治体であります。戦争が始まったら基地がある自治体が真っ先に犠牲になることを認識しなければなりません。
 今ひたひたと戦争への準備が進んでいる。日本だけではなくて世界においてもそうです。

戦争が広がる世界

 トランプ政権になって積極的に戦争準備を始めたのはこの2026年の1月からです。それまでは戦争を止めると言って大統領になりました。でもウクライナ戦争もイスラエルのガザ戦争もほとんど終わっていませんね。
 トランプ政権になってまだ1年半ですが、すごい勢いで世界に戦争が広がっていますね。ベネズエラの戦争、空爆があり、マドゥロ大統領が拘束されました。これ自体非常に大きな国際法違反です。同時にトランプは「私には国際法は必要ない」と。その後、グリーンランドをよこせと。さらに中南米に対しては、19世紀のモンロー主義をもじってドナルドのドンロー主義を唱えて、西半球はアメリカの支配下にあるということを言い、軍事介入、政治介入、経済制裁などあらゆることをやっています。
 イランも同様です。ここでは突然空爆で最高指導者を殺害し「民主化」しようとしたが数千年の歴史と文明をもつイランは堂々と対抗し世界はイランを支持している。
 これらはグローバルサウスと呼ばれる国々が、今平和を求めて、大国の行動に対抗して行動し始めている中で、グローバルサウスを分断しようとする動きでもあります。

中国の「核先制使用禁止」に、米英が反発

 私はこの4月から5月にかけて国連に行ってきました。国連で核拡散防止条約(NPT)の検討会議があったからです。私は広島での被爆者2世でもありますので。
 その1カ月の会合の最後に、核不拡散と核廃絶の最終文書が出される予定でした。議長国のベトナムの国連大使が中心になって努力してきました。しかし最終的にはご存じのようにこの最終報告は実らなかった。
 なぜか? 誰がこれを妨げたのか? それはメディアにはまったく報道されません。それを申し上げたいと思います。
 これが実現できなかったのはアメリカとイギリスの対応でした。
 中国が核兵器の先制使用禁止と非核国を攻撃してはならないという2点を、最終報告に入れるべきだと主張しました。これにほとんどの国が賛成した。広島・長崎の被爆者たちも賛成しました。
 これに反対したのがアメリカとイギリスだったのです。核抑止のためには核の先制使用も、非核国攻撃も必要であると反対し、最終文書からの削除を要求しました。
 その結果130カ国以上が賛成している核兵器の先制使用禁止が通らなかったのです。

中東非核地帯も米英仏につぶされた

 二つ目、もう一つは中東です。中東の国々がエジプトやサウジアラビアやイランも含めて、中東に「非核地帯」をつくるという構想を打ち出しました。そしてこれを最終文書に載せようとしたんですね。ところがこれについてもアメリカとイギリスが反対しました。
 なぜか? 中東に核保有国のイスラエルがあるからです。中東が非核地帯になるとイスラエルが核を放棄しなければならないからです。アメリカとイギリスが強く反対してこれもつぶされました。
 ところが朝日新聞は次の日、大々的に「核廃絶はもはや熱が冷めたか」と書きました。私は本当にびっくりしました。
 米英が核の先制使用禁止に合意せず、中東の非核地帯構想にも反対したことで最終文書は出せなかったのです。これは国連の「全会一致原則」という、一国でも反対したら成立しないという原則に従って、130カ国が核兵器の先制使用の禁止に賛成していたにもかかわらず米英フランスの3カ国がこれに反対したことで最終文書は成らなかったのです。
 これは強い反省を国連に生み出して、今、平和を望む決議の場合には1カ国、2カ国が反対してもこれを通すべきだというような話し合いがなされています。アメリカはこれにも反対している。反対しているのは核を保有し使おうとする先進大国なのです。
 これをどのメディアも明らかにしていない。それを皆さんに知っていただきたい。

国際刑事裁判所を
攻撃する米国

 今メディアが、「大政翼賛会」のように戦争準備に突き進んでいるような状況があります。新聞ではつい最近もイラン政府はテロリストだというような座談を載せたりしていました。現実は果たしてそうなのか? むしろ今世界で、一番武器を使い、人を殺し、赤ちゃんを殺し、そして国際刑事裁判所(ICC)や司法裁判所で批判されているのはアメリカとイスラエルのネタニヤフではないでしょうか。日本政府と大手メディアはこれに蓋をしようとしています。
 もうひとつ非常に大きな出来事がありました。
 アメリカのルビオ国務長官がこのICCを解体すべきだと言っています。それを日本政府は批判できないのです。その所長は赤根智子さんという日本人です。EUがきっぱりとこれに抗議する中、日本政府は批判できないでいます。「法の支配」の観点からアメリカ・イスラエルの国際法違反の行動をきちんと批判すべきです。

米国で進む地方からの変化

 しかし、アメリカでも自治体から変化が起こっています。今年1月、ニューヨークで、マムダニという民主社会主義を名乗るインド系イスラム教徒が市長になりました。戦争や軍事費に自分たちの税金を使ってほしくない、自分たちの税金を、子育てや住宅費や、貧困対策や弱者のために使うべきだと主張して支持を受け市長となった。ニューヨークに住んでいるユダヤ人の半分以上も支持したとも言われています。
 世界で最大の「先進国」の都市でイスラム教徒が市長になった。今やワシントンとロサンゼルスというアメリカの最大都市で、民主社会主義者を名乗るイスラム教徒や黒人が市長になりつつあるというのは象徴的だと思います。
 これは世界中でもそうです。資本主義国で格差が拡大していることと重なっています。世界で最も貧富の格差拡大が激しいのがニューヨーク、ロサンゼルス、ワシントン、東京、ロンドン、そしてパリです。つまり先進国の大都市です。
 富裕層にほとんどの富が集中し、国民、住民は飢えているということですね。これは地方自治体から来られた皆さんにとってはよく理解できることなのではないかと思います。大企業は、円安で肥え太っているけれども、必ずしも国民は豊かになっていない。高市政権の支持率も急激に下がってきているわけです。
 ではどうしたらいいのかということを、最後に申し上げて、問題提起とします。
 この特別国会では高市政権のもとで60の重要法案が次々と成立しました。この状況でどう闘うか? これらをひっくり返す。新しい政治をつくれるかどうかが、極めて重要な状況だと思います。だからこそ地方自治体から、私たちの生と死と暮らしを握っている地方自治体から、日本は二度と戦争はしない、国民を犠牲にしないということを訴えていただきたい。

NPT会議で頑張った
広島・長崎の若者たち

 5月の国連のNPT会議で非常に感動したことを申し上げて、展望につなげたいと思います。
 国連に来ていた広島と長崎の被爆4世の高校生たちが、被爆者に代わって、核廃絶、核の危険性を世界中の代表に訴えた。これが非常に大きな感動を呼んだんですね。
 今、被爆者の方々は10万人を切りました。それに対して高校生、大学生の人たちが、自分たちがおじいちゃんおばあちゃんの意思を引き継いで語り部になろう、世界に広めていこうということで、国連の場で熱心に各国の人たちに働きかけました。
 これが非常に大きな感動を呼んでおりました。今私たちは、広島・長崎・沖縄の若者たちが一緒になって平和を作る運動を支えようとしています。

地方から政治を変える

 著しい物価高、食の安全保障放置、消費税、社会保障削減、移民人権のさらなる悪化を、なんとか止めていかなければなりません。地方から、若者から、女性から、皆さんから、政治を変えていきましょう!
 まず、第1に、沖縄知事選、玉城デニー知事の勝利を!
 二つ目、地方自治体から、よりよい社会をつくってください。
 食の安全保障、子供の貧困・シングルマザーの貧困解決。女性首相の下で女性の権利は縮小し、円安は日本の格差を大幅に拡大しています。大企業の利益増大は著しく、政府税収の大幅拡大、ところが中小企業は倒産急増、貧困家庭・年金生活者は、買い物ができません!
 私はスーパーでの買い物上限を3000円に限定しています。1年前まではそれでカゴいっぱい買えた。今はカゴ半分しかないです。「高いですね!」と言ったらレジの方が、「ほぼ2倍ですよね!」と言ってくれました。
 地方自治体から、弱者にやさしい社会を!
 第3は、NEAR(北東アジア自治体連合)です。
 今北東アジア9カ国91自治体が、自治体連合に入っています。平和、地域経済の発展、若者育成を望む団体です。自治体からの平和・経済・共生を実現するため、ぜひ多くの自治体がNEARに加盟してください!
 第4は、若者、女性による平和の力。
 5月、「戦争反対!」の若者・女性のデモが、全国に拡大しました。国連ニューヨークでの広島・長崎の若者たちが、平和、核廃絶に向けひたむきに活動し、各国に感動を呼びました!
 ぜひ皆さん、女性、若者たちと結び、地方自治体から、地域の住民から平和と命と暮らしを守る、を実現していただきたい。
 自治体が平和と住民を守らなければ、再び日本が、皆さんの地域が、一人一人が犠牲になるということを申し上げて、問題提起とさせていただきます。

 (本稿は第22回全国地方議員交流研修会での問題提起である)