フクイチ事故から満15年

すでに世界は再生可能エネルギーに大転換

福島県議会議員 古市 三久

 事故から満15年経過したが、「原子力緊急事態宣言」は解除されていない。2011年12月16日政府は冷温停止状態に達したと発表したが、緊急事態への「応急対策を実施中」という状況が続いている。
 被災地域の被ばく基準を、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告の参考レベル上限値である20mSv(ミリシーベルト)のまま据え置いている。事故前一般公衆の被ばく限度は年1mSvだった。速やかにそこに改めるべきである。
 「原子力緊急事態宣言」が継続していることは、福島県と日本は、現在も危険と隣り合わせで生活しているということになる。

深刻な人口減少

 福島県の人口減少は11年の原発事故以降急速に進んでいる。今なお4万人以上が県内外で避難生活を続けている。
 2010年の人口は202万
9064人だったが、25年は17
1万1937人と15年間で約32万人減少した(減少率約15・6%)。震災直後(11~13年)は「社会減」が圧倒的だったが、14~18年は社会減と自然減と二重の減少になった。14年から避難指示解除が始まったが、帰還者は高齢者が多く、若い世代は県外・他地域へ定住するケースが多くなっている。20~25年は12万人が減少、人口減少のペースは急速である。
 福島県は、震災・原発事故による大規模な社会減が人口構造を変化させた。現在は、全国的な少子高齢化以上に自然減が進行する構造へ移行した。

中間貯蔵施設と汚染土

 中間貯蔵施設は汚染土や廃棄物を、福島県外で最終処分までの間一時的に集中的に保管・管理している。施設内には約1400万㎥(東京ドーム約11杯分)の汚染土等が保管されており、2045年3月までに福島県外で最終処分を完了することを目指している。しかし、最終処分地は現時点でも決まっておらず、県外最終処分の実現が今後の大きな課題となっている。
 政府は、8000Bq‌/㎏(ベクレル毎キログラム)以下の汚染土を「復興再生土」と呼び方を変えて、各地の道路建設や埋め立てなどの使用を考えている。埼玉県所沢市や茨城県つくば市(国立環境研究所)や新宿御苑において実証事業を計画しているが、地元の反対で頓挫している。
 核のゴミ(核廃棄物)は閉じ込め・遮蔽・集中管理が放射線防護の原則である。拙速に核のゴミを海や国内に拡散させ自然環境を放射能で汚染することはやめるべきである。運搬等のコストも膨大になり、国民負担も増大する。
 事業者が出したゴミは「排出事業者の責任」を廃棄物処理法第3条で厳しく規定されている。
 放射性廃棄物について政府は、100年単位の長期計画の中で、放射性物質の自然減衰による低減と、廃炉事業の推移を見ながら、原発敷地など東京電力の敷地を最終処分場とする計画を検討すべきである。

福島第一原発の現状

 1~3号機の原子炉内には推定880トンの燃料デブリがあるが、放射線量が高く燃料デブリの本格的な回収に至る道筋は全く見通せていない。
 政府と東京電力が策定した、廃止措置(廃炉)等に向けた「中長期ロードマップ」は、策定以降5回改訂された。だが、工程の大幅な遅延にもかかわらず廃止措置終了までの期間を30~40年後とする目標は変更されていない。
 福島第一原発は、燃料デブリを無理に取り出すことは行わず、原子炉圧力容器・格納容器を含めた事故炉全体を堅牢な施設で覆い、長期間(約100年程度)にわたる監視・維持管理を目指すべきである。そして新たな法整備を含め、放射能の減衰と技術革新も進めて、将来の世代がより安全な方法で解体することを目指すべきである。

第7次基本計画

 第7次エネルギー基本計画は、「可能な限り原発依存を低減する」という原則から「最大限活用する」と舵を切った。原発の再稼働と「次世代革新炉への建て替え」の検討を推進している。
 30年度の原子力発電比率を約20%程度とする目標を達成するには、現在の再稼働炉だけでは足りず、さらに多くの原子炉が再稼働し、高い設備利用率で運転することが必要となる。次世代革新炉は、革新軽水炉(改良型軽水炉)など5種類を挙げている。「革新軽水炉」(商用炉)以外は、現状について「実証炉」や「原型炉」と書かれており、実用段階にはほど遠いことがわかる。
 だからであろうか政府は26年6月「今後の原子力政策の方向性と行動指針(案)」を公表した。行動指針は、エネルギー安全保障を理由に原子力の「最大限活用」を必要不可欠としている。それでも指針は30年度ではなく40年度で原子力の構成割合を2割と見ている。それとても建設費の高騰、建設期間の長期化、原子力産業自体の衰退などで実現は見通せないのだ。

原発事業者支援の電事法案

 現在、「電気事業法の一部を改正する法律案」は参議院で審議中である。
 「原発再稼働を直接認める法律」ではないが、「電力需給の観点から原子力発電所の廃止・新設調整」「原子力を含む大規模電源への資金支援」「原子力で発電した電力を送る送電網の整備促進」などが含まれている。
 これは、第7次エネルギー基本計画で掲げられた「安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用する」という原子力政策を制度面から支える位置付けになっている。
 再エネの主力電源化や脱原発とは正反対の大手電力支援策であり、「大規模発電事業者」が「大規模送電線」と「大規模電源」を整備しやすくするための支援策である。
 法案の趣旨である「情勢の緊迫化」を考慮するなら、一刻も早くエネルギー自給率を引き上げることであり、そのためにも再生可能エネルギーの主力電源化である。

電気は余っている

 すでに世界のエネルギー市場は大転換をしている。その主役は太陽光発電と蓄電池である。この10年間ほどで世界の太陽光発電は12・5倍に増え、世界電力の8%以上を賄っている。
 米IEEFA(エネルギー経済・財務分析研究所)は、日本の再生可能エネルギー導入を阻んでいる主因が、技術ではなく系統接続の制度設計にあるとする分析を公表した。
 以下の3点を指摘している。
 ①25年12月時点で、太陽光・風力・蓄電池の系統接続検討容量は約3・17億キロワットに達していた。そのうち実際に系統に接続できたのは8700万キロワット、全体の27%にとどまっている。
 ②日本の再エネ導入の伸び悩みは資源量や技術の問題ではなく、制度の組み立てに起因すると整理する。
 ③日本の政策資源は、商業運転の時期が後ろにずれる先進炉や新設原発ではなく、系統接続費用の負担方式・申請列の管理・地域間連系線・出力抑制ルールの組み直しに、優先して振り向けるべきである。
 電気は不足していない、再エネ電力は余っている。有効に活用する制度設計の問題であり、「大規模発電事業者」の胸三寸になっている。
 日本は今深刻な人口減少、経済的な地位の低下など衰退の一途。回復には、制度を変えて再エネによるエネルギーに自給率を上げることも優先課題だ。