食料危機と安全な食料の自給  熊本

熊本の集い 鈴木宣弘先生の熱弁に聴き入る

 食と農を考える熊本の集いが4月10日(日)、熊本市内で開かれた。農業を取り巻く厳しい状況を憂える生産者と消費者でつくる実行委員会が主催、約80名が参加した。農繁期と重なり、その上コロナ禍の中で、参加者の数が心配されたが、会場は、追加の椅子と机を出すほどになった。しかも、学生から高齢者、生産者と消費者、3分の1は女性が占めるなど、参加者の幅広さが注目された。

迫る食料危機、抗議に立ち上がる世界の人々

 集いは、女性司会者の開会あいさつでスタート。上田誠一実行委員長(スイカ生産者)が、農業の厳しさと日々対峙している現状を訴え、鈴木先生の講演に移った。
 講師の鈴木先生は、農業の枠にとどまらず、また、グローバルな視点で「食と農の過去・現在・未来」について、研究されている。その研究をさらに実学として講演、90分熱弁をふるわれた。食料危機はフィクションではなく、現実のものとして迫っていること。食の安全にもふれ、農薬や遺伝子組み換え・ゲノム編集などで、すでに私たちの健康が侵されていると指摘。また、種子法廃止・種苗法改悪など、企業の農業・食料の独占支配と農業者の栽培する権利が奪われていると訴え、農業破壊の現状に警鐘を鳴らした。
 このような動きに対して欧米では、抗議運動が起こり、巨額の賠償を勝ち取っていることや政策変更を実現していることが報告された。そのうえで、日本政治の貧しい現実を指摘し、その結果、欧米で行き場を失った危険な食料品が、日本を目指していると注意を喚起した。
 90分に及ぶ先生の講演は、その内容はもちろんのこと、ユーモアを交えた話術に、参加者は引き込まれてしまった。そして、先生の熱弁に応え、質問・意見が相次ぎ、熱気あふれる集いとなった。
 第2部として、軽食を取りながらの懇談会もセットした。そこでも活発な質問や意見が出され、講師と参加者の距離が縮まった内容となった。

新しい質を求めて

 今回の取り組みに際し、私たちは、集会のコンセプト(基本的方向性)を重視することにした。この種のイベントでは、ややもすると、参加者数を重視するあまり、そのために手段を選ばないことがある。例えば、特定の団体や有力者に安易に頼り、趣旨の説明や参加への説得を、後回しにしてしまうことがよくある。これでは参加者を多く獲得できたとしても、そのイベントの成果は半減しかねない。
 そこで、私たちは、「自らの意志と責任で参加する」、「生産者と消費者の連携」、「女性と若者」にこだわった。そのために、まず実行委員会の構成も重要だとして、県下に足を運び実行委員を幅広く募ることにした。その結果、23名で構成する実行委員会(過半数は生産者)を結成できた。参加呼びかけも、農家や市民活動家などを訪ね、丁寧な説明と説得を行ったことが、幅広く多様な参加者につながったといえる。

政治の垣根も超えて

 また、今回は、政党の枠を超えて、自治体議員が参加された。この種のイベントは、ややもすると政党の支持者拡大運動になりがちである。それを超える新しい発想と質が、求められることを忘れてはならない。
 鈴木先生は講演で、経済の安全保障はあっても、国存亡の基本である食料の安全保障のないこの国の姿を明らかにするとともに、それをいかに変えるかを問いかけた。今回の食と農を考える熊本の集いの意義は、まさに、この問いに答えることにほかならない。

(広範な国民連合・熊本準備会
世話人 山下初男)