安倍政権打倒の国民運動の発展を促す
『日本の進路』編集部
通常国会も終わり議会政治の焦点は7月21日投開票の参議院議員選挙となった。そこでは安倍政権の6年半と今後が問われる。とくに32の1人区を中心に与野党の攻防が繰り広げられ、各党の消長も問われる。
動かしがたい環境としての国際社会の緊張は著しく高まって、わが国を激しく揺さぶる。わが国輸入原油の8割が通過するホルムズ海峡は、トランプ政権の策動でいつ戦場となっても不思議でない。そうなれば原油供給遮断、価格高騰で経済に大打撃である。一方アメリカは、「数週間」の期限でわが国に農畜産物輸入拡大を迫っている。アメリカの対中国戦略の最先端で、「軍事大国化」をもくろむ安倍政権は南シナ海にまで自衛隊艦船を派遣し危険な役割を買って出ている。どの問題も一触即発である。
わが国経済は金融と財政赤字で辛うじて維持されてきたが限界である。消費税増税にとどまらない国民生活の苦難が待ち受ける。金融庁も認めたように厚生年金は制度も持続不可能で大問題だが、支給額がその半分にも満たない国民年金受給者や無年金者などの生活はもっと大問題。一部の国民はアベノミクスで金融資産を膨らませたが、大多数の国民生活は持続不可能、限界である。
こうした重大な情勢が進行する下での参院選である。安倍政権を追い詰め、憲法改悪など対米従属下での軍事大国化の野望を阻止しなくてはならない。共同して安倍政権打倒の国民運動を発展させなくてはならない。
広範な国民連合は、会員である推薦候補と1人区での野党統一候補を支持し奮闘するとともに、国民運動を発展させるため全力を尽くす。
安倍首相の「世界をリードする」という欺瞞
米中衝突は、対米従属国でありながら中国を最大の貿易相手国としてアジアに生きるわが国を翻弄する。
しかもトランプ大統領は、中国がダメなら日本があるさとばかりに経済危機を日本にも転嫁して乗り切ろうと必死である。日米FTA(自由貿易協定)交渉が事実上進み、農畜産物も、自動車も、為替自主権制限まで要求されている。中国を敵視して安全保障をアメリカに依存する日米同盟強化路線では経済属国化を拒否する道はない。
日米同盟路線ときっぱりと手を切り、対米隷属の歴史を清算し、「自主・平和、アジアの共生」に踏み出す選択の時である。
ところが安倍政権と自民党は売国的政策をごまかすために、参院選政策のトップに「力強い外交・防衛で、国益を守る」「世界をリードする、主導する」とうたった。G20もあってマスコミも安倍政権を持ち上げる。
しかし、安倍首相や菅官房長官が口で何と言おうが事実は変わらない。安倍首相は河野外相を伴って「緊張緩和に役割を果たす」と6月12日、イランを訪問した。結果はすでに明らかである。安倍首相は、「子供の使い」と世界中で笑われている。
安倍首相がイランの最高指導者ハメイネ師と会談するタイミングで、ホルムズ海峡では日本船舶など2隻のタンカーが攻撃を受け炎上した。以後、アメリカは一帯での軍事緊張を煽ってイランへの圧力を強めている。そもそもイラン訪問を言いだしたのは安倍首相ではなく、4月のワシントンでの日米首脳会談時にトランプ大統領が提案したのは周知のことである。トランプ大統領は5月の首脳会談では、「早く行ってくれ。この1週間は他のことはよいから」とまで語ったと「日経新聞」は伝えた。
これでは独立国の首相とはとても言えない。安倍首相の「日本の国益を守る」はただただ選挙の票目当てに国民を欺くもの以外でない。与党でも民族の前途に責任を持とうとする政治家ならば国民に真実を語るべきだ。
「一歩前進」、野党と市民連合の共通政策
激動の世界で日本はいかに生き抜くか。参院選の中でも野党というのであればきちんとすべきである。際限ない軍拡と対米追随の道を歩むのか、安倍首相とは異なる日本の生き方を問うべきだ。
全国32の1人区で野党統一候補が実現し、「市民連合」と4党1会派は「市民連合の要望書」に調印した。その内容はこれまでよりも踏み込んでいて、沖縄関連の項目を単独で設け、新基地建設中止と環境の回復、普天間飛行場の早期返還の実現と撤去、それに日米地位協定の改定などが盛り込まれた。これは一歩前進であり歓迎する。
しかし、「共通政策」は米中衝突の国際情勢とその中での日本の生き方への問題提起はない。野党は世界を見ておらず立ち遅れは否めない。日米同盟強化路線にとらわれているからでもある。
選挙に勝つためにもこの問題は重要である。安倍第2次政権をもたらした12年総選挙から、安倍首相の「強い日本」の宣伝に野党は負けてきた問題を考えなくてはならない。国民の生活、経済問題はきわめて重要である。しかし、大国間対立が激化し戦争も含むような国際社会で、野党が国の運命に関心がないように見られたら広い国民的支持は望むべくもない。
農林漁業と地方の再生は国民的課題
肝心の生活・経済問題もどうか。疲弊する地方・農林漁業の課題、商工自営業者や中小企業の困難を打開する課題など、経済政策・国民生活の危機打開の政策がまったく触れられていない。消費税増税反対は重要だがそれだけでは、すでに深刻な危機に直面する農林漁家や零細な商工業者にどれだけ響くだろうか。
いま自民党の政策は徹底した選挙シフトで、まったく欺瞞的だが中小企業や農民の要求に応えているかに装っている。そうした中でだけに危惧が残る。
3年前の選挙で舟山康江参議院議員を圧勝させた山形選挙区での今回の政策協定では、さすがに「家族農業を守る」がトップである。滋賀県の「共通政策」には、「農林漁業の施策を強化する」という項目がある。
TPP11と日欧EPAが発動し、すでに農畜産物輸入には大きな影響が出ている。日米間合意も目の前である。農畜産業の文字通り瀬戸際で、農林漁家の危機感はすごい。この課題は民族の前途に不可欠な全国民的重要課題である。
選挙という意味でも、農山漁村の人々の支持の行方は重要だ。とりわけ1人区の結果を決定的に左右するだろう。統一地方選を見ても、地方の保守層・自民党は分裂している。この政治状況を有利に生かす戦略がなくては勝てない。
国民運動発展へ体制強化を
選挙後のわが国は大変な局面となる。政治は対応を迫られ、現状にとどまれないだろう。
トランプ大統領は自分の選挙で農畜産家の支持をつなぎとめるために、参院選終了を首を長くして待っている。自動車産業も同様だ。
6月に発表になったいわゆる「骨太方針」には、選挙対策で外されていた社会保障給付削減と負担増が盛り込まれ、消費税増税とともに始まる。国民生活危機打開は喫緊の課題である。
沖縄県民の闘いも、防衛省がごまかした秋田県と山口県への陸上イージス配備問題も、佐賀県のオスプレイ配備問題も山場を迎える。
何よりも中国や韓国、朝鮮など近隣諸国との外交関係など国の進路の問題も喫緊の課題である。
参院選の闘いを強めるとともに、秋以後をにらんで広範な戦線を構築し国民運動強化に向けた努力が必要だ。