関連企業集中地域で影響調査活動を決定
自動車産業の構造的変化、県民経済への打撃必至
広範な国民連合・福岡
自主・平和・民主のための広範な国民連合・福岡の第19回総会が、昨年12月3日、福岡市で開催された。この2年余の活動の広がりと深まりを確認し、今後の組織強化と運動の発展に確信がもてる、活気ある総会となった。
宜野湾市在住のミュージシャン、KEN子さんの「オープニングコンサート」で会は始まった。代表世話人である久保山教善さんは開会あいさつで、明治学院大名誉教授・森井眞さんの「主人持ちの国・日本は卑しい国になる」という言葉を引いて、対米隷属からの脱却を熱く語った。
来賓として、参議院議員・野田国義さん、県議会議員・原竹岩海さん、県日朝友好協会会長・北原守さん、在日朝鮮人総聯合会県本部副委員長・徐好植さん、県教職員組合連絡協議会議長・辻傑さんが、激励と連帯のあいさつを行った。
また大島九州男参議院議員、古賀ゆきひと参議院議員、JA県中央会の倉重博文会長、佐賀空港への自衛隊オスプレイ等配備反対地域住民の会の古賀初次会長、平和・人権・環境福岡県フォーラムの辻傑代表などからのメッセージが紹介された。
記念講演は、「アジアの平和・共生をめざして~問われる国の進路」と題して、国民連合全国代表世話人の一人である佐々木道博さんが行った。佐々木さんは「朝鮮と日本は合わせ鏡のような関係にある。1950年の朝鮮戦争開始以降、米国は日本の再軍備阻止の方針を変え、戦争に協力させる方向に舵を切る。『米軍は治外法権』『自衛隊の統帥権は米軍が持つ』などの日米密約が結ばれ、日本はこうした日米関係の中で経済建設を優先させた。朝鮮は、朝鮮戦争で国土が壊滅的な被害を受ける中で、自主・自立・自衛をスローガンに国家建設する道を選び、困難を抱え込みつつ今日に至る。日朝の和解と日本の自主の実現なくして、東アジアの平和はありえない」と訴えた。また「東アジアへの玄関口として、福岡は東アジアを向いている姿勢を見せてほしい」とエールを送った。
続いて上村和男事務局長が、この間の活動とその評価、以降の活動方針等の議案を提案。「オール沖縄の闘いに学ぶ旅」、「TPP国会承認に異議あり!福岡県民の集い」、「辺野古埋め立て土砂搬出STOP!福岡県民の集い」、「恵みの海・豊かな大地を守ろう!県南集会」と続く重要な取り組みの中で、多くの団体や個人と協力関係を築き、地域組織の結成や活性化につなげた成果を紹介した。
また小川県政が「北部九州自動車産業アジア先進拠点推進構想」を策定し、自動車産業の展開を県政の重要な柱の一つとしていることに関わって、急速に進むEV(電気自動車)化などの構造的な変化が、県の経済や県民生活に重大な影響を与えることを指摘。自動車関連企業が集積する京築地区(日産関連)、直鞍地区(トヨタ関連)、久留米地区(ダイハツ関連)などに入り調査活動を行うことなどを含む、活動方針を提起した。
その後、各界から特別報告。非正規雇用フォーラム福岡事務局長の泉野時彦さんは、非正規雇用労働者が増えている現状を踏まえて、労働者の権利獲得のために頑張るという決意を述べた。
高江現地行動連絡会共同代表の仲村渠政彦さんは、「沖縄では、県民の意思を蹂躙して軍事基地建設が強行されている。朝鮮との戦争をあおる日米政府の挑発・演習によって、在沖米軍は戦時下のような状態だ。その中で住民は超ど級の騒音被害、オスプレイや大型輸送ヘリの墜落、米兵による犯罪など生活そのものが脅かされている。辺野古では工事進捗の遅れに焦る防衛局によって、違法工事が強行されている。現地では工事反対・阻止の非暴力の闘いが連日繰り返されている。沖縄問題は日本の問題だ。日米安保を問い直し、アジアの平和を求める運動を創ろう。沖縄はその最先端にいる」と、力強く訴えた。
小郡環境保全米研究会代表で小郡市の農業委員である重松淳一さんは、「欧米では小麦粉アレルギーが広がり、日本の米粉を輸入する動きがある。遺伝子組み換え作物の影響としか考えられない。遺伝子組み換え作物を作らないことが、日本の農地と自然環境を守ることにつながる。私は小さなグループで、地産地消を進めている。それが私にできるTPP反対の運動だ」と訴えた。
続いて防衛大学校人権侵害裁判の原告の母である乃山命子さんが報告した。原告の青年は防衛大入校直後より、上級生から「指導」と称して暴行されるなどの人権侵害を受ける。退学後、彼は民事裁判により事件の全容を明らかにし、防大生の人権を確立するため闘っている。乃山さんは「防大では600人が着校して卒業するのは400人を切っている。『指導を厳しくしてついてこられない者は切れ』という指導があったとも聞いている。こういう環境で育った人たちが自衛隊の幹部になっていきます。これは本当に恐ろしいことです」と結ばれた。
大牟田地区懇談会からは、佐賀空港への自衛隊オスプレイ等配備反対地域住民の会のメッセージが紹介され、この間の取り組みを通して住民の会との連携が進んでいることが報告された。また住民の会が取り組んでいる佐賀県知事への要請葉書活動への協力が訴えられた。
その後、特別報告や会場からの意見を踏まえて、上村事務局長が討論のまとめを行い、参加者の拍手で議案を採択した。全国世話人の一人である中村元気さんが「雨にも負けず、アベにも負けず、頑張りましょう」と閉会あいさつを行い、最後にちくし懇談会の西川真人さんの力強い音頭で団結ガンバローを三唱し、活気に満ちた総会を終えた。
この総会を契機にして、運動の発展と組織強化に向けての新たな取り組みが求められている。当面の活動の重要な柱のひとつは、予想される自動車産業の構造的変化と県民生活への影響について、調査活動を開始することである。経済産業省の試算によると、自動車のEV化によって内燃機関部門を中心に約4割の部品が不要になるとされている。それらの製造に関わる関連企業は仕事がなくなり、労働者は職を失うことになる。予想されるこうした事態に対して、県も市町村も問題意識を持っていないように見える。まずはトヨタの関連企業が集中する宮若市で、地元の議員と協力しながら、学習と調査活動を開始すべく、準備を始めている。
また県総会で報告してくれた人たちとの信頼関係をより確かなものにすることも重要な課題である。大牟田地区懇談会は防衛大学校人権侵害裁判の原告の母親・乃山命子さんを招いての報告会を企画しており、また賛同会員が所属する農業問題に関わるグループでは、小郡環境保全米研究会の重松淳一さんを招いての学習会を計画している。
県総会の成功を基礎に、一歩一歩確実に前進していきたいと考えている。