医療提供体制・公衆衛生の課題
鹿児島大学教授 伊藤 周平

1 問題の所在―検証されない新型コロナ感染症の5類移行後
3年余りに及ぶ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックのもと、感染拡大地域では、入院できる病床や医療従事者の不足で、多くの感染者が入院できず「自宅放置」となり、高齢者施設の高齢者や精神科病院の精神障害者は施設に留め置かれ、必要な医療を受けることができないまま亡くなった(詳しくは、横山壽一・井上ひろみ・中村暁・松本隆浩『コロナ「留め置き死」』旬報社、24年参照)。医療が提供されず、本来であれば救える命が救えない「医療崩壊」が生じ、高齢を理由に人工呼吸器の利用を拒否される、認知症や精神疾患のある患者の入院が対応困難との理由で忌避されるなど、とくに高齢者や障害者について入院治療の優先順位が低位に置かれる医療差別(「いのちの選別」)がさまざまな場面でみられた。 続きを読む





全国の地方議員有志は8月31日、田村憲久厚労相宛ての『コロナ陽性者の「自宅療養」をやめ、国の公的責任による臨時病院の病床増で入院治療を求める』要望書を提出した。賛同地方議員306人を代表して五十嵐やす子・板橋区議が参院議員会館で厚生労働省の担当者に手渡した(写真、要望書、別掲)。第17回全国地方議員交流研修会で報告者となった山田厚・甲府市議(一般社団法人全国労働安全衛生研究会代表)が呼びかけ(談話、別掲)、全国地方議員交流会事務局も協力した。コロナ感染症対策で人数が絞られたが、山田市議の他、福島みずほ・社民党党首、松尾ゆり・杉並区議(広範な国民連合・東京事務局長)、他が参加した。
8月10日に開催された全国地方議員交流研修会で、コロナ禍の困窮者支援の現場からの報告を行った。コロナ禍で失業、家賃滞納や派遣切り寮退去などで職も住まいも失った人々を支援する現場から見えてきた課題と、国や自治体に求める政策について述べたい。
30年近く前、大学4年生の時に東京・山谷地域にボランティアに行き始め、卒業後仕事をしながら新宿で野宿を余儀なくされる人たちのところに通ってきました。