少なくともまず東アジアを戦争のない地域に――長老たちの提言

共有(シェア)Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin

「どうやって他の国が攻めてこないようにするか」を、国際政治・外交の本旨に

東アジア不戦推進機構代表 西原 春夫

各界長老が連名で発表した「東アジア不戦」の提言を紹介するにあたって、編集部は、「提言」を提唱され、運動を進めるために「東アジア不戦推進機構」をつくり代表を務めておられる西原春夫さん(早稲田大学元総長)からメッセージを頂いた。

 私どものプロジェクトの趣旨と意義についてご賛同賜り、ご支援いただけるとのお言葉、大変心強くうれしく存じました。
 私どもがこのプロジェクトを進めるにあたり最も苦心したのは、それぞれお考えの違う長老、支援者の方々が「不戦」のみについて同意できるようにするためには、対立する個々の問題についての見解を組織として表明しないという基本方針を堅持することでした。そしてそれについての理論構成にもしっかりしたものがなければならないということでした。
 結論として到達したのが「超克」の理論でした。この点については、「対立超克の理論」をお読みいただきたいと存じます。中米の対立、慰安婦・徴用工問題、尖閣・竹島問題、北方領土問題。それぞれについて、例えば私自身にも見解がありますが、それを出さないためには、「人類はいま対立や戦争をしている時ではないのだ」ということを強調することによってこれを「超克」するという方法をとるほかないというのが結論でした。このたびのコロナ問題をむしろ活用しようとしているのがこのプロジェクトでした。
 そういう点からすると、貴誌の基本方針とは多少異なるところがあるようにも思われます。ただ「不戦」という点では、貴誌の読者の方々にも共感いただける面があるのではないかと拝察いたします。ひょっとすると、超克の理論にもご賛同いただける方がいらっしゃるかもしれないと存じます。「敵が攻めてきたときどうやって国を守るのか」という、敵をつくる考え方と並行して、「どうやってどの国も攻めてこないようにするのか」を国際政治・外交の本旨にしようという「新安全保障論」(これは現段階では西原個人の理論です)にも耳を傾けてくださる方がいるかもしれないと思う次第です。
 そのような私どもの基本的思想を前提とした上で、一致した面でご協力いただけるならば、崇高な理想達成のためまことに幸せであると存じます。その点のご配慮をお願いしつつ、ご返事申し上げました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

「東アジア不戦」提言発表会での西原春夫氏の趣旨説明

 「提言発表会」。これは太平洋戦争時代を直接体験した85歳以上の日本の長老20人が、「東アジアの不戦」を目的とする具体的な提言をご披露申し上げる会です。
 長老の方々は、これまで日本の発展を、それこそ各界最前線で進めてこられた第一級の方々ばかりですので、年齢順にお名前を並べさせていただくにとどめ、組織はつくりませんでした。したがって、長老の代表者は置いておりません。
 ただ長老の提言を実現させるためにはこれを支援する組織が必要となります。その組織を私どもは「東アジア不戦推進機構」と呼んでおりますが、そこには責任者が必要です。代表を務めるのが私西原春夫であり、代表代理を務めてくださるのが有馬朗人先生です。
 提言の趣旨、意義、背景とする歴史認識、提言の思想などは、「企画書」に詳細に記述してありますので、それをぜひご覧おきいただきたいと存じます。行間の奥を探っていただきますと、これが容易ならざる企画であること、単なる平和運動ではなく、「人類はどのような方向に進むべきか」「国際社会の中で日本はどのような役割をどのようにして果たすべきか」を明らかにし、これを推進する実践活動であることに気づかれると思います。
 皆さん。今、人類は新型コロナウイルスという自然の猛威にさらされ、これまで長年かけて築き上げてきた日常の習慣や人間関係がズタズタに切り裂かれようとしています。感染抑止のため国や自治体などの地元が権力を集中させざるを得ない必要から、国際性を否定したり、国家主義が強調されたりする動向が表面に出てきてしまっています。
 確かにそのような動向は否定できません。しかしこのたびのコロナ問題は、半面、このような動向とは正反対の道を歩むよう人類に教えていることに気づかされます。はっきりさせなければならないのは、新型コロナよりも恐ろしい新たな感染症発生の可能性が地球温暖化に伴って強くなってきたという認識です。今の新型コロナを克服すれば終わりではないのです。そうだとすれば、現在すでに人類は、対立を捨て、戦争をやめ、連帯してこれに当たらなければなりません。人類の存在を次の世代に引き継いでゆくためには、今こそそれが必要不可欠です。日本の長老の提言は、世界に向けてそこまで呼びかけるという性格を持っています。
 皆さん。企画書をよくお読みくださると、なぜ日本の長老が世に先駆けてこのような提言をするかの理由がはっきり理論づけられているとお思いになると存じます。そこには、戦争やその原因となる対立の愚かさを身にしみて感じ取ってこられた長老の方々の深い深い想いが秘められているのに気づかれると思います。
 今日はくしくもお盆の最中です。考えてみますと、戦争への深い想いを基礎に戦争放棄に向けた具体的な施策を提案する私どもの企画は、戦争で失った多くの人の命を、前向きに生かす道であると言えるのではないでしょうか。そういえば、コロナ問題という不幸な出来事を人類の連帯、不戦に結び付けようとする私どもの企画は、コロナで命を失った人々の無念の死を意義あらしめることになるのではないでしょうか。
 長老の方々の決意には、そういった亡き人々への鎮魂の想いも込められていると思わざるをえません。記者の皆さんには、そういった先輩方の万感の想いを、ぜひ国民全体に伝えてください。そしてその想いが、ひいては世界をあるべき方向に導くきっかけとなるよう、メディアの力を発揮していただければうれしく存じます。どうかよろしくお願い申し上げます。

東アジア不戦推進プロジェクト企画書(要旨)

プロジェクトの思想(要旨)

 近代日本がかつて東アジアを舞台に展開した対外活動は、すべてそれなりの理由、名目があった。しかし、ひるがえって被害を受けた外国の民衆の立場に立つと、そのような名目など全く意味をなさないことがわかる。問題は戦争や植民政策の内容をなし、またはそれに付随して行われる「個々の行動」であって、その被害を受けた民衆や遺族の心情に思いを致すとき、心ある日本国民は居ても立ってもいられず、胸の痛む想いを禁ずることができない。
 近代日本はこのようにして他国に甚大な損害を与え、自らも大きく傷ついて国を滅ぼした。戦後日本は過去の反省の上に立ち、戦争放棄を憲法の中に明言して、平和国家としてその後の歴史を歩んできた。そのような経緯を自ら見聞してこられたのが、85歳以上の長老の方々である。
 今回、日本の長老たちがコロナ問題を契機として改めて「戦争の放棄」を世界に向けて訴えたいと考えるについては、あの過去を直視した上でなければ未来を共に語ることができないという深い想いがあったと思う。だからこそ、まずもって、当時日本が戦争を現に行い、占領をし、植民地にした東アジアを戦争の無い地域にしたいとの提言に至ったのであろう。

提言の内容

東アジアの全構成国の共同宣言

 2022年2月22日22時22分22秒に、まずもって東アジアの全構成国の首脳が次のような共同宣言、又は個別同時の宣言を発出することを提言する。
(1)あらゆる対立を超えて人類全体の連帯を図り、人類絶滅の危機を回避するよう努力する。
(2)少なくともまず東アジアを戦争の無い地域とする。
日本国政府のこの宣言への参加を熱望する
 上記の宣言を実現するため、まず日本の国民各位がこの提言の趣旨にご賛同下さり、可能であれば各種のグループを作り、最終的には日本国政府のこの宣言への参加を実現するよう尽力して下さることを熱望する。
東アジアの政府を動かす運動を切望する
 さらに、東アジアの、私たちと同じく戦争時代を体験した世代の方々が志を一つにし、それぞれの国の国民に訴え、ひいては政府を動かす運動を展開して下さることを切望する。
東アジアのみならず、ほかの地域の戦争放棄に一歩近づけたい

提言者と賛同者

提言者/俗称「長老」 (生年順)
瀬戸内寂聴(作家・宗教家、1922年5月12日生まれ、98歳) 千 玄室(茶道裏千家大宗匠、23年4月19日) 伊藤雅俊(イトーヨーカ堂・セブンイレブン等創業者、24年4月30日) 大城立裕(作家、25年9月19日) 岡田卓也(イオン創業者・イオン環境財団理事長、25年9月19日) 石原信雄(元内閣官房副長官、26年11月24日)西原春夫(元早稲田大学総長、28年3月13日) 野村 萬(狂言師・人間国宝、30年1月10日) 谷口 誠(元国連大使・元OECD事務次長、30年3月31日) 澤地久枝(ノンフィクション作家、30年9月3日) 有馬朗人(元東京大学総長・元文部大臣、30年9月13日) 明石 康(元国際連合事務次長、31年1月19日) 花柳壽應(日本舞踊家・元花柳流家元、31年3月22日) 平岩弓枝(作家、32年3月15日) 三浦雄一郎(登山家・冒険家、32年10月12日) 森田 実(政治評論家、32年10月23日) 仲代達矢(俳優・無名塾代表、32年12月13日) 有馬龍夫(元駐ドイツ日本国大使、33年6月13日) 海老沢勝二(元NHK会長、34年5月5日)
賛同者・支援者
福田康夫(元内閣総理大臣) 河野洋平(元衆議院議長)(以下略)

参考資料 背景にある「対立超克の理論」 西原 春夫

「超克」の理論(要旨)

 戦争の原因には、何らかの「対立」が潜んでいる。したがってその対立をどうやって戦争につなげないようにするかが最大の問題であると思われる。
 しかし、対立はそう簡単に解消できるものではない。とくに対立が険しくなって感情的な段階まで至った時、解決は絶望的になる。その場合どうするか。
 言葉で言えば、対立は「解決」できなくても「超克」は可能だということである。「共通の利益」が見つかれば最も効果的である。
 例えば現在、国と国、宗教の宗派同士が対立している現実がある。その多くは民族的宗教的な心情や長い歴史を背景としているから、その次元では簡単に解決することは難しい。
 しかし理論的には、それらの場合でも、共通利益が見いだされれば手が握れる可能性がある。例えば宇宙人が攻めてくることが確実になれば、争いなどしていられないだろう。このたびの新型コロナウイルス感染症の世界的流行という不幸も、それの遠因になっているかもしれない地球温暖化の猛威も、「矛を収めよ」という天意と受け取るべきではなかろうか。

新安全保障論

 戦争防止のために安全保障政策が必要なことは言うまでもない。現在では、どの国もそれぞれ独自の安全保障政策を持っており、現段階ではそれは当然のことと思われている。
 国の安全保障の本旨は、「敵が攻めて来たらどのようにして国を守るか」にある。このような理解は、現在のような国際情勢を前提にする限り当然であって、誰も否定することはできない。
 しかし、元来国の国際政治、外交の本旨は、「どうやって他国が攻めてこないようにするか」にあるのではなかろうか。あまり意識されていないけれども、これまた誰も否定することはできない。現代人は、ひるがえってこのことに思いを致すべきではなかろうか。
 「敵が攻めて来たら」という政策は本来「敵」を想定することになるが、その場合「敵」とされた国はよい気持ちにならないだろう。その国との友好関係を困難にし、ますます「敵」に追いやってしまう傾向に陥ることになる。
 もちろん「どこの国も攻めてこない」と百パーセント断言することができないのは言うまでもない。しかし政策を考える場合に、「百パーセントではないけれども現実にはほとんど考えられない」ということを決断の基礎にすることは十分ありうることである。例えばたった70年前まで戦争を繰り返してきたドイツとフランスの現状を見れば明らかであろう。
 「どこの国も攻めてくることは現実的にはほとんど考えられない」という状態が恒常化するにつれて、戦争の危険は確実に遠ざかっていく。軍備や軍事基地も縮小が可能になってくるし、次第に国際警察力の一環というように変容していくであろう。既存の安全保障条約も、精神や性格を変えていくに違いない。
 確かにこれは理想かもしれない。しかし、もしそれが現実的でないというならば、少なくともまず東アジアにおいてそれがなぜ実現できないかを解明し、どうしたら実現できるのかを徹底的に議論すべきではないだろうか。
 このプロジェクトの究極目的は、2年後に「東アジアを戦争の無い地域にする」という全首脳の共同宣言を発することにあるが、この期間を通じて、「どこの国も攻めてくることはない」となぜ言えないのかを徹底的に究明してほしいと思う。本プロジェクトは、そのようにして、人類永遠の課題に迫るという性格を秘めている。アジア人がアジアの心を引っさげて世界に道を示すという志もある。

望ましい民意形成

 この構想は個人の発想から生まれたものであるが、すでに個人の願望をはるかに超えている。のみならず、この願望はすでに日本や日本人の域をさえ越えている。プロジェクトの目的がそれだけ普遍性を持っているからであろう。
 そのような現状を知るにつけ、この運動を東アジアの長老全体、ひいてそれを支援する東アジアの民衆全体のものとするために、発案者や発案国が前面に立つことはできるだけ避けたいと思うようになった。個人やグループがあたかも自分が発案したかのように思って活動すれば、それは大きな力を発揮する。

東アジア不戦推進機構
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-14-1 
アジア平和貢献センター内 FAX:03-3354-2314
E-mail:fusen22222@asianpeace.jp
HP:http://www.asianpeace.jp/chourou/
index.html

共有(シェア)Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
Share on LinkedIn
Linkedin