農業一覧

わが国森林・林業再生のチャンス 林野管理経営政策の問題点

「国有林で50年も民間事業者が伐採できるということは民間払い下げのようなもの」

参議院議員 徳永エリ

 わが国の森林蓄積(森林を構成する樹木の幹の体積)は52億立方メートルと、この半世紀で大幅に増加しています。特に、人工林は5倍も増加しています。そして、その人工林の約半数が、51年生以上となり、主伐可能な時期、伐期を迎えています。森林・林業を再生させるチャンスがやってきたと言えるでしょう。
 しかし、外材と比較すると国産材の丸太価格は安く、森林所有者が材を切り出して販売しても、伐出コストや運材コスト、流通コストなどを差し引くと森林所有者に戻るお金はわずか。植栽、育成など、再造林にかかるコストを加えると赤字、コストと労力をかけて木を切って、売っても儲からない。だから、森林所有者は経営意欲が湧かないという状況が続いています。 続きを読む


韓国で進む先進的な農政 日本でも地方からうねりが

山田 正彦・元農林水産大臣に聞く

FTAのどん底から立ち上がる韓国

 私はこの4月、韓国を訪れ同国の農協中央会によるワークショップに参加しました。

 会場には全国の単協組合長らが1400人も詰め掛け、すごい熱気のなか討論が行われました。
 特に印象に残ったのはキム・ビョンウォン会長の熱意が込められた講演です。韓国では今年1月に韓米FTAが発効し、農業分野へのダメージが懸念されています。しかし、キム会長は映画にもなった「ハドソン川の奇跡」での遭難機を例に、「あなた方組合長はその機長であり、クルーである農業を立て直さなくてはいけない」と呼びかけました。そして、「農協の目的は組合員の所得を増やすことが第一。そしてその組合の利益は農民に還元しなければならない」と何度も力説します。 続きを読む


「TPP水準堅持」のごまかしは通用しない日米交渉

 

東京大学 鈴木 宣弘

飛んで火に入る夏の虫

 4月末、米国での日米首脳会談は完全にトランプ米大統領のペースで、安倍晋三首相は「飛んで火に入る夏の虫」だった。TPP11(米国抜きのTPP=環太平洋連携協定)と日欧EPA(経済連携協定)の発効後の想定以上の畜産物輸入急増で米国のシェアが落ちる中、米国内で日米FTA(自由貿易協定)での日本への圧力強化の要請が強まっていた。 続きを読む


安倍首相の売国外交をこれ以上許してはならない

 

首脳会談 日米FTA「大統領選前に形にする」と約束

 4月末ワシントンで行われた日米首脳会談の冒頭、トランプ大統領は「農産物の関税をなくしたい」と述べ貿易交渉での関税撤廃を要求した。さらに交渉妥結の期限を「5月来日時」に設定した。安倍首相は、超高額のF35戦闘機の大量購入や自動車産業などの対米投資などを再確約するとともに、FTAについても「大統領選の前にはちゃんと形にするから安心してほしい」と全面譲歩を約束し、ひとまずそらした。トランプ大統領夫人の誕生日に期日を設定して「ともに祝うのを一大行事に据えた」訪米だったが、マスコミは「抱きつき戦略に誤算」と報じた。対米従属の政権維持のために国益を放棄した。中国敵視政策に縛られているためだ。
 安倍首相は、5月トランプ大統領訪日から6月サミットまで、参院選を前にトランプ大統領に翻弄されることになった。国民の命、食料を差し出す売国外交を許してはならない。東大の鈴木宣弘教授も言うように農業を差し出せば自動車が守れるなどは幻想である。 続きを読む


[投稿] 農業への所得補償制度の実現をめざす

「地方議員連盟」をつくりませんか!!

今井和夫(兵庫県宍粟市市議会議員)

 第15回全国地方議員交流研修会第1分科会(9月号に要旨)で報告された今井和夫さんから、地方議員連盟設立の呼びかけの投稿があった。

このままだと孫には必ず食糧危機が

 全国地方議員の皆さま、私は30年農業をやってまいり、昨年4月に市議会議員になりました。
 どの地方も同じだと思いますが、私の住むところでも毎年のように耕作放棄田が増えていきます。本当に日本はこのままでいいのでしょうか? 続きを読む


種子法廃止とこれからの日本の農業について

各県で種子条例を制定させる国民運動を起こそう

元農林水産大臣 山田正彦

 私は長崎県の五島列島で生まれ、若い時に牧場を開きました。牛を繁殖させたりして、400頭ほど飼育しました。豚もうまくいかずに、当時4億円ほどの負債を抱えました。自分が未熟だったということもありますが、どうしてうまくいかなかったのだろうかと、とても悔しかった。そして日本の農政は間違っているのではないだろうかと考えるようになりました。それでいきなり衆議院選挙に出ました。負けました、もちろん。4回目にやっと当選して、ずっと後になりますけれども、農林水産大臣もやらせてもらいました。 続きを読む


タネが危ない

野菜は人間に食べられるためではなく、子孫を残すために生きている

 

野口のタネ店主 野口 勲さん

 西武池袋線飯能駅の西北西7キロ、秩父山地のふもとに、手塚治虫の『火の鳥』と『野口のタネ』の看板を掲げた、野口勲さんの野口種苗研究所があります。タネ屋に生まれた野口さんは手塚治虫のそばにいたい一心で大学を中退して虫プロに入り、『火の鳥』の初代担当編集者となりました。虫プロが倒産した後、家業のタネ屋を継いだ野口さんは、『火の鳥』を看板に使う許可をもらい、看板に恥じないタネ屋になろうと決意しました。「生命の尊厳と地球環境の持続」です。
 野口さんは今、「タネが危ない」と、F1種のタネを大量生産するために「雄性不稔」の株を利用する技術があらゆる植物に広がっていることに警鐘を鳴らしています。野口勲さんのお話を聞きました。(編集部)

 

固定種とF1

 日本では江戸時代に、良いタネを選抜し、形質を固定して販売する専業のタネ屋が現れました。一般の農民は、形質が固定した野菜のタネ(固定種)を買い、何年も自家採種して、その土地に合った野菜にしていきました。1960年頃までは、販売される野菜のタネのほとんどはこの固定種でした。 続きを読む


安倍政権の「林業改革」は山を荒廃させるだけ

零細な農林家が国土の7割の森林を守っている

 

農林家の能美俊夫さんに聞く

 安倍首相は1月22日、国会の施政方針演説で、「戦後以来の林業改革に挑戦する」と述べ、国会は5月25日、「森林管理経営法」を成立させた。
 日本の国土の7割近くは森林である。森林は、材木を供給するとともに、緑のダムと呼ばれ水を貯え、国土を保全し、緑の環境を維持し、CO2を吸収し酸素を供給する。薪や炭などとして熱エネルギー源でもあり、今注目のバイオマス発電に燃料を供給する。
 その森林の大半は荒れ放題である。日本の森林と林業が直面したきわめて深刻な現状と打開の方向、安倍政権が進める方向の問題点などを、農林家の能美俊夫さん(福岡県北九州市・のうみ農園主)に伺った。

 

日本の森林と林業の現状

 日本では、10ヘクタール以下の森林所有者が全体の9割を占めており、大規模に森林を持っている人たちはごく少数です。私のところは4ヘクタールくらいしかありません。その人たちが日本の森を守っているのです。その人たちはどんな人たちかというと、農業と林業をやっている農林家です。なおかつ、他の仕事もしている兼業です。基本的にはそういう人たちが一生懸命、金にもならない山を一生懸命に守ってやっているのです。 続きを読む


農業の直面する課題と展望

日本の種子を守る会会長(JA水戸組合長) 八木岡 努さんに聞く

後継者不足の解決をめざす

 農業で今、一番重要な問題は高齢化と後継者不足、担い手不足だと思います。
 私は15~16年前から、新規参入者受け入れを行い、就農希望者を15組くらい指導しました。そこで育った教え子の多くが、県内各地でイチゴ作りをやっており、現在では都会からの就農希望者を受け入れるなど、後進の指導をするほどになってくれています。茨城県では農業経営士という制度があり、私もその現職ですが、教え子のうち3人くらいが農業経営士に認定されて、活躍しています。 続きを読む


突然廃止された種子法

食料の安全保障放棄、外資の種子支配に道開く

日本の種子を守る会会長八木岡 努さん(JA水戸組合長)に聞く

 4月14日の参議院本会議で、自民党・公明党・維新の会の賛成多数により「種子法」の廃止が決まった。施行日は2018年4月1日。廃止は国民の基礎的食料である米、麦、大豆の種子を国が守るという政策を放棄するもので、種子の供給不安、外資系企業の参入による種子の支配などに道を開くことに。種子の開発・生産が民間企業に任されると、穀物価格に当然響く。民間の品種はF1(1代交配種)が中心のため、農家は種子を自家採種できず、穀物種子を毎年購入しなければならなくなる。民間開放先にはモンサントなど巨大種子資本の外資も含まれ、食料安全保障も脅かされることになる。
 「日本の進路」編集部は、結成された「日本の種子を守る会」の八木岡努会長(JA水戸組合長)を訪ねて、お話をうかがった。 続きを読む


官庁の民主化と食糧危機脱却、平和と民主主義を

組織綱領に発足した全農林労働組合

全農林労働組合 副中央執行委員長 柴山 好憲

 全農林労働組合(以下「全農林」)は、終戦後間もない1945年12月、中央省庁で最も早く組織された公務労働組合で、以降、封建的であった官庁の民主化や組合員の雇用・労働条件の改善には、国民・社会からの理解と支持が必要として反戦・平和などの大衆運動にも取り組み、72年を迎えようとしています。特に、公務関係労働者の雇用や賃金・労働諸条件の維持・改善に向けては、その先頭となって行動し、人事院勧告制度の機能化や休暇制度・勤務環境の整備を図ってきました。また、48年の国家公務員法改正により剝奪された公務員労働者の労働基本権奪還を組織の最重要課題に据え、今なおILO対策等に取り組んでいます。 続きを読む


規制改革推進会議の産業・構造政策がまかり通る農政

農業・農村の現場から今後の取り組みを考える

全日農書記長 鎌谷 一也

 6月最終の土日で、やっとわが集落営農法人の田植えが終了する。今年は、カラ梅雨。梅雨入りしたと思ったら、ほとんど雨が降らない。冬は大雪、雪害で大変であったが、その雪のおかげで、何とか水がもっている。食用米の田植えから始まり、飼料米、飼料稲と約65ヘクタールの田植えの完了となる。 続きを読む


中原浩一 北海道農民連盟書記長に聞く

北海道農業の課題と抱負

中原浩一 北海道農民連盟書記長

新たに書記長に就任して

 私は和寒町で生まれ育ち、現在55歳です。農家を代々継承し4代目になります。父親の時代は、耕地面積は6ヘクタール(ha)ぐらいでしたが、私が就農し5年後に12‌ha、10年後には18‌haになって、平成17年に法人化して、今は会社の土地も含めて52‌haで営農しています。 続きを読む