「生命を守れ」を躊躇してはならない
鹿児島県議会議員 上山 貞茂
「民主主義の否定、何を恐れて」――川内原発20年延長の是非を問う県民投票条例が自民党・公明党らの反対多数で否決された時に、県民投票の会の事務局長を務めた向原祥隆さんが発した言葉である。「議員は県民の側に立った判断をしたのか。反対した議員は党派の顔色ばかり窺う。思考停止だ」と怒りをあらわにした。県民投票を求め集まった署名は4万6112筆、法定数2万7千を大きく上回った。地元紙でも「反原発運動を続ける市民団体だけでなく、福島第1原発事故以降、潜在的に原発の不安を感じている人が少なくないことが明らかになった」と報じた。
国策だからこそ県民の意思確認は大切
わが会派の県民連合代表質問で、公約とした「必要に応じて県民投票を行う」の必要性の条件が整ったのではないかと知事の姿勢を質した。しかし、塩田知事は、「原子力は長期的なエネルギーの安定性に寄与する重要なベースロード電源。多様な意見を○×で反映するのは難しく……。鹿児島県原子力安全・避難計画等防災専門委員会での『九州電力の特別点検に問題はなかった』と報告があったことも踏まえ、本条例は慎重に判断」と、否定的な意見を述べた。住民意思に沿った地方自治法の適正な手続きよりも、政府・九州電力の運転延長審査手続きを優先する態度を鮮明にしたのである。
地元紙は、「県民投票には20年延長に関する県民の意志把握にとどまらず、原子力政策そのものへの考えも表れたはずだ。条例案否決は県民自身が原発を主体的に考える機会を奪ったことを意味する」と批判した。
参考人として招致された宇那木正寛鹿児島大学教授は、「国策だからこそ自治体の積極的な情報発信が求められる。究極の意見集約は○×だ」と県民投票を実施する有用性を強調した。「国と自治体は対等関係にあるパートナーで、自治体の条例が国を動かすケースもある。塩田知事の『国策だから国が責任をもって判断すべき』は残念だった」とも述べた。
県民意思を無駄にしない闘いを
全県を対象とした署名運動は、マスコミ各社も関心をもって取材し、動きのたびに大きく報じられた。鹿児島県は、県民投票条例否決後に、さらなる安全性評価に向けて原子力規制庁および九州電力に対し「川内原子力発電所に関する要請書」を提出した。そのこと自体、危険性が払拭されていない事実を表している。署名を集めた苦労を無駄にしてはならない。
川内原発20年延長の危険性や問題点、さらには民主主義を否定する県議会を継続して県民に広く訴え、また、県民主権を大事にする県議会議員を増やす闘いを強化しなければならない。
オスプレイ国内初の墜落死亡事故
11月29日、米軍横田基地所属のCV22輸送機オスプレイが屋久島沖に墜落し8人全員が死亡した。墜落現場を目撃した住民の方は、「島に落ちていたら、どうなっていたか」と。
同機は、屋久島空港管制塔に緊急着陸の要請を行っていたことが明らかであり、一歩間違えば島民にも直接被害が起こっていたかもしれない。それにもかかわらず、当初の政府見解は不時着水、米軍のコメントを鵜吞みにして調査すらしないままだった。
オスプレイは、開発段階からトラブルが絶えず安全性を懸念する声が多かった。2016年12月名護市安部沿岸の墜落事故は記憶に新しい。その後も、22年3月にノルウェー北部で墜落4人死亡、23年8月にはオーストラリア北部で墜落3人が死亡するなど、これまでに50人以上の兵士が死亡している。
22年6月に搭乗員5人が死亡したカリフォルニア南部での墜落事故の報告書が23年7月に公表された。エンジンとプロペラをつなぐ「クラッチの不具合」が原因と構造的欠陥を初めて認めた。今回の墜落事故でもエンジントラブルが指摘されている。起こるべくして起こった墜落事故だ。
徹底した原因究明の意見書提出
12月6日、米軍はオスプレイ全機の飛行一時停止に踏み切ったが、墜落事故から1週間が経過している。その間、沖縄や奄美大島上空を低空飛行しているオスプレイが頻繁に目撃されており、日本政府の飛行停止要請を無視した人命軽視の姿勢は批判されなければならない。
わが会派の県民連合は、国に対して「米軍機オスプレイ墜落事故の徹底した原因究明等を求める意見書」を県議会に提出した。
①墜落事故について米軍に抗議するとともに、主権国家である日本国が主体的に原因究明を行えるよう求めること。全国知事会でも求めているとおり、その壁となっているといわれている日米地位協定の見直しに着手すること。
②日本国内における全機のオスプレイ飛行停止は、墜落事故の原因究明及び根本的対策なくして飛行再開をしないこと。
③墜落事故に関する調査や情報について、関係自治体や地域住民に速やかに情報提供を行うこと。
県議会勢力数からみても否決されることは必至だが、「県民の生命を守れ」を主張する観点からも出すことに意義があると考える。
激しさを増す軍事訓練
「台湾有事」を念頭に九州本土内や南西諸島において軍事訓練が頻繁に行われている。10月下旬には、霧島演習場で日米共同軍事演習「レゾリュート・ドラゴン」が、陸自700人、米軍120人と同演習場で最大規模となる訓練が行われた。11月20日には、初めて民間空港を利用する戦闘機訓練が徳之島と奄美大島で実施された。
滑走路に接地後、出力を上げて直ちに離陸する「タッチ・アンド・ゴー」訓練、民間のサトウキビ畑への空挺降下や水陸両用車を使った海岸への上陸訓練など、侵攻された島しょ奪還を想定した統合演習の一環で現場は物々しい雰囲気が漂った。馬毛島自衛隊基地建設も急ピッチで進んでいる。戦争を起こすための準備が着々と進んでいる。県民の危機感を高めなくてはいけない。
「争いよりも愛を」の実践は隣人から
12月議会、自民党は「緊急事態条項の創設に向けた国会審議を求める意見書」を提案しようとしている。緊急事態条項や憲法改悪後の社会の危険性を県民に広めなくてはならない。
「争うよりも愛を」「対話による平和を」「沖縄を再び戦場にさせない」など、沖縄の平和活動を鹿児島県内にも広げ、「武器で平和はつくれない」「軍事費増強よりも生活支援を」求める声を大きくしていきたい。
NPO法人かごしま企業家交流協会の方から、「議員も外国人移住者との交流をもっと積極的にしてほしい」とのご意見をいただいた。県内でも民間レベルで外国人との交流活動は活発である。行政サイドは後援はしても直接支援はお粗末だと言われた。身近な外国人の方々との交流を深める活動を日常的に支援していくことで、「争いよりも愛を」の実践につながる。
日本社会を変えるためには自分が変わらないといけないと反省した次第である。
10月末、被爆地長崎で全国地方議員交流研修会が開催され、「日中不再戦、沖縄に学ぶ九州自治体議員のネットワーク」も呼びかけられた。沖縄から鹿児島へ、九州全体に、戦争への流れを変えるうねりをつくりたい。