第19回全国地方議員交流研修会報告

「地域のことは地域が決める」

 第19回全国地方議員交流研修会は10月30日長崎市ブリックホールで開かれ、地方自治体議員100人余、一般参加約100人が参加のもと、司会を白川鮎美長崎県議と瑞慶覧長風南城市議が務めた。


 開会あいさつを実行委員会共同代表の藤本眞利子・和歌山県議が、歓迎あいさつを現地実行委員会代表の堤典子・長崎県議が行った。来賓として長崎県知事(代理副知事)などがあいさつ。地元選出の国会議員や水岡俊一参議院議員などがメッセージを寄せた。
 玉城デニー沖縄県知事はビデオメッセージを寄せてくださった。

「長崎からアジアの平和を展望する」孫崎享さん(元外務省)記念講演

 記念講演を「長崎からアジアの平和を展望する」とのテーマで孫崎享東アジア共同体研究所所長・元外務省情報局長が行った。
 特別報告の第1部として、具志堅隆松さん(再び戦場にさせない県民の会共同代表)、平野伸人さん(平和活動支援センター所長)と長崎大学学生の猪原彩美さん、坂本浩さん(長崎県議)、糸瀬敬一さん(核のごみと対馬を考える会事務局長)が行った。
 さらに、「基地強化が進む全国各地からの実態報告」として、長野広美さん(馬毛島基地建設・西之表市議)、中川義行さん(新田原基地・宮崎市議)、守永信幸さん(大分県下の基地強化・大分県議)、永田秀人(佐世保基地・佐世保市議)、大波修二(厚木基地・大和市議)が報告。
 沖縄から山内末子沖縄県議が、県の「地域外交」を中心に報告した。
 最後に、山本正治・広範な国民連合事務局長が実行委員会からの問題提起を行った。
 終了後、名刺交換・交流会が行われ、二胡の演奏でオープニング。全国の参加者が一言あいさつ。最後は、「さとうきび畑」と「長崎の鐘」の大合唱でエンディングに。
 2日目は4つの分科会が同時に開催された。
 第1分科会、「食料安全保障の推進と食の安全について考える」は60人余の参加、西聖一熊本県議と今井和夫宍粟市議が座長を務め、山田正彦元農林水産大臣と鈴木宣弘東京大学大学院教授が問題提起した。「食料自給の確立を求める自治体議員連盟」設立が提案され確認された。
 第2分科会、「こどもの貧困問題と後退する社会保障」は、50人近くが参加し、岩田智子熊本県議と西村和子筑紫野市議が座長を務めた。小西祐馬長崎大学教育学部准教授が問題提起し、伊敷郁子糸満市議と良田金次郎郡山市議が事例報告した。
 第3分科会、「長崎における核兵器廃絶の闘いに学ぶ」は、坂本浩長崎県議が座長を務めた。問題提起を中村桂子長崎大学核兵器廃絶研究センター准教授と平野伸人平和活動支援センター所長が行った。
 第4分科会、「軍事増強ではなく、アジアとの交流を通じて地域経済の発展を」は座長に白川鮎美長崎県議と上村和男筑紫野市議、40人ほどが参加した。國仲昌二沖縄県議が事例報告、孫崎享さんも助言者として発言した。「日中不再戦、沖縄に学ぶ」自治体議員ネットワーク形成を九州で進めるとの提起がなされ、全国でも続こうと確認された。

「食料自給」「東アジアの平和」二つのネットワークを全国で

 午後の全体会合では、司会を瑞慶覧南城市議と本田みえ島原市議が担当。まず、羽場久美子・青山学院大学名誉教授が「沖縄・長崎からアジアの平和を構築する」と題して特別講演。その後、長崎県の石木ダム建設に反対する運動を炭谷猛川棚町議が報告した。
 全体討論では、食料自給の確立を目指す運動の推進、沖縄に連帯し、自分事として再び戦場とさせない闘いを発展させることなどが強調された。手話通訳者などの協力もあり、視覚や聴覚に障害をもった議員の参加と発言、差別に反対し人権と共生社会をめざすにふさわしい交流となった。
 討論を踏まえて、「長崎アピール」が松坂昌應島原市議から提案され満場一致で確認された。
 最後は、実行委員会共同代表の北口雄幸さんがまとめのあいさつを行って閉会した。
 北口代表は、「食料自給の確立と東アジアの平和・日中不再戦の二つのネットワーク形成を全国各地で取り組んでいただくようお願いし、まとめとします。山内末子共同代表から『来年は、ぜひ沖縄で』との提起があった。一年間、取り組みを進め、豊富な経験を来年また持ち寄りましょう」と結んだ。
 第19回全国地方議員交流研修会は、長崎現地実行委員会の皆さんの献身的な努力に支えられて成功裏に終わった。
 戦争が世界に広がる危機のなかで、被爆地ナガサキの経験と二度と再び戦場にさせないという沖縄県の闘いの前進を踏まえて、抑止力強化一辺倒ではなく、対話と外交で平和をめざそうとの認識と決意にあふれた政治方向の明確な交流会となった。
 それにとどまらず、九州から日中不再戦・沖縄に学ぶ自治体議員ネットワーク推進の報告もあり、また、食料自給推進で全国の自治体議員連盟の結成も確認された。行動する議員交流会に組織的に前進する一歩をしるすことができた。
 若い議員たちの活躍が目立ったことも特徴だった。多様性も特徴だった。これから1年間、手を携えて運動を進め、来年、沖縄で再び集うことでさらなる前進が期待できる。

第19回全国地方議員交流研修会 長崎アピール(要旨)

 まさに世界は歴史的転換期にあります。
 喫緊の課題は、東アジアでの戦争をさけ、国民のいのちを守ることです。
 地方自治体は国の従属機関ではありません。憲法で保障されている地方自治の価値の実現を目指すため、私たちは以下について確認し、アピールします。
 1.私たちは、第二の被爆地長崎から、パレスチナとウクライナでの戦争即時停戦、および日本の核禁止条約への批准など、積極的な発信を政府に求めます。中国敵視のアメリカが「台湾有事」をあおることに反対し、日本が中国と軍事的に対立させられることのないよう、自主的な平和外交を求めます。
 「二度と戦場にしない」と闘う沖縄県民と連帯し、抑止力強化ではなく対話と外交による平和を希求する沖縄県の地域外交を支持します。沖縄に学んで全国で中国はじめ近隣諸国と自治体間外交、経済、文化交流、次世代を担う人的交流の強化をめざします。
 九州での「日中不再戦、沖縄に学ぶ」地方議員のネットワークの形成が提案されました。全国でも、同様の方向を進めることを呼びかけます。
 2.食料危機に直面する今、第一次産業を守り、輸入に頼らず安全な食料を確保することは国の責務です。
 「食料自給の確立を求める自治体議員連盟」の設立が呼びかけられました。食料安全保障推進基本法制定にむけ、全国の自治体議員との連携を強めます。
 3.子どもの貧困は親の貧困です。危機に直面する地域住民のいのちと暮らしを徹底して守るため、私たち地方議員は地域住民と共に国と地方自治体に対して声を上げ、危機打開のために行動します。
 次世代を担う若者たちや、女性の声を大切にし、地域のことは地域で決める、新しい政治の流れをつくりだしていきましょう。

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