ウクライナ問題の背景と平和解決へ熱心な議論
第2回「日中時事交流フォーラム」が2月27日、オンラインで開催された。当フォーラムの日本側代表を務めている羽場久美子・青山学院大学名誉教授が、「EU・NATOの間で引き裂かれるウクライナ―境界線でせめぎあう大国―」をテーマに報告し、華語シンクタンクの彭光謙理事長がコメントを述べた。中国側からは徐長銀・同シンクタンク執行理事長、龔剣・同シンクタンク事務局長が、日本側からは、第1回報告者であった丸川知雄東京大学教授をはじめ三十数人が参加した。凌星光教授が仲介役を務め、杜世鑫氏が通訳を担当した。
今回の交流は、ロシアの軍事侵攻でウクライナ市民の犠牲が相次ぎ、他方、経済制裁などロシアへの圧力が強まる情勢下で行われた。羽場教授の、日中が連携して東アジアから平和的解決に動くべきとの提起を受けて、真剣な意見交換がなされたことは大いに意義深い。以下概略。
羽場教授は、周辺の大国に繰り返し引き裂かれてきた複雑な歴史をもつウクライナの国情、および、冷戦崩壊後のNATO拡大、ウクライナの「民主化」への米欧の介入や武器供与などロシアが軍事侵攻に追い込まれた背景を説明。そして、本来はNATO拡大停止がヨーロッパの平和・安定のために必要なことだが、ロシアが西ウクライナ、キエフにまで軍事侵攻をしたことは大きな失敗、停戦合意は容易ではないと述べ、日本は経済制裁に加担するのではなく東アジア、日中韓などと連携して積極的に停戦、平和的解決のために動くべきだ、と結んだ。(詳細は、本誌3ページ)
それを受けて、彭理事長は羽場教授の報告のほとんどに同意するとして、次のようにコメントした。
①ロシアの今回の行動はNATOの東方拡大に対する自衛のための反撃だったのではないか、まだ討論する余地がある。軍事侵攻だが、政治的には自己防衛的だ。アメリカがNATOの拡大を無制限にしていなければ今回のような事態にはなっていなかった。②アメリカのグローバル戦略として、ヨーロッパにおいてロシアの戦略空間を圧迫し息ができないようにしている。アジアにおいても中国を封じ込め、中華民族の復興の希望を抹殺しようとしている。冷戦時と同じような考え方、アメリカの覇権主義の考え方が問題の根源だ。③アメリカはまた、日本の発展を望んでいない。1980年代においてアメリカはプラザ合意で圧迫、その後日本は30年間経済成長できないでいる。
羽場教授は、彭理事長の発言に理解を示しつつ、軍事力によって対抗することで国際社会が緊張し、小国が犠牲になることには反対すると述べた。また、アメリカは自らの軍事力ではなく、クワッドやオーカスなどの同盟で中国包囲網をつくり、台湾、沖縄、オーストラリア、インドなどを軍事化して、東アジアでもロシア周辺と同じように代理戦争をしようとしている。犠牲になるのはその国および地域の住民である、と応えた。その発言を受け彭教授は「アメリカはまさに他人の刀を借りて人を殺す、という戦略をとっていると思う」と賛同した。また龔剣事務局長からは「今回のウクライナ情勢はインド・太平洋戦略にどういう影響があるか、北方領土問題はどうなるか」という質問も出された。
最後に羽場教授は「王毅外相が提起した『ウクライナでの中国の5つの基本的立場』は全面的に支持できる。ぜひその方向で中国が日本や韓国、さらにインドなどとも連携してウクライナの主権尊重と停戦に積極的役割を発揮することを望む。それは東アジアの平和を守る意思を示すことになる」と述べてフォーラムを結んだ。