日中関係の打開へ ■ 大阪

350人参加で日中友好シンポジウム開催

大阪府日中友好協会HPから

 「日中友好シンポジウム」が大阪市内で9月27日、大阪府日中友好協会の主催、府内11地域の日中友好協会が共催して開催された。台風の影響で雨が降り続く中、定員280人の会場に約350人が集まり、日中関係の現状と今後の友好交流について熱心に議論した。

民間交流と相互理解で
日中友好の継続を

 主催者を代表してあいさつした小西禎一大阪府日中友好協会会長(元大阪府副知事)は、高市早苗首相の台湾をめぐる発言などを背景に、日中関係が国交正常化以来、極めて厳しい局面にあると指摘した。そのうえで、両国の人々が長年築いてきた文化・経済交流、相互信頼、相互尊重の関係を何としても次世代に引き継ぎたいと述べ、「これは時代が私たちに与えた使命だ」と強調した。1950年に設立された大阪府日中友好協会は、日本の中国侵略戦争が両国民にもたらした犠牲と苦難を歴史の教訓とし、二度と戦争を繰り返さず、日中の相互理解と友好を深め、アジアと世界の平和・繁栄に貢献することを理念としている。

宮本雄二氏が「歴史の教訓と日中関係の展望」を語る

 シンポジウム前半では、元駐中国日本大使で現在は公益財団法人日中友好会館会長を務める宮本雄二氏が「いかにして日中関係の大局を維持するか」をテーマに講演した。
 宮本氏は、中国との友好を主張する理由について、単に中国が好きだからではなく、日本自身の国益と安全保障にとって、中国と平和で安定した協力関係を築くことが重要だからなのだと説明した。大切なのは、その必要性を日本国民に伝え、具体的な政策につなげることだと述べた。
 宮本氏が強く警告したのは、戦前の日本と現在の状況に見られる類似性である。戦前の日本は、中国の国内情勢や民族主義を正しく理解せず、「一撃を加えれば中国を屈服させられる」という考えに陥った。しかし、中国の抵抗は続き、日本は日中戦争の泥沼へと引き込まれた。大きな戦略を欠き、目先の軍事的な勝敗や国内の熱狂的な世論に流され、誤った道を進んだのである。
 宮本氏は、現在の日本社会にも、周囲の雰囲気に同調し、異論を表明しにくい「社会の空気」という問題があると指摘した。社会に偏った空気が広がるときこそ、異なる意見を持つ人々が声を上げなければならないと訴え、過去の過ちを繰り返さないよう警鐘を鳴らした。また、靖国神社へのA級戦犯合祀などに触れ、戦争責任を徹底的に追及しなかったことが、戦後日本に責任を曖昧にする風潮を残したと批判した。
 さらに、アメリカの国際的な役割が変化する一方、中国が急速に台頭し、世界の力関係が変わる中、日本は自国にとって最も望ましい政策を冷静に考えるべきだと述べ、中国の軍事力強化を理由に、直ちに軍拡や中国包囲を進めるという考え方は誤りだと指摘した。
 日中関係を支える柱として、政治・外交、軍事・安全保障、経済、人的・文化的交流の四つを挙げ、良好な国家関係そのものが重要な安全保障になると強調した。日本は専守防衛の基本を守り、軍事大国化を避けるべきだと訴えた。台湾問題については、日本政府の国交正常化以来の原則的立場を明確に示すことが、日中関係の修復につながるとの見解を示した。

池田市日中友好協会HPから

交流から広がる友好の輪

 後半のパネルディスカッションでは、神戸国際大学教授の毛丹青氏、日中友好家族の会代表の堀内正美氏、株式会社Golden Bridge代表の楊金峰氏、Freebird関西支部副代表の堀川明日香氏が、それぞれの経験をもとに日中交流の意義と課題を語った。
 毛丹青氏は、日本の作家大江健三郎氏が中国の作家莫言氏の将来を高く評価し、その予言が後にノーベル文学賞受賞という形で実現したエピソードを紹介した。文化には国境を越えて人々を結びつける力があると述べ、日中が友好的に共存する必要性を強調した。
 堀内正美氏は、中国人の妻との結婚をめぐり、日本人の友人から「なぜ中国人と結婚するのか」と尋ねられた経験を紹介し、偏見や差別が身近な意識の中から生まれることを指摘した。また、日中にルーツを持つ子どもが地域によっては排除される現実にも触れ、差別をなくす取り組みとともに、若い世代や子育て世代が参加できる友好活動を広げる必要性を訴えた。
 楊金峰氏は、中国山東省出身で1993年に来日し、2002年に会社を設立して関西を拠点に活動してきた経験から、日中両国には深い文化的なつながりがあると述べた。国と国との関係は、普通の人々が相手国の人々をどう感じるかによって築かれるものであり、互いの国を訪れ、自分の目で見て、直接交流することが重要だと強調した。
 また、日中関係にはこれまでも浮き沈みがあったと振り返り、逆境にあるときこそ信念を持って交流を続けるべきだと訴えた。
 堀川明日香氏は、学生同士の交流で築かれる友情が、10年、20年後には両国関係を支える人的ネットワークになると述べた。先輩たちが築いてきた交流のバトンを若い世代が受け継ぎ、相互理解を深める場をつくり続ける決意を表明した。
 最後に、総括発言で毛丹青氏は、参加者に共通する願いは隣国同士が平和で友好的に共存することだと述べた。空海が唐へ渡って仏法を学んで以来、1200年にわたって文化的なつながりが続いてきたことを振り返り、日中関係が完全に崩壊することはないとの確信を示し、シンポジウムを締めくくった。
 中国の新聞社「世界文化報」はシンポジウムについて10月1日号で、「300人超が耳を傾けた大阪の『日中友好シンポジウム』」と題し、世界に配信した。その中で、シンポジウムで各パネリストが発した声はまさに「震撼させるほど大きくそして人々を勇気づけるものだった」と内容を評価し、参加者の声として「日本の民間には今なお中国との友好を望む人々が存在しているとの声が寄せられた」「政治的な対立や対中認識の変化が進む中でも、友好交流と平和共存を守ろうとする民間団体や、日本の友好人士の活動は極めて重要だ」との評価がシンポジウム全体を通して示されたと伝えた。

日中友好の基盤は民間の相互理解にある

 今回のシンポジウムは、日中関係が厳しい時期だからこそ、歴史の教訓を生かし、偏見や差別を克服するとともに、文化・経済・市民・学生の交流を継続する必要性を明らかにした。
 そして、日中友好の基盤は、政府間の外交だけでなく、市民一人ひとりの相互理解と信頼にあること。政治的な対立に左右されず、民間交流を絶やさずに次世代へ引き継ぐことが、両国の平和と安定、そしてアジアの未来につながるとの内容が改めて確認され意義深いものとなった。