中国・北京訪問報告 ■ 高市首相「台湾有事は存立危機事態」発言がもたらす日中対立

「沖縄の再戦場化」に結びつかせてはならない

参議院議員(沖縄の風) 伊波 洋一

 石破内閣が総辞職して誕生した高市新内閣は、旧安倍派・清和政策研究会などの裏金問題議員や旧統一教会関係議員の責任を問わない任用で軍事予算拡大を主導している。軍事費拡大や武器輸出制限の限定条項の撤廃など急速な軍事大国化に向かっている。高市首相は、かつて安倍政権を支えたメンバーを内閣要所に配置し、経済政策もアベノミクスを踏襲する金融緩和と積極財政出動を目指している。物価高でのアベノミクス踏襲で1ドル147円の為替レートが158円まで円安となり、輸入品の物価高と長期金利の上昇が懸念される。はたして有効な物価高対策を打てるだろうか。

「台湾有事は存立危機事態」答弁と日中関係の悪化

 昨年10月21日の内閣発足から20日も経ない11月7日の衆院予算委で高市首相から飛び出たのが「台湾有事は存立危機事態」の答弁だった。「存立危機事態」とは密接な関係にある他国(想定は米国)への武力攻撃により「国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」のことで、日本が直接攻撃されなくても敵国に対して集団的自衛権の行使として武力行使することを含んでいる。
 今回、他国が米国でなく「台湾」を指していることが重大で、中国は即座に反応し「発言の撤回」を求めた。国会でも野党議員が発言撤回を求めたが、高市首相に応じる気配はない。石破政権の日本産水産物輸入制限の緩和などの取り組みが再び凍結された。台湾は中国にとって「核心的利益」であり、1972年に日中共同声明で日中国交を回復した際も日本は、中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府であると承認し、台湾が中国の一部であると中国が表明したことを日本は「十分理解し、尊重する」と約束した。台湾を中国の内政問題と整理してきた。
 高市首相はそれを覆して、日本が台湾問題に軍事的に介入すると受け止められたのである。

安倍政権から始まった
戦時体制への取り組み

 安倍政権以降の日本の軍事強化は進展し、集団的自衛権行使の解釈改憲や平和安全法制(戦争法)の立法によって日本は「戦争のできる国」になっている。
 2022年12月16日の岸田政権による「安保3文書と5年間43兆円の防衛費」の閣議決定は、自衛隊ミサイル基地への長射程「敵基地攻撃ミサイル」の配備計画をスタートさせ、地上発射型の「敵基地攻撃ミサイル」が今年3月までに陸自ミサイル基地に配備される。同様に海自イージス艦に巡航ミサイル・トマホークが格納される。空自でも26年度中に配備が始まる。南西諸島の島々へのミサイル基地建設は16~22年度の6年計画で行われた。
 尖閣防衛や南西諸島防衛の掛け声で行われたことは、台湾防衛の「台湾有事」米軍戦略であり、日本を台湾防衛戦争に参加させて自衛隊を巻き込むためである。25年3月30日の中谷防衛相とヘグセス米国防長官の会談でヘグセス長官が「西太平洋の有事で、日本は最前線に立つことになる」と誇らしげに語ったことはそのことを如実に物語っている。沖縄にとっては、このヘグセス米国防長官の発言と高市首相の「台湾有事は存立危機事態」発言は、「沖縄の再戦場化」を意味するものに他ならない。

台湾有事攻撃拠点造りで
沖縄先島全住民の避難計画

 日米政府は22年1月7日の日米2+2協議で、「台湾有事共同作戦計画」の策定と、奄美大島から与那国までの40の有人離島に臨時の攻撃拠点を造ることを合意し24年末までに策定した。その間に安保3文書と5年間43兆円防衛費による長射程ミサイル配備計画が決定され、同計画に向けて日本列島各地でキーンソード25等の実動演習を繰り返してきた。日本列島全体で台湾有事戦争を引き受ける計画に他ならない。
 内閣官房では国民保護訓練と称して、この台湾有事日米共同作戦計画に合わせて22年度から沖縄の先島5市町村(宮古島市、多良間村、石垣市、竹富町、与那国町)の全住民約12万人を毎日2万人6日間で九州・山口の各県に避難させる計画を詳細に策定している。沖縄県民として決して許すことはできず、戦後80年に新たな戦争を再び沖縄で起こさせてはならない。

戦争回避を中国政府直属の研究機関に要請

 高市首相の「台湾有事は存立危機事態」答弁による日中関係の悪化は、先島住民を戦争が避けられないものと不安にさせている。
 この沖縄県民の状況を中国政府にも伝えて戦争回避を要請するため沖縄県選出の参議院会派「沖縄の風」所属の伊波と高良沙哉議員、前参院議員の髙良鉄美氏の3人で12月21~24日、北京市で中国国務院直属の社会科学院の世界経済政治研究所を訪ね、廖凡所長を含む5人の研究員と意見交換を3時間にわたって行ってきた。
 廖所長が専門の立場から、
 ①日中関係でアメリカは重要な要素。日米関係での日本も同様。中国はアメリカとの関係は大事である。中国としては中日関係を緊張させたくない。万一にも、アメリカ(軍)が出動することはないと思っている。アメリカは、西半球(南北アメリカ)に縮小する方向である(安全保障上の範囲?)、
 ②中国の政策の重点は、2020年の小康社会(ややゆとりある社会)の実現に続き、35年までに中国社会の現代化を実現することである。そのために25年10月の4中全会で26~30年はとても重要な5年間として、党中央は経済(科学技術の「自立自強」、「双循環戦略」の維持)と平和(安全保障の強化)を中心に国を運営し経済の基礎を固める。別のことをやる計画はない。拡張政策などはしない、
 ③今、中国国民は冷静であり、中国政府は冷静に日本政治を分析できるようになっている、
 などと語り、意見交換で、中国から歯止めをかけようとすれば、何をできるのか、などの問いかけもあり議論が続いた。
 私は、日本政府は抑止力を高めれば中国を抑えられるという言いぶりで沖縄で軍備強化を続け、県民に不安を与えていると説明した。
 今回の中国社会科学院との意見交換で知ったのは、中国が2020年までに国全体の貧困脱却を成し遂げ、さらなる社会の現代化を目指して取り組んでいることだった。世界経済政治研究所長が述べた「小康社会」の実現とは、2011~20年で農村住民の可処分所得を毎年10%以上伸ばして地域間格差を縮小させ、住宅格差や社会保障格差を少なくし、医療保険が13・5億人、基本年金は10億人をカバーし、1人当たりGDPは1万ドル超にするといった取り組みで、国民の暮らしの向上をめざす中国社会をよく知ることの重要さを感じた。
 戦争を想定する高市政権に抗して、「戦争はしない。平和を構築する」声を沖縄から出して全国に呼び掛けて、高市政権が進める戦争計画をストップさせよう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする