琉球の視点から見た中国の歴史と国際関係へのまなざし
団員 沖縄大学学生
今回の訪中では、北京とハルビンを中心に、中国の歴史や文化を学び、日中関係や国際問題について考える機会を得た。教科書やニュースでしか知らなかった場所を自分の目で見て、歴史の重みや現代社会とのつながりを肌で実感することができた。
まず北京では、「北京大紅楼」を訪問した。100年以上の歴史を持ち、陳独秀や毛沢東らが革命について議論した場所として知られる。当時の北京大学は中国の知識人が集まる拠点であり、思想の交流が社会変革へとつながっていった。
また、中国で初めて男女共学が始まった歴史的な意味も持つ。男女の区別なく学ぶことは、当時の社会において大きな一歩であり、教育制度の変革が社会の発展や価値観の変化に直結することを示す象徴的な事例であった。
清華大学と国子監―
教育がつなぐ日中・琉球の記憶
さらに清華大学も訪れた。日本からの学術寄付など、文化・学術交流の積み重ねが両国の関係構築に役立ってきたことを知り、過去をどう受け止め、未来にどうつなげるかという責任を改めて感じた。教育機関を通じた交流は相互理解を深める重要な手段である。
時間の都合で行けなかったが、個人的に最も行きたかった場所が「国子監」である。私は大学で中国と琉球の交流の歴史を学び、琉球王国から国子監へ多くの留学生が派遣されていたことを知っていた。琉球には高等教育機関がなかったため、中国が教育の機会を提供していたのである。
一方、朝鮮には自前の成均館があったため国子監に留学する必要はなかった。この違いから、国子監は琉球にとって特別な存在であり、教育を通じた国際交流の象徴であった。次の機会があれば、ぜひ現地で学びたいと強く思った。
台湾問題から見えた、立場の違いと歴史の積み重ね
北京で特に印象に残ったのは、台湾問題について考える機会があったことだ。日本では「台湾有事は日本有事」とされるが、中国の視点から見ると、日本が過剰に反応しているように映る場合もあるそうだ。また、台湾の人々は、日本の政治家が国益や軍備拡張のために台湾問題を利用しているのではないかと考えている。
この話を聞き、現地の視点を知ることの重要性を強く感じた。また、台湾問題の背景にはポツダム宣言の規定が関係しており、歴史の積み重ねが現在の緊張を形づくっていることを理解した。
ハルビンと盧溝橋の
現地に立って学べたこと
ハルビンでは、「ハルビン雪城」を体験した。真夏でありながら施設内は零下8度に保たれ、極寒を肌で感じることができた。夏は避暑地、冬は氷の彫刻や雪祭りで知られ、音楽文化も発展している都市である。文化の多様性や都市の成り立ちを学ぶことができた。
最終前日には、日中戦争勃発の地として知られる「盧溝橋事件」の現場を訪れた。1937年、日本軍と中国軍の衝突をきっかけに戦争が全面化した現場に立ち、教科書では学べない歴史の重みを肌で感じた。戦争の悲惨さやその影響の大きさを改めて考え、同じ過ちを繰り返さないために歴史を学び続ける必要性を強く感じた。
訪中を通じた学びと
今後への展望
今回の訪中を通じ、中国の歴史や文化を直接体験し、国際問題について考えることができた。過去の歴史をどう受け止め、未来にどうつなげるかを意識させられた経験である。台湾問題や環境政策など現代中国の課題は日本とも無関係ではなく、相互理解を深める冷静な視点が必要である。事前準備や体調管理も含め、今回の経験は多方面で学びとなり、今後の学習や国際交流に生かしていきたい。